

めまいの問診では、「ぐるぐるする」「ふわふわする」といった感覚の表現に加えて、いつ始まり、どれほど続き、何によって起こるのかを具体化します。米国救急医学会のGRACE-3は、急性めまいの評価で症状の質だけに頼るのではなく、時間経過と誘因に基づく診療を重視しています。なお、このガイドラインの主な対象は、発症から2週間未満の急性めまいを呈する成人救急患者であり、慢性症状や小児にそのまま当てはめるものではありません。
参考)https://www.saem.org/publications/grace/grace-3
例えば、「頭を動かすとめまいがする」という訴えでは、動かしていないときは無症状で、特定の頭位によって短い発作が起こるのか、安静時から続いているめまいが動作で悪化するだけなのかを区別します。この違いは、誘発性の反復発作と持続性の急性前庭症候群を分け、適切な診察手技を選ぶために重要です。
頭痛とめまいの鑑別では、発作性か持続性か、明確な誘因があるか、聴覚症状や神経症状を伴うかを組み合わせて判断します。自然に起こる反復性めまいでは前庭性片頭痛、メニエール病、一過性脳虚血発作などが鑑別となり、急に始まって持続するめまいでは前庭神経炎と脳卒中の区別が重要になります。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 前庭性片頭痛 | 反復する前庭症状に、片頭痛の既往と発作時の片頭痛徴候が関連する。 | |
| 良性発作性頭位めまい症 | 特定の頭位変換をきっかけとする短いめまい発作を評価する。 | |
| メニエール病 | めまいに伴う変動性の難聴、耳鳴、耳閉感などを評価する。 | |
| 前庭神経炎 | 急性発症の持続性めまいを呈する末梢性疾患として検討する。 | 脳卒中との鑑別が前提であり、眼振や歩行などを評価する。 |
| 後方循環の脳虚血 | 急性持続性めまいや自然発症の反復発作で鑑別する。 | |
| 二次性頭痛を来す疾患 | 頭蓋内出血、感染症、動脈解離などを臨床所見に応じて検索する。 |
めまい患者では、四肢の麻痺だけを確認して評価を終えないことも重要です。GRACE-3では、脳神経、視野、眼球運動、四肢協調運動、歩行に着目した診察を推奨しています。眼振のない急性前庭症候群では、歩行不安定性の程度が中枢性・末梢性の判断に役立つため、転倒に注意して実際の姿勢保持と歩行能力を確認します。
一方、急性持続性めまいの中枢性・末梢性鑑別では、HINTSの適応を厳密にする必要があります。HINTSは頭部衝動検査、眼振評価、眼球の垂直偏倚の評価を組み合わせる診察であり、GRACE-3では眼振のある急性前庭症候群に対して、訓練を受けた診療者が実施することを推奨しています。短時間で消失する発作性めまいや、対象条件を満たさない患者に機械的に適用する検査ではありません。未訓練の診療者による実施では不正確となり得ます。
画像検査も目的を区別します。GRACE-3は、急性前庭症候群で中枢性と末梢性を区別するための頭部単純CTのルーチン使用を推奨せず、HINTSが中枢性または判定不明の場合にはMRI・MRAによる評価を推奨しています。これは「頭痛とめまいではCTが不要」という意味ではありません。突然の激しい頭痛から頭蓋内出血を疑う状況などは別の評価課題であり、頭痛の危険徴候と検査目的に応じて判断します。TIAが懸念される自然発症の反復性めまいでは、CTAやMRAによる血管評価が推奨されています。
治療は、緊急疾患の評価と原因診断に沿って選択します。後半規管型の良性発作性頭位めまい症では、Dix-Hallpike検査などで診断したうえでEpley法を行うことがGRACE-3で推奨されています。すべてのめまい患者に同じ頭位治療を行うのではなく、病型の確認が前提です。また、前庭神経炎に対する発症3日以内の短期ステロイド治療は、根拠の確実性が非常に低いことを踏まえ、患者との共同意思決定で検討する位置付けです。
再診時には頭痛の軽減だけでなく、めまいの頻度・持続時間、歩行や仕事への影響、薬剤使用日数も照合します。同時に、突然の強い頭痛、新たな神経症状、明らかな歩行障害などが出た場合は、予定の再診を待たずに緊急評価を受けるよう説明します。症状記録を用いた長期評価と、新しい危険徴候に対する再評価を両立させることが、頭痛とめまいを訴える患者の安全な継続診療につながります。