

薬品情報|漢方・生薬
漢方薬は、複数の生薬を一定の組み合わせで配合した日本の伝統医学に基づく医薬品です。生薬とは、植物、動物、鉱物などを由来とする薬用資源を加工したものを指します。医療用漢方製剤には、エキス顆粒、錠剤、細粒などがあり、一般用医薬品の漢方薬とは同じ処方名でも成分量、剤形、適応、購入方法が異なる場合があります。
漢方では、病名だけでなく、体質や症状の組み合わせ、冷え、汗、胃腸の状態、むくみ、痛み、疲れやすさなどを総合的に捉える「証(しょう)」という考え方を用います。ただし、漢方薬も医薬品であり、副作用、薬物相互作用、使用禁忌があります。「自然由来だから安全」「長く飲んでも問題ない」とは限りません。処方名ではなく、構成生薬と患者の状態を確認して選ぶ必要があります。
| 処方・種類 | 主な用途の例 | 構成生薬・製品例 |
|---|---|---|
| 葛根湯 | 感冒の初期、鼻かぜ、肩こりなど。体力中等度以上で発汗が少ない場合などに用いる | 葛根、麻黄、桂皮、芍薬、甘草、生姜、大棗/ツムラ葛根湯 |
| 小青竜湯 | 水様性鼻汁、鼻づまり、くしゃみ、気管支炎など | 麻黄、桂皮、芍薬、甘草、乾姜、細辛、五味子、半夏/ツムラ小青竜湯 |
| 六君子湯 | 食欲不振、胃もたれ、胃腸虚弱など | 人参、白朮または蒼朮、茯苓、半夏、陳皮、大棗、甘草、生姜/ツムラ六君子湯 |
| 柴苓湯 | むくみ、口渇、尿量減少、下痢などを伴う症状。疾患により使用される | 小柴胡湯と五苓散の構成生薬を含む処方/ツムラ柴苓湯 |
| 牛車腎気丸 | 下肢痛、腰痛、しびれ、排尿関連症状など。体力低下・冷えを伴う場合に用いる | 八味地黄丸に牛膝・車前子を加えた処方/ツムラ牛車腎気丸 |
葛根湯は、かぜのひき始めで、寒気はあるものの汗が出にくく、首・肩のこわばりを伴うような状態に用いられる代表的な処方です。麻黄を含むため、動悸、不眠、発汗過多、血圧上昇などに注意が必要です。高血圧、心疾患、甲状腺機能亢進症、排尿障害がある人では、使用前に確認します。かぜの原因を直接殺す抗ウイルス薬や抗菌薬ではありません。
小青竜湯は、水のような鼻水、くしゃみ、鼻づまり、咳、痰などを伴うアレルギー性鼻炎や感冒症状に用いられることがあります。葛根湯と同様に麻黄を含むため、交感神経を刺激する成分による動悸、血圧上昇、不眠などに注意が必要です。花粉症などで抗ヒスタミン薬や気管支拡張薬を併用している場合は、薬の重複作用を確認します。
六君子湯は、胃腸が弱く、食欲が落ちている、胃がもたれる、少量で満腹になるといった症状に用いられる処方です。食欲を増やす作用に関する研究もありますが、すべての胃痛、吐き気、体重減少に適するものではありません。黒い便、吐血、強い腹痛、急な体重減少、飲み込みにくさなどがあれば、消化管の病気を除外するために受診が必要です。
柴苓湯は、小柴胡湯と五苓散に由来する生薬構成を持ち、炎症や水分バランスに関わる症状で用いられます。腎疾患、肝疾患、ネフローゼ症候群などで医師が処方する場合もありますが、自己判断でむくみに使用する薬ではありません。甘草を含むため、低カリウム血症、血圧上昇、むくみ、筋力低下を伴う偽アルドステロン症に注意します。
牛車腎気丸は、加齢や冷え、体力低下を背景に、腰痛、下肢痛、しびれ、頻尿・排尿困難などを伴う場合に用いられる処方です。糖尿病性末梢神経障害によるしびれ・痛みなどに使われることがありますが、しびれの原因には脊椎疾患、血管障害、ビタミン欠乏、神経疾患など多くの可能性があります。症状の進行や筋力低下を伴う場合は診断を優先します。
医療用漢方製剤は主にエキス顆粒で、湯に溶かして服用する場合や、そのまま服用する場合があります。処方によっては錠剤、細粒、煎じ薬として提供されることもあります。医療用と一般用では、同じ名称でも1日量中の生薬量、添加物、適応表示が一致しないことがあります。複数の漢方薬を併用すると、甘草、麻黄、大黄などの生薬が重複することがあるため、処方名だけでなく成分を確認します。