

ツムラ六君子湯エキス顆粒(医療用)は、漢方処方である六君子湯の乾燥エキスを顆粒化した医療用医薬品です。一般名は六君子湯エキスであり、製造販売元は株式会社ツムラです。添付文書上は、胃腸の弱い患者で、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすいといった状態を目標として用いることが示されています。
効能又は効果は、胃炎、胃アトニー、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛および嘔吐です。ただし、病名のみで投与の適否を判断するのではなく、患者の体質や症候、すなわち漢方医学における「証」を考慮する必要があります。食欲低下や上腹部症状には、悪性疾患、消化性潰瘍、感染症、薬剤性障害、内分泌・代謝異常、精神心理的要因なども関与し得るため、必要な鑑別・検査を行ったうえで投与対象を判断します。
参考)https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/460026_5200141D1034_1_15
とくに高齢者、がん薬物療法中の患者、多剤併用患者では、食欲不振、悪心、体重減少、倦怠感などが複数の要因で生じます。六君子湯を処方する場合には、「食欲がない」という主訴だけで漫然と継続せず、症状の発症時期、食事摂取量、体重変化、疼痛、嘔吐、便通、発熱、血液検査値、原疾患の活動性および併用薬を評価したうえで、治療目標を患者と共有することが大切です。
PMDA 医療用医薬品情報:ツムラ六君子湯エキス顆粒(医療用)
本剤は、ソウジュツ、ニンジン、ハンゲ、ブクリョウ、タイソウ、チンピ、カンゾウ、ショウキョウの8種類の生薬からなる処方です。ツムラのインタビューフォームでは、これらの生薬を水のみで煎出して乾燥エキスを調製し、乾式造粒法で顆粒剤としていることが示されています。漢方製剤は複数の生薬成分を含むため、単一成分製剤とは異なる観点で、併用薬・併用漢方製剤との生薬重複を確認する必要があります。
参考)302 Found
通常、成人には1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与します。年齢、体重、症状により適宜増減されます。服薬支援では、食前は一般に食事のおよそ30分前、食間は食後およそ2時間を目安に説明されますが、実際には患者の生活状況、消化器症状、服薬アドヒアランスおよび処方医の指示に従うことを優先します。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 販売名 | ツムラ六君子湯エキス顆粒(医療用) | 一般名は六君子湯エキス |
| 構成生薬 | ソウジュツ、ニンジン、ハンゲ、ブクリョウ、タイソウ、チンピ、カンゾウ、ショウキョウ | 甘草を含有する |
| 通常成人用量 | 1日7.5gを2~3回に分割して経口投与 | 年齢、体重、症状により適宜増減 |
| 投与時期 | 食前又は食間 | 服薬方法は処方指示を優先 |
| 主な評価対象 | 食欲、心窩部症状、悪心・嘔吐、摂取量、体重、生活機能 | 開始前後で比較可能な指標を設定 |
散剤・顆粒剤の服用が難しい患者には、服用時の味やにおい、口腔内への残留感、嚥下機能、悪心の有無を確認します。少量の水またはぬるま湯で服用する方法に加え、服薬ゼリー等の使用可否は個々の患者背景・製剤特性・施設方針を踏まえて検討します。自己判断で服用回数や服用量を変更しないこと、飲み忘れ時の対応は処方医・薬剤師の指示に従うことも、患者指導の基本です。
参考)https://www.tsumura.co.jp/products/item/043.pdf
添付文書では、本剤の使用に際し、患者の証を考慮して投与し、経過を十分に観察すること、症状や所見の改善が認められない場合には継続投与を避けることが求められています。したがって、処方開始時には「何を改善指標とするか」と「どの時点で効果不十分と判断するか」を明確にする必要があります。たとえば食欲不振が主訴であれば、主観的な食欲だけではなく、食事摂取量、体重、悪心・嘔吐の頻度、日常生活動作、治療継続への影響などを記録して評価します。
本剤にはカンゾウが含まれます。このため、既に甘草を含有する漢方製剤、甘草またはグリチルリチン酸を含む医薬品・健康食品等を使用していないかを聴取することが必要です。重複投与は甘草由来の有害事象リスクを高める可能性があります。医療機関内の処方薬だけでなく、他院処方、市販薬、サプリメント、いわゆる健康食品まで含めて確認し、薬剤情報提供書やお薬手帳を活用します。
妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与します。授乳中の患者では、治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳継続または中止を検討します。これらの判断は、症状の重症度、代替手段の有無、母体・児への影響を総合して行います。
副作用として、発疹、蕁麻疹、悪心、腹部膨満感および下痢などが報告されています。消化器症状に対して処方される薬剤であるため、投与後に出現した悪心、腹部膨満感、下痢については、原疾患の悪化、食事内容、感染性胃腸炎、抗菌薬などの併用薬、あるいは本剤による副作用のいずれかを機械的に決めつけず、時間的関係と臨床経過を評価することが重要です。
重大な副作用として、偽アルドステロン症、ミオパチー、肝機能障害、黄疸および間質性肺炎に注意します。甘草を含むことから、血清カリウム値や血圧値等に十分留意することが添付文書に明記されています。浮腫、体重の急増、血圧上昇、尿量減少、低カリウム血症、筋力低下、四肢のけいれん・しびれなどは、偽アルドステロン症またはそれに続発するミオパチーを疑う手がかりになります。
間質性肺炎については、発熱、乾性咳嗽、呼吸困難、労作時の息切れ、酸素飽和度低下などに注意します。肝機能障害や黄疸については、全身倦怠感、食欲不振、掻痒感、黄疸、褐色尿などの症状に加え、AST、ALT、ALP、γ-GTP、総ビリルビンなどを臨床状況に応じて確認します。異常が疑われる場合には投与を中止し、速やかに適切な検査・専門的評価につなげます。
ツムラ六君子湯エキス顆粒(医療用)に関する副作用発現頻度
六君子湯の処方後は、「処方されているから続ける」のではなく、あらかじめ設定したアウトカムに基づいて有効性と安全性を判定します。食欲、食事摂取量、上腹部不快感、嘔吐回数、便通、体重、栄養状態、生活の質、原疾患の治療継続性などを総合的に追跡し、改善が乏しい場合には原因の再評価と治療計画の見直しを行います。添付文書でも、症状・所見の改善が認められない場合は継続投与を避けることが示されています。
患者説明では、「漢方薬なので副作用は起こらない」という誤解を避けることが必要です。甘草を含むこと、他の漢方薬や市販薬との重複で問題が生じる可能性があること、むくみ、血圧上昇、だるさ、筋力低下、手足のけいれん・しびれ、発熱、咳、息苦しさ、皮膚や白目の黄染などがあれば、服用を続けずに速やかに医療機関へ相談することを、平易な言葉で伝えます。
また、患者が自己判断で中止・増量・減量したり、飲み忘れを補うために次回分を倍量服用したりしないよう説明します。お薬手帳には本剤を記載し、受診先や薬局が変わる際にも提示するよう促します。処方医、薬剤師、看護師、管理栄養士などが、食事摂取量、体重、服薬状況、副作用兆候を共有することで、症候だけでなく患者の生活機能と治療全体を見据えた継続判断につながります。