

その他の原因として、高トリグリセリド血症、高カルシウム血症、薬剤、外傷、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)に関連する膵炎、膵胆道系腫瘍などがあります。ACGの2024年ガイドラインでは、胆石や明確な飲酒歴がない場合にトリグリセリドを測定し、特に1,000 mg/dLを超える場合は原因として考慮するとしています。薬剤性を疑う場合も、服薬開始と発症の時間関係や他の原因を確認し、単に薬剤を使用しているだけで因果関係を断定しないことが重要です。
参考)https://congress-med.ru/assets/files/2024/2024-acg-guidelines-po-diagnostike-i-lecheniyu-ostrogo-pankreatita.pdf
原因不明の膵炎では、初回検査で見つからなかった微小結石や膵腫瘍などが後から判明することがあります。必要に応じて腹部超音波の再検、磁気共鳴胆管膵管撮影(MRCP)、超音波内視鏡(EUS)を追加します。特に40歳を超える原因不明例や、遷延・再発する症例では、膵腫瘍の可能性も検討します。成因検索は診断名を付けるためだけでなく、緊急処置の要否と再発予防策を決めるために行います。
日本の急性膵炎診断基準では、次の三項目のうち二項目以上を満たし、他の膵疾患や急性腹症を除外した場合に診断します。慢性膵炎の急性増悪も対象に含まれます。血液検査の異常だけで診断を確定するのではなく、臨床所見と画像を組み合わせて判断することが重要です。
参考)https://hokuto.app/erManual/mxjcHRbQJ0E2m8A0xQIZ
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 臨床症状 | 上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある。 | 背部痛や嘔吐を伴うことがあるが、症状は特異的ではない。 |
| 膵酵素 | 血中または尿中に膵酵素の上昇がある。 | 血中リパーゼの測定が推奨される。 |
| 画像所見 | 超音波、CT、MRIで急性膵炎に伴う異常所見がある。 | 膵腫大、周囲炎症、液体貯留などを評価する。 |
| 診断の条件 | 三項目中二項目以上を満たし、他疾患を除外する。 | 消化管穿孔、腸管虚血、大動脈疾患などの鑑別を行う。 |
リパーゼはアミラーゼより診断に適していますが、膵炎以外の疾患でも上昇することがあります。アミラーゼは発症から時間が経過した場合や、アルコール性・高トリグリセリド血症に関連する膵炎で正常値を示す場合があります。また、診断後の膵酵素値の高さや低下だけでは、重症度、予後、食事再開の可否は判断できません。腎機能、循環状態、炎症反応、臓器障害などを別に評価する必要があります。
重要なのは、再評価を前提にすることです。初診時に軽症でも、数時間から数日の経過で臓器障害が進むことがあります。国内では少なくとも診断時、翌日、さらにその翌日まで繰り返し予後因子を確認することが推奨されています。スコアの数値だけでなく、酸素需要の増加、血圧低下、尿量減少、意識状態の変化など、ベッドサイドで得られる情報も診療判断に直結します。
なお、改訂アトランタ分類では、48時間を超えて持続する臓器不全を重症の中心的な定義としています。国内の予後因子・CT Gradeによる重症判定と、改訂アトランタ分類による臓器不全の持続時間を用いた分類は、同じものではありません。診療録、紹介状、研究報告では、どの基準による「重症」なのかを明示すると情報共有が正確になります。
初期治療の中心は、呼吸循環の安定化、適切な輸液、疼痛管理、栄養管理です。急性膵炎では血管外への体液移動などによって循環血液量が不足することがありますが、「多ければ多いほどよい」という輸液は適切ではありません。ACGの2024年ガイドラインは、適度に積極的な等張晶質液の投与を提案し、生理食塩液より乳酸リンゲル液を選ぶことを条件付きで推奨しています。心疾患や腎疾患がある患者では、特に容量過負荷に注意します。
栄養管理では、長期間の絶食を一律に続ける方針から、早期に経口・経腸栄養を導入する方針へ変化しています。軽症例では、忍容性に応じて入院後24~48時間以内の経口摂取を検討します。食事は必ず流動食から段階的に進める必要はなく、低脂肪の固形食から開始することも提案されています。膵酵素の正常化だけを待つのではなく、悪心・嘔吐、疼痛、消化管機能などを総合的に判断します。
退院後は、原因に応じた再発予防が必要です。アルコール性膵炎では断酒支援を行い、必要に応じて依存症診療につなげます。喫煙も再発に関係するため禁煙を支援します。高トリグリセリド血症が原因の場合は脂質管理を継続し、薬剤性が疑われる場合は処方医と再投与の可否や代替薬を検討します。原因不明例では、急性期の検査だけで検索を終了せず、回復後の追加評価につなげます。