細胞・遺伝子を用いる治療製品の種類と用途

細胞・遺伝子を用いる治療製品の種類と用途

細胞・遺伝子を用いる治療製品には、患者や提供者由来の細胞を加工して用いる製品、遺伝子を体内へ届けて必要な働きを補う製品などがあります。日本では、これらは薬機法上の「再生医療等製品」として、一般的な医薬品とは別の区分で審査・承認・安全対策が行われます。製造工程、品質管理、投与施設、長期の有効性・安全性

薬品情報|再生医療・先端治療

細胞・遺伝子を用いる治療製品

細胞・遺伝子を用いる治療製品には、患者や提供者由来の細胞を加工して用いる製品、遺伝子を体内へ届けて必要な働きを補う製品などがあります。日本では、これらは薬機法上の「再生医療等製品」として、一般的な医薬品とは別の区分で審査・承認・安全対策が行われます。製造工程、品質管理、投与施設、長期の有効性・安全性の確認に特別な管理が必要となるためです。
再生医療等製品には、患者自身の細胞を利用する自家細胞加工製品、他者由来の細胞を利用する同種細胞加工製品、ウイルスベクターなどを使って遺伝子を導入する遺伝子治療用製品があります。代表例として、血液がんに用いられるCAR-T細胞製品のチサゲンレクルユーセル、脊髄性筋萎縮症に用いる遺伝子治療用製品オナセムノゲン アベパルボベクがあります。


主な種類と用途


種類 主な用途 一般的名称や製品例
自家T細胞加工製品(CAR-T) 再発・難治性の特定B細胞性血液がんなど チサゲンレクルユーセル(キムリア点滴静注)
遺伝子治療用製品 遺伝子異常が関係する希少疾患で必要な遺伝子機能を補う オナセムノゲン アベパルボベク(ゾルゲンスマ点滴静注)
造血幹細胞関連製品 造血機能の回復、血液疾患治療など 疾患・治療法により異なる
組織修復用細胞加工製品 皮膚、角膜、軟骨などの再生・修復を目的とする 製品ごとに対象疾患・使用施設が異なる
遺伝子改変細胞製品 がん免疫療法などで特定の標的を認識する細胞を用いる 国内承認されたCAR-T細胞製品など。製品ごとに対象疾患・適応を確認する


種類ごとの作用・役割の違い

チサゲンレクルユーセルは、患者本人から採取したT細胞に、CD19という標的を認識するキメラ抗原受容体(CAR)の遺伝子を導入し、培養して作る自家T細胞加工製品です。CD19を持つB細胞性のがん細胞を見つけて攻撃することを目指します。国立医薬品食品衛生研究所の再生・細胞医療製品情報では、再発または難治性のCD19陽性B細胞性急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫などが対象として示されています。
CAR-T細胞療法では、細胞を採取してから製造し、投与前に治療環境を整えるための前処置を行い、その後に細胞製品を点滴投与します。投与後には、サイトカイン放出症候群、神経系の有害事象、感染症、血球減少などが起こることがあるため、経験のある医療機関で厳重な観察が必要です。サイトカインとは、免疫細胞同士が情報を伝えるための物質で、急激に増えると発熱、低血圧、呼吸状態の悪化などにつながることがあります。
オナセムノゲン アベパルボベクは、アデノ随伴ウイルス9型をベクターとして、SMNたんぱく質を作る遺伝子を体内へ届ける遺伝子治療用製品です。脊髄性筋萎縮症は、運動神経細胞が障害され、筋力低下や呼吸・嚥下の問題を生じる遺伝性疾患です。国立医薬品食品衛生研究所の資料では、ゾルゲンスマ点滴静注は2歳未満の脊髄性筋萎縮症患者を対象とする遺伝子治療用製品として掲載されています。対象となる年齢や病型、全身状態などを専門施設が評価します。
細胞加工製品と遺伝子治療用製品は、いずれも「一度使えば必ず治る」治療ではありません。対象疾患が限られ、製品ごとに適応、投与前の検査、長期追跡、安全管理が定められています。細胞そのものを投与する治療、遺伝子を運ぶベクターを投与する治療、体内で細胞を改変する治療などでは、体内での働き方とリスクが異なります。


通常承認と条件・期限付承認

再生医療等製品には、通常の承認のほか、条件及び期限付承認という制度があります。条件及び期限付承認は、患者数が少ないなどの理由で承認時までに十分な検証が難しい場合に、一定の有効性・安全性が推定される製品について、製造販売後に有効性・安全性の検証を行うことを条件として、期限を付して承認する仕組みです。
通常承認は、審査に必要な品質・有効性・安全性のデータに基づく承認です。条件及び期限付承認は「通常承認より効果が確立している」という意味ではなく、追加の検証を前提とする制度です。また、再生医療等製品であればすべて条件及び期限付承認というわけでもありません。個々の製品の承認区分、適応、承認条件はPMDAの製品情報や審査資料で確認する必要があります。


剤形と使われる場面

チサゲンレクルユーセルは点滴静注で投与される細胞加工製品ですが、一般的な注射薬とは異なり、患者ごとに製造される個別性の高い製品です。オナセムノゲン アベパルボベクも点滴静注用の遺伝子治療用製品です。いずれも高度な設備、細胞・遺伝子治療の経験、緊急時の対応体制を備えた施設で実施されます。保存、輸送、解凍、患者照合、投与後の観察には厳格な手順があります。


共通の注意点

  • 再生医療等製品は、適応が確認された患者に、認定された専門施設・治療チームのもとで使用されます。
  • 治療前には、期待できる効果だけでなく、重い副作用、治療当日の流れ、入院の可能性、長期フォローについて十分に説明を受けます。
  • 発熱、呼吸苦、意識・言語の変化、強い脱力、出血傾向などは、投与後の重要な症状となり得るため、緊急連絡先を確認します。
  • 遺伝子治療後は、長期にわたり安全性や効果を確認する追跡調査が必要になる場合があります。
  • 海外の未承認細胞治療や自由診療の広告だけを根拠に、標準治療を中断しないことが重要です。


参考資料・添付文書


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