

炎症性腸疾患、肝胆道疾患、膵臓の病気では、病気の種類ごとに治療薬の役割が大きく異なります。潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患では、腸の過剰な炎症を抑え、症状の改善と再燃予防を目指します。肝胆道疾患では、胆汁の流れや胆汁成分に関係する薬が使われる場合があります。膵臓の外分泌機能が低下した場合には、消化酵素を補う薬が必要になることがあります。
腹痛、下痢、脂っぽい便、黄疸、体重減少などは、複数の病気で共通して起こり得ます。薬の名称だけで自己判断して治療を始めることはできません。内視鏡、血液検査、便検査、CT・MRI・超音波などで病態を確認し、消化器内科が治療計画を作ります。
| 種類 | 主な用途 | 一般名や製品例 |
|---|---|---|
| 5-アミノサリチル酸製剤 | 潰瘍性大腸炎、クローン病の腸管炎症の治療・再燃予防 | メサラジン、ペンタサ、アサコール、リアルダ |
| 副腎皮質ステロイド・免疫調整薬 | 炎症性腸疾患の活動期、病状に応じた治療 | プレドニゾロン、ブデソニド、アザチオプリンなど |
| 生物学的製剤・低分子化合物 | 中等症から重症の炎症性腸疾患など | インフリキシマブ、ベドリズマブ、ウパダシチニブなど |
| 胆汁酸製剤 | 原発性胆汁性胆管炎、C型慢性肝疾患における肝機能改善、胆石溶解など。適応は製剤で異なる | ウルソデオキシコール酸、ウルソ |
| 膵消化酵素補充剤 | 膵外分泌機能不全における消化酵素の補充 | パンクレリパーゼ、リパクレオン |

メサラジンは5-アミノサリチル酸製剤で、腸粘膜の炎症に関係する物質の働きを抑えることにより、潰瘍性大腸炎やクローン病の治療に用いられます。潰瘍性大腸炎は主に大腸に慢性的な炎症や潰瘍が生じる病気で、血便、下痢、腹痛などがみられます。クローン病は口から肛門までの消化管に炎症が起こり得る病気です。
メサラジンには、薬が腸の目的部位で放出されるよう設計された錠剤、顆粒、坐剤、注腸製剤などがあります。病変の場所や広がりに応じて剤形が選ばれます。下痢、腹痛、頭痛のほか、まれに腎機能障害、心筋炎、急性膵炎などの重い副作用があり、定期的な診察・検査が必要です。
ウルソデオキシコール酸は胆汁酸の一種です。胆汁は肝臓で作られ、脂肪の消化を助ける液体で、胆のうや胆管を通って腸へ流れます。ウルソデオキシコール酸は胆汁の流れや成分に関わり、原発性胆汁性胆管炎などの胆汁うっ滞性肝疾患、C型慢性肝疾患における肝機能の改善、コレステロール系胆石の溶解などで用いられる製剤があります。
黄疸、尿の色が濃い、白っぽい便、強いかゆみ、右上腹部痛、発熱がある場合は、胆石による胆管閉塞や胆管炎などを含めて緊急の評価が必要です。胆石がある場合でも、すべてが薬で溶けるわけではなく、石の種類・大きさ・場所によって内視鏡や手術などの治療が必要になります。
パンクレリパーゼは、アミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼなどの膵消化酵素を含む薬です。膵臓が十分な消化酵素を分泌できない膵外分泌機能不全では、脂肪便、下痢、腹部膨満、栄養不足、体重減少などが起こることがあります。パンクレリパーゼは、食事の消化を助けるために酵素を補充します。
慢性膵炎、膵切除後、膵がんなどの背景で膵外分泌機能不全が起きることがありますが、薬は病気の原因そのものを治すものではありません。栄養状態、便の性状、体重、血糖管理などを含め、消化器内科や栄養士と連携した管理が重要です。