漢方31番・呉茱萸湯の効果と副作用を医療者向けに解説

漢方31番・呉茱萸湯の効果と副作用を医療者向けに解説

漢方31番として知られる呉茱萸湯について、承認効能、構成生薬、用法・用量、副作用、頭痛治療のエビデンスを整理します。冷えや悪心を伴う頭痛に対し、医療従事者はどのように適応を見極め、安全性と効果を評価すべきでしょうか?

漢方31番の基礎知識と核心ガイド

漢方31番の適応と安全な使い方の要点
31番は呉茱萸湯の識別番号

ツムラの31番は呉茱萸湯です。手足の冷えやすい、中等度以下の体力の患者の頭痛などに適応があります。

用量と副作用を製品別に確認

成人の標準用量は一日七・五グラムです。発疹や肝機能異常に注意し、併用する漢方の生薬重複も確認します。

研究対象を踏まえて効果を評価

頭痛予防の比較試験はありますが、対象患者の選択に注意が必要です。頭痛頻度と服薬回数を記録して評価します。


漢方31番は呉茱萸湯を指す



「漢方31番」という検索語で一般に探されているのは、ツムラ呉茱萸湯エキス顆粒(医療用)です。読み方は「ごしゅゆとう」で、電子添文に記載された識別コードは「ツムラ/31」です。医療現場で患者が「31番の漢方を飲んでいる」と説明した場合、まず呉茱萸湯を候補として考えます。ただし、番号だけで服薬内容を確定せず、お薬手帳、処方箋、薬袋などで販売名と製造販売元を確認することが重要です。


参考)302 Found
本記事で扱う効能・効果、用法・用量、副作用は、原則としてツムラの医療用製剤の電子添文に基づきます。「漢方31番」という呼び方と、呉茱萸湯という処方名、実際に交付されている製品の販売名を区別して情報を整理してください。本剤は苦味と特異なにおいのある顆粒剤で、服薬状況を確認するときには、患者が指示どおりに服用できているかも聞き取る必要があります。


呉茱萸湯は、ゴシュユ、タイソウ、ニンジン、ショウキョウの4種類の生薬から構成されます。ツムラ製剤は、顆粒7.5g中に混合生薬由来の乾燥エキス2.25gを含有しています。原料生薬の量、抽出された乾燥エキスの量、患者が服用する顆粒の量は別の数値です。処方量や他製品との比較を説明する際に、この3つを混同しないようにします。


処方を考える際の中心は、頭痛という病名だけでなく、患者の体質と随伴症状です。東京女子医科大学東洋医学研究所は、呉茱萸湯を片頭痛や常習性の頭痛に用いる処方として紹介し、冷え症で、悪心・嘔吐、げっぷを伴う場合を使用の目安に挙げています。同施設は、実際の処方選択では問診や腹診などを含めて総合的に判断すると説明しています。


参考)頭痛によく使われる漢方薬 - 東洋医学研究所
東京女子医科大学東洋医学研究所:頭痛によく使われる漢方薬


承認効能・構成生薬・用法用量

ツムラ呉茱萸湯エキス顆粒(医療用)の承認効能は、「手足の冷えやすい中等度以下の体力のものの次の諸症:習慣性偏頭痛、習慣性頭痛、嘔吐、脚気衝心」です。電子添文では「偏頭痛」と表記されていますが、この記事では一般的な医学用語として「片頭痛」を使用します。重要なのは、列挙された症状だけでなく、手足の冷えと体力についての条件も含めて適応を読むことです。


通常、成人には1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与します。年齢、体重、症状により適宜増減する規定がありますが、実際の患者指導では処方された1回量と服用回数を優先します。2.5g分包を使用する場合、1日7.5gは合計3包に相当します。ただし、分包数だけを伝えるのではなく、1回何包をいつ服用するのかまで具体的に確認してください。









項目 基準・内容 備考
販売名・識別コード ツムラ呉茱萸湯エキス顆粒(医療用)、ツムラ/31 番号だけでなく販売名も照合する。
承認効能 習慣性偏頭痛、習慣性頭痛、嘔吐、脚気衝心 手足の冷えやすい、中等度以下の体力の患者が対象。
成人の標準用量 1日7.5gを2~3回に分割 食前または食間に服用し、年齢・体重・症状により適宜増減する。
タイソウ 原料生薬として4.0g 顆粒7.5gを製造する際の混合生薬の割合に対応する。
ゴシュユ 原料生薬として3.0g 顆粒そのものに3.0gの生薬粉末を含むという意味ではない。
ニンジン・ショウキョウ 原料生薬として各2.0g、1.5g 4種類の混合生薬から乾燥エキス2.25gを得る。
添加剤 ステアリン酸マグネシウム、乳糖水和物 成分に関する問い合わせでは添加剤も確認する。

患者から「頭痛があるときだけ飲む薬なのか」と質問されることがあります。東京女子医科大学東洋医学研究所は、頓服的な使用と、頭痛のない時期にも継続して服用し発症頻度の低下を期待する使用の両方を紹介しています。一方、電子添文の標準用法は分割投与です。定期服用と頓用は目的が異なるため、患者が自己判断で切り替えないよう、処方医が意図した使用方法を共有する必要があります。


ツムラ呉茱萸湯エキス顆粒(医療用):電子添文


副作用と患者背景の確認事項

「漢方薬だから副作用がない」という説明は適切ではありません。ツムラ呉茱萸湯の電子添文には、頻度不明の副作用として、発疹、蕁麻疹などの過敏症と、AST・ALTなどの上昇を伴う肝機能異常が記載されています。異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うとされています。服薬開始後の皮膚症状や検査値の変化を、単に体質や漢方特有の反応として見過ごさないことが大切です。


また、電子添文は、患者の証を考慮して投与すること、経過を十分に観察すること、症状・所見の改善が認められない場合は継続投与を避けることを求めています。処方開始時に評価対象を明確にしなければ、効果が不明なまま同じ処方が続きやすくなります。頭痛そのものに加え、悪心・嘔吐や冷えなど、処方選択の根拠となった症状も再診時に確認します。


  • 妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する。

  • 授乳婦では、治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討する。

  • 小児等を対象とした臨床試験は実施されていない。成人の標準用量をそのまま小児の用量として扱わない。

  • 高齢者では一般に生理機能が低下しているため、減量するなど注意する。

  • 他の漢方製剤などを併用する場合は、含有生薬の重複に注意する。処方薬に加えて、患者が購入した漢方薬の内容も照合する。

呉茱萸湯の構成生薬には甘草が含まれていません。したがって、甘草を含む漢方製剤の注意事項を、そのまま呉茱萸湯単剤の成分由来のリスクとして説明するのは不正確です。ただし、本剤に甘草がないことと、併用薬を含めた安全性が保証されることは別です。複数の漢方を使用している場合は、呉茱萸湯だけでなく、処方全体の構成生薬を確認してください。


保管については、品質を保つためにできるだけ湿気を避け、直射日光の当たらない涼しい場所に置くよう案内します。開封後は特に湿気への注意が必要です。また、生薬を原料としているため、色調などに差が生じることがあると電子添文に記載されています。外観の違いについて問い合わせがあった場合は、この特性と実際の保管状態を分けて確認するとよいでしょう。



頭痛治療のエビデンスをどう読むか

呉茱萸湯には、頭痛治療に関する臨床研究があります。日本東洋医学会が公開する「頭痛の診療ガイドライン2021」の漢方関連記載の抽出資料では、漢方薬全体について、エビデンスの確実性はB、推奨の強さは「弱い推奨」とされています。この評価は漢方薬全体の位置づけであり、呉茱萸湯のあらゆる使用場面について一律に同じ確実性が保証されるという意味ではありません。


参考)https://www.jsom.or.jp/ebm/cpg/file/type_a/20211015.pdf
同資料に紹介された2006年の二重盲検ランダム化比較試験は、呉茱萸湯に反応する慢性頭痛患者53例を対象としています。ガイドラインの記載では、頭痛の発症頻度と鎮痛薬の服用回数の有意な減少が報告されています。ここで重要なのは、研究対象が、あらかじめ呉茱萸湯への反応を示した患者に限定されている点です。結果は反応する患者での有用性を支持しますが、未選択の頭痛患者全員に同じ効果が得られると解釈することはできません。


ロメリジンとのオープン・クロスオーバー試験も紹介されていますが、ガイドラインの解説は、症例数が少ないことと、ウォッシュアウト期間が短いことに注意を示しています。「比較薬より高い有効性を示した」という記述だけを取り出して、呉茱萸湯が片頭痛予防薬全般より優れていると結論づけるのは適切ではありません。研究デザイン、対象患者、評価項目、観察期間を一緒に読む必要があります。


症例集積研究などでは79.5%、89%といった改善率も紹介されています。ただし、これらは個々の研究における対象と評価基準に依存する数字です。患者に「約9割に効く」と一般化して説明すると、研究の条件を取り落とします。記事や服薬説明では、研究結果の存在を示すことと、患者個人の反応を保証しないことを両立させるのが適切です。


また、2021年のガイドラインには、呉茱萸湯などの漢方薬の頓用も片頭痛急性期治療の選択肢の一つとする記載があります。しかし、予防効果を調べた研究と、発作時の頓用効果を調べた研究は別に評価しなければなりません。頭痛頻度の減少を示した結果だけから、服用後すぐに痛みが消える、一定時間以内に必ず効く、といった説明はできません。


日本東洋医学会:頭痛の診療ガイドライン2021の漢方関連記載


処方後の評価と服薬説明の実際

漢方31番を処方した後は、効果判定を具体化することが重要です。電子添文は、改善が認められない場合に継続投与を避けるよう求めています。したがって、初回処方時に「何が改善すれば有効と判断するか」を患者と共有し、再診時に同じ項目を確認できる形にします。予防を目的とした定期服用であれば頭痛の頻度や鎮痛薬の使用状況、頓用であれば服用した発作ごとの経過を区別して把握します。


例えば、診療記録には「頭痛があった日」「痛みの程度」「悪心・嘔吐の有無」「急性期治療薬を使用した回数」「呉茱萸湯の服用状況」を記載する欄を設けられます。これは、ガイドラインで紹介された研究の評価項目である頭痛頻度と鎮痛薬服用回数に、実際の処方選択で重視される随伴症状と服薬状況を組み合わせた記録例です。単に「少し楽になった」という印象だけでなく、治療前後で比較できる情報を残すことが目的です。


効果発現の時期については、ガイドラインで紹介された症例集積研究に、2週間以内に改善を認めた例が多かったという記載があります。ただし、これは全患者で2週間以内に効くことや、2週間を一律の治療期間とすることを意味しません。電子添文にも、固定された効果判定日数は示されていません。研究での観察結果と、患者ごとの継続・変更の判断を区別して説明してください。


服薬説明では、「冷えや吐き気などを伴う頭痛に用いる漢方薬ですが、すべての頭痛に同じように効くわけではありません。処方された飲み方を守り、発疹などの変化があれば医療者に相談してください」と伝えると、適応と安全性を一緒に共有できます。苦味が強く服用できない場合も、効果がない場合も、その状況を聞き取ったうえで処方医と相談します。服薬できていない状態と、十分に服薬しても反応しない状態を分けることが、処方評価の前提です。


他の漢方薬との使い分けについて、東京女子医科大学東洋医学研究所は、気圧変化などに伴う頭痛では五苓散、胃腸虚弱で手足の冷えや頭痛・めまいがある場合では半夏白朮天麻湯などを紹介しています。ただし、これらは簡単な症状対応表だけで置き換えるための情報ではありません。同施設が示すように、問診や漢方的診察から総合的に判断し、呉茱萸湯が合わない場合は症状と処方選択を再評価します。


医療従事者が漢方31番を扱う際は、番号を入口として製品を正確に同定し、承認効能と患者の証を確認したうえで、用量、安全性、治療反応を継続的に点検することが基本です。本記事の製品情報は、確認した2023年12月改訂の電子添文に基づきます。実際の処方・調剤・服薬指導では、PMDAなどで対象製品の電子添文を改めて確認し、使用中の製品に即して判断してください。


PMDA:医療用医薬品の電子添文等情報検索

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