


ティメル錠は、協和薬品工業が販売する乗物酔い薬であり、一般用医薬品の第2類医薬品に分類されています。効能・効果は「乗物酔によるめまい・吐き気・頭痛の予防及び緩和」です。車、バス、船、航空機などの乗車・乗船・搭乗時に生じる不快な症状に対し、予防目的または症状発現後の緩和目的で用いられます。1日1回の服用設定であることが製品上の特徴です。
参考)https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/ResultDataSetPDF/230128_J1001000114_01_01/A
乗物酔いは、視覚、前庭感覚、体性感覚などから入力される情報の不一致が関与すると考えられており、悪心、嘔吐、冷汗、顔面蒼白、めまい、頭痛などを伴うことがあります。ティメル錠は、抗ヒスタミン作用を有する塩酸メクリジンと、抗コリン作用を有するスコポラミン臭化水素酸塩水和物を配合し、乗物の動揺や加速度に伴う神経の興奮を抑えることを意図した製剤です。さらに無水カフェインも配合されています。
医療従事者がOTC医薬品の相談を受ける際には、単に「酔い止め」として案内するだけでは不十分です。症状が典型的な乗物酔いか、急性めまい、感染症、片頭痛、消化器疾患、薬剤性悪心などを疑うべき状態ではないかをまず確認し、そのうえで年齢、基礎疾患、併用薬、移動後の運転予定などを評価することが重要です。
PMDA掲載のティメル錠製品情報
ティメル錠は、1日量である1錠中に塩酸メクリジン25mg、スコポラミン臭化水素酸塩水和物0.25mg、無水カフェイン40mgを含有します。塩酸メクリジンはH1受容体遮断作用を主な薬理作用とする成分で、乗物酔いに伴う悪心やめまいに用いられます。スコポラミン臭化水素酸塩水和物は抗コリン作用をもち、前庭刺激に関連する悪心・嘔吐の抑制に寄与すると考えられます。
一方で、スコポラミンの抗コリン作用は、口渇、便秘、散瞳に伴う見えにくさ、まぶしさ、排尿困難などの原因になり得ます。無水カフェインを含むため、カフェイン摂取により不眠、動悸、焦燥感などが出やすい人では、エナジードリンク、コーヒー、茶類、カフェイン含有感冒薬などとの総摂取量にも注意を向ける必要があります。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 分類 | 第2類医薬品 | 乗物酔い薬として販売される一般用医薬品 |
| 効能・効果 | 乗物酔によるめまい・吐き気・頭痛の予防及び緩和 | 原因不明のめまい・嘔気への安易な自己判断使用は避ける |
| 成人の用量 | 15歳以上は1回1錠、1日1回 | 予防目的では乗車船の約30分前に服用する |
| 小児の用量 | 7歳以上15歳未満は1回1/2錠、1日1回 | 保護者の指導監督下で服用させる |
| 服用不可年齢 | 7歳未満 | 乳幼児には服用させない |
| 有効成分 | 塩酸メクリジン、スコポラミン臭化水素酸塩水和物、無水カフェイン | 抗ヒスタミン作用・抗コリン作用を考慮する |
予防目的では、乗車船の約30分前に服用することが案内されています。服用回数は1日1回であり、「効かなければ短時間で追加服用する」という自己判断を防ぐ説明が必要です。とくに旅行中は複数の市販薬を持参するケースがあるため、本人がすでに服用した薬剤名、服用時刻、成分を具体的に確認してください。
参考)ティメル錠の基本情報・添付文書情報 - データインデックス
ティメル錠の販売時・服薬指導時には、禁忌的な重複使用と、服用前相談の対象を切り分ける必要があります。本剤の服用中は、他の乗物酔い薬、かぜ薬、解熱鎮痛薬、鎮静薬、鎮咳去痰薬、胃腸鎮痛鎮痙薬、抗ヒスタミン成分を含む内服薬などを使用しないよう注意が示されています。抗ヒスタミン作用や抗コリン作用、鎮静作用が重なることで、眠気、口渇、便秘、視覚異常、排尿困難などの副作用リスクが増加するおそれがあります。
参考)ティメル錠 6錠(協和薬品工業)
服用前に医師、薬剤師または登録販売者へ相談すべき人として、医師の治療を受けている人、妊婦または妊娠している可能性がある人、高齢者、薬剤等でアレルギー症状を起こした経験がある人が挙げられています。また、排尿困難がある人、緑内障または心臓病と診断された人も相談対象です。医療従事者は病名の有無だけでなく、前立腺肥大症に伴う排尿症状、閉塞隅角緑内障の既往・疑い、不整脈や狭心症などの治療状況を具体的に把握することが望まれます。
なお、OTC製品であっても「乗り物に乗るたびに必ず強い吐き気がある」「乗車していないときにも回転性めまいが続く」「耳鳴り、難聴、歩行障害、片側の脱力、激しい頭痛を伴う」といった場合は、単純な乗物酔いと決めつけるべきではありません。症状の性質や随伴症状に応じて、医療機関の受診を促す判断が必要です。
ティメル錠で確認すべき副作用には、皮膚症状として発疹・発赤、かゆみ、精神神経系症状として頭痛、泌尿器症状として排尿困難、その他として顔のほてりや異常なまぶしさが挙げられます。これらが現れた場合は、服用を中止し、製品文書を持参して医師、薬剤師または登録販売者に相談するよう案内します。
また、口のかわき、便秘、眠気、目のかすみは、服用後に起こることがある症状です。持続または増強する場合は服用を中止し、相談が必要です。これらは抗コリン作用や抗ヒスタミン作用と整合する症状であり、とくに高齢者では、口渇による飲水不足、便秘悪化、見えにくさによる転倒、眠気による事故といった二次的な問題につながる可能性があります。
服用後は、乗物または機械類の運転操作をしないことが重要な注意事項です。製品情報では、眠気、目のかすみ、異常なまぶしさなどが現れる可能性が示されています。ここでいう「乗物」には自動車だけでなく、オートバイ、自転車、電動キックボードなど、注意力・視機能・迅速な判断を必要とする移動手段も含めて説明するのが実務的です。
旅行先や帰宅時に自ら運転する予定がある人には、服用の可否を慎重に考えるよう促してください。「乗り物酔いを予防するために飲んだが、到着後にレンタカーを運転する」といった行動計画は、服薬指導の段階で確認しておくべき典型例です。服用後の症状には個人差があり、過去に眠気を自覚しなかったとしても、安全運転を保証する根拠にはなりません。
ティメル錠の相談対応では、症状、年齢、目的、既往歴、併用薬、運転予定の6点を短時間でも確認すると、適正使用につながります。まず、対象者が7歳以上か、7歳以上15歳未満なら半錠という年齢別用量が守られるかを確認します。次に、予防目的なら乗車船の約30分前であること、服用は1日1回であることを明確に伝えます。
続いて、現在使用中の薬を確認します。患者・購入者は「酔い止めは飲んでいない」と答えても、総合感冒薬、鼻炎用内服薬、アレルギー薬、睡眠改善薬、鎮咳去痰薬などに抗ヒスタミン成分や鎮静性成分が含まれていることがあります。製品名だけで判断できない場合には、薬剤情報提供書、お薬手帳、現物のパッケージを確認し、成分重複の可能性を検討してください。
7歳以上15歳未満では1回1/2錠となるため、分割後の残りの取扱いにも説明が必要です。製品情報では、分割した1錠の残りを使用する場合、清潔な紙に包み外箱中に保管し、2日以内に使用するよう示されています。直射日光を避け、湿気の少ない涼しい場所で保管し、小児の手の届かない場所に置くこと、別容器へ入れ替えないこと、使用期限を過ぎた製品を使用しないことも案内します。
医療従事者にとっての要点は、ティメル錠を「乗物酔いに使う市販薬」とだけ扱わず、抗ヒスタミン作用・抗コリン作用をもつ配合剤として評価することです。服用対象、用量、重複使用、緑内障・排尿困難・心疾患、服用後の運転回避を一連で確認することで、短時間の相談対応でも安全性を高められるでしょう。
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