急性膵炎とは?医療従事者が押さえる診断と治療

急性膵炎とは?医療従事者が押さえる診断と治療

急性膵炎とは、膵臓の急性炎症から臓器不全に進展することもある疾患です。医療従事者向けに原因、症状、診断基準、重症度判定、輸液・栄養療法、再発予防を解説します。初期診療で見逃せないポイントは何でしょうか?

急性膵炎とはの基礎知識と核心ガイド

急性膵炎の診断と初期対応の重要点
診断は症状・膵酵素・画像で判断

腹痛、膵酵素上昇、画像異常のうち二項目以上で診断し、消化管穿孔などの急性腹症も除外します。

重症度は経時的に再評価

初診時に軽症でも重症化するため、予後因子と臓器機能を繰り返し評価し、必要時は専門施設へ転送します。

輸液と早期栄養を適切に調整

循環状態に応じて輸液量を調整し、過剰輸液を避けながら、忍容性に応じた早期経口・経腸栄養を検討します。


急性膵炎とは:病態と主な原因



その他の原因として、高トリグリセリド血症、高カルシウム血症、薬剤、外傷、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)に関連する膵炎、膵胆道系腫瘍などがあります。ACGの2024年ガイドラインでは、胆石や明確な飲酒歴がない場合にトリグリセリドを測定し、特に1,000 mg/dLを超える場合は原因として考慮するとしています。薬剤性を疑う場合も、服薬開始と発症の時間関係や他の原因を確認し、単に薬剤を使用しているだけで因果関係を断定しないことが重要です。


参考)https://congress-med.ru/assets/files/2024/2024-acg-guidelines-po-diagnostike-i-lecheniyu-ostrogo-pankreatita.pdf
原因不明の膵炎では、初回検査で見つからなかった微小結石や膵腫瘍などが後から判明することがあります。必要に応じて腹部超音波の再検、磁気共鳴胆管膵管撮影(MRCP)、超音波内視鏡(EUS)を追加します。特に40歳を超える原因不明例や、遷延・再発する症例では、膵腫瘍の可能性も検討します。成因検索は診断名を付けるためだけでなく、緊急処置の要否と再発予防策を決めるために行います。



症状と診断基準:膵酵素だけで決めない

日本の急性膵炎診断基準では、次の三項目のうち二項目以上を満たし、他の膵疾患や急性腹症を除外した場合に診断します。慢性膵炎の急性増悪も対象に含まれます。血液検査の異常だけで診断を確定するのではなく、臨床所見と画像を組み合わせて判断することが重要です。


参考)https://hokuto.app/erManual/mxjcHRbQJ0E2m8A0xQIZ

項目 基準・内容 備考
臨床症状 上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある。 背部痛や嘔吐を伴うことがあるが、症状は特異的ではない。
膵酵素 血中または尿中に膵酵素の上昇がある。 血中リパーゼの測定が推奨される。
画像所見 超音波、CT、MRIで急性膵炎に伴う異常所見がある。 膵腫大、周囲炎症、液体貯留などを評価する。
診断の条件 三項目中二項目以上を満たし、他疾患を除外する。 消化管穿孔、腸管虚血、大動脈疾患などの鑑別を行う。

リパーゼはアミラーゼより診断に適していますが、膵炎以外の疾患でも上昇することがあります。アミラーゼは発症から時間が経過した場合や、アルコール性・高トリグリセリド血症に関連する膵炎で正常値を示す場合があります。また、診断後の膵酵素値の高さや低下だけでは、重症度、予後、食事再開の可否は判断できません。腎機能、循環状態、炎症反応、臓器障害などを別に評価する必要があります。



重症度判定と見逃せない観察項目

重要なのは、再評価を前提にすることです。初診時に軽症でも、数時間から数日の経過で臓器障害が進むことがあります。国内では少なくとも診断時、翌日、さらにその翌日まで繰り返し予後因子を確認することが推奨されています。スコアの数値だけでなく、酸素需要の増加、血圧低下、尿量減少、意識状態の変化など、ベッドサイドで得られる情報も診療判断に直結します。


  • 循環:血圧、脈拍、末梢循環、尿量、BUNやヘマトクリットの推移から、循環血液量不足と治療反応を確認します。
  • 呼吸:呼吸数、酸素飽和度、酸素投与量、必要に応じた血液ガスで呼吸障害の進行を評価します。
  • 腎機能:クレアチニン、BUN、尿量を追跡し、循環不全や急性腎障害を把握します。
  • 炎症と全身状態:体温、白血球数、CRP、意識状態を確認し、SIRSや感染症の可能性を検討します。
  • 輸液関連:入出量、体重、浮腫、呼吸状態を確認し、過剰輸液にも注意します。

なお、改訂アトランタ分類では、48時間を超えて持続する臓器不全を重症の中心的な定義としています。国内の予後因子・CT Gradeによる重症判定と、改訂アトランタ分類による臓器不全の持続時間を用いた分類は、同じものではありません。診療録、紹介状、研究報告では、どの基準による「重症」なのかを明示すると情報共有が正確になります。



初期治療:輸液・鎮痛・早期栄養

初期治療の中心は、呼吸循環の安定化、適切な輸液、疼痛管理、栄養管理です。急性膵炎では血管外への体液移動などによって循環血液量が不足することがありますが、「多ければ多いほどよい」という輸液は適切ではありません。ACGの2024年ガイドラインは、適度に積極的な等張晶質液の投与を提案し、生理食塩液より乳酸リンゲル液を選ぶことを条件付きで推奨しています。心疾患や腎疾患がある患者では、特に容量過負荷に注意します。


栄養管理では、長期間の絶食を一律に続ける方針から、早期に経口・経腸栄養を導入する方針へ変化しています。軽症例では、忍容性に応じて入院後24~48時間以内の経口摂取を検討します。食事は必ず流動食から段階的に進める必要はなく、低脂肪の固形食から開始することも提案されています。膵酵素の正常化だけを待つのではなく、悪心・嘔吐、疼痛、消化管機能などを総合的に判断します。


ACG急性膵炎診療ガイドライン2024の概要


原因別治療と合併症管理・再発予防

退院後は、原因に応じた再発予防が必要です。アルコール性膵炎では断酒支援を行い、必要に応じて依存症診療につなげます。喫煙も再発に関係するため禁煙を支援します。高トリグリセリド血症が原因の場合は脂質管理を継続し、薬剤性が疑われる場合は処方医と再投与の可否や代替薬を検討します。原因不明例では、急性期の検査だけで検索を終了せず、回復後の追加評価につなげます。





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