

薬品情報|がん・免疫・移植
がん免疫療法は、患者自身の免疫が持つ「異常な細胞を見つけて排除する働き」を利用・強化してがんを治療する考え方です。代表的な薬が免疫チェックポイント阻害薬で、がん細胞が免疫にブレーキをかける仕組みを解除し、T細胞による抗腫瘍反応を高めます。
一方、がんの支持療法薬は、抗がん薬治療や放射線治療、がんそのものに伴う吐き気、感染症、貧血、痛み、便秘、骨の合併症などを予防・軽減し、治療を続けやすくするための薬です。支持療法は補助的なものではなく、安全にがん治療を行うための重要な医療です。ここでは、免疫チェックポイント阻害薬と、化学療法に伴う悪心・嘔吐の予防薬であるアプレピタントを中心に解説します。
| 種類 | 主な用途 | 一般名や製品例 |
|---|---|---|
| 抗PD-1抗体 | 複数のがん種で、がん免疫を抑えるPD-1経路を阻害する | ニボルマブ(オプジーボ)、ペムブロリズマブ(キイトルーダ) |
| 抗PD-L1抗体 | PD-L1を標的に免疫のブレーキを抑える | アテゾリズマブ、デュルバルマブなど |
| 抗CTLA-4抗体 | T細胞活性化に関わる別の免疫チェックポイントを阻害する | イピリムマブ |
| NK1受容体拮抗薬 | 抗がん薬による急性・遅発性の悪心・嘔吐を予防する | アプレピタント(イメンド、プロイメンド関連製剤) |
| その他の支持療法薬 | 骨髄抑制、痛み、便秘、骨転移、口内炎などへの対応 | G-CSF製剤、オピオイド鎮痛薬、緩下薬、骨修飾薬など |
ニボルマブとペムブロリズマブは、PD-1という免疫細胞上の受容体を標的とする抗体薬です。通常、PD-1とPD-L1などの結合は、免疫反応が強くなりすぎないように抑えるブレーキとして働きます。がん細胞はこの仕組みを利用して免疫から逃れることがあり、抗PD-1抗体はそのブレーキを解除して免疫反応を高めます。非小細胞肺がん、悪性黒色腫、腎細胞がん、胃がん、頭頸部がん、ホジキンリンパ腫など、承認されるがん種は薬剤・治療段階・併用療法により異なります。
免疫チェックポイント阻害薬は、従来の抗がん薬とは異なり、免疫が正常な臓器まで攻撃してしまう「免疫関連有害事象」を起こすことがあります。皮膚炎、甲状腺機能異常、肺炎、大腸炎、肝炎、腎炎、1型糖尿病、副腎不全、神経・筋肉の障害など、多様な症状があり得ます。治療開始から早期だけでなく、治療中止後に現れる場合もあるため、体調変化を継続して伝える必要があります。
アプレピタントは、脳の嘔吐に関わるNK1受容体をブロックする薬です。シスプラチンなど、吐き気・嘔吐を起こしやすい抗がん薬を使用する際に、5-HT3受容体拮抗薬や副腎皮質ステロイドなどと組み合わせて、急性期および遅発性の悪心・嘔吐を予防します。吐き気が起きてからだけでなく、起きにくくするために治療前から使うことがある薬です。ワルファリン、ホルモン製剤などを含む相互作用に注意が必要です。
支持療法にはこのほか、白血球減少に対応するG-CSF製剤、がん疼痛を和らげる鎮痛薬、便秘・下痢を調整する薬、骨転移に伴う骨関連事象を抑える骨修飾薬などがあります。使用する支持療法薬は、抗がん薬の種類、治療目的、症状、検査値により個別に決まります。
ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、イピリムマブなどは点滴静注で使用されます。投与日には採血、問診、必要に応じて画像・内分泌検査を行い、安全に治療できるか確認します。アプレピタントは内服カプセルや注射剤があり、治療レジメンに合わせて制吐薬として組み込まれます。支持療法薬には内服、注射、貼付、坐剤など多様な剤形があります。