

「耳 痛い 外側 ズキズキ」という訴えを診療につなげるには、まず患者が示す「外側」の位置を具体化します。外耳には、目に見える耳介と、耳の入り口から鼓膜まで続く外耳道が含まれます。外耳道の炎症でも耳介を動かすと痛みが誘発されるため、「耳たぶの周りが痛い」「耳を触ると痛い」という表現だけでは、耳介そのものの病変かどうかを判断できません。
参考)外耳炎(急性) - 16. 耳鼻咽喉疾患 - MSDマニュア…
急性外耳道炎では、外耳道皮膚の感染により痛みや耳漏が生じ、腫脹や分泌物によって外耳道が閉塞すると難聴を伴うことがあります。診察では、耳介の牽引や、耳の穴の前にある小さな隆起である耳珠の圧迫で痛みが強まる所見が手がかりになります。ただし、この所見は外耳道炎を示唆するものであり、単独で確定診断するためのものではありません。
一方、耳介自体が赤く腫れ、熱感や疼痛を伴う場合には、耳介軟骨膜炎などを考えます。軟骨膜炎の背景には、外傷、熱傷、虫刺され、軟骨を貫くピアス、表在感染の波及などがあります。また、感染以外の全身性炎症性疾患が関与する場合もあるため、耳介の発赤を一律に細菌感染と扱わない視点が必要です。
参考)耳の軟骨膜炎 - 16. 耳鼻咽喉疾患 - MSDマニュアル…
「ズキズキ」という痛みの表現は問診上重要ですが、それだけで原因菌や感染の深さは決められません。痛みの部位、発症からの経過、耳漏、皮膚所見、聴力変化を合わせて評価し、最終的には耳介と外耳道、鼓膜を観察して病変の位置を確認します。耳漏が多い場合は、鼓膜穿孔を伴う中耳炎との区別が難しいことにも注意が必要です。
外耳の痛みを評価するときは、びまん性の外耳道炎、限局性の外耳道膿瘍、外耳道真菌症、耳介軟骨膜炎を分けて考えると、診察所見と治療方針が整理しやすくなります。特に外耳道全体の炎症と、入り口付近の限局した膿瘍では、必要な処置が異なります。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 急性びまん性外耳道炎 | 外耳道の発赤・腫脹、耳漏、耳介牽引痛や耳珠圧痛が手がかりになります。 | 耳掃除による外傷や水の侵入などを確認します。 |
| 限局性外耳道炎・外耳道膿瘍 | 局所的な赤い腫れと強い痛みがあり、血液を混じえた膿が出ることがあります。 | 膿瘍の状態によって切開排膿や全身抗菌薬を検討します。 |
| 外耳道真菌症 | 疼痛よりもかゆみが目立ち、閉塞感や特徴的な付着物を認めることがあります。 | 外観や培養で診断し、細菌性外耳道炎と区別します。 |
| 耳介軟骨膜炎 | 耳介の発赤、腫脹、疼痛が中心で、膿瘍を形成する場合があります。 | 軟骨ピアス、外傷、表在感染、炎症性疾患を確認します。 |
| 壊死性外耳道炎・悪性外耳道炎 | 持続する重度の深い耳痛、夜間増悪、膿性耳漏、肉芽などが問題になります。 | 高齢者、糖尿病患者、免疫低下例では特に警戒します。 |
| 鼓膜穿孔を伴う中耳炎 | 耳漏が多いと外耳道炎との鑑別が難しく、鼓膜の評価が重要です。 | 耳介牽引痛は外耳道炎を示唆しますが、それだけで判断しません。 |
問診では、綿棒や耳かきの使用、水泳や入浴後の水の残留、耳栓・補聴器の装用状況を確認します。綿棒による微小な擦過傷は細菌の侵入口となり、耳垢や落屑を奥へ押し込むこともあります。湿疹、乾癬、アレルギー、整髪料や染毛剤などの刺激も素因になるため、「清潔にしているつもりで耳掃除を繰り返していた」という経過を見逃さないことが大切です。
耳鏡検査では外耳道の腫れ、分泌物、限局性の隆起、真菌を疑う付着物を観察し、可能な範囲で鼓膜の状態を確認します。外耳道炎では検査そのものが痛みを伴うことがあり、強い腫脹で観察が難しくなる場合もあります。無理な挿入や盲目的な清掃を避け、十分な照明と直視下での愛護的な評価・処置につなげます。
外耳の痛みを軽症の局所炎症として扱う前に、重症感染症や周囲への炎症波及を疑う所見を確認します。耳周囲の腫脹、高熱、全身状態の悪化、新たな難聴、めまい、耳漏などは、早急な診療を検討するサインです。糖尿病や免疫機能の低下がある場合も、受診の判断を先延ばしにしないことが重要です。
参考)NHS
参考)悪性外耳道炎 - 16. 耳鼻咽喉疾患 - MSDマニュアル…
壊死性外耳道炎は、一般的な外耳道炎とは区別して扱うべき重症感染症です。「悪性外耳道炎」とも呼ばれますが、この名称はがんを意味するものではありません。感染が外耳道周囲の骨へ及び、重症例では頭蓋底に沿って広がって顔面などの神経麻痺を生じることがあります。夜間痛を伴う強い耳痛と持続する耳漏を、通常の外耳道炎の延長として漫然と扱わないことが重要です。
参考)悪性外耳炎 - 19. 耳、鼻、のどの病気 - MSDマニュ…
疑わしい場合は、耳鼻咽喉科での診察に加え、画像検査や培養検査などが必要になります。CTによる骨病変の評価や、病原体を確認する検査が行われ、病変によっては腫瘍との鑑別のために生検も検討されます。患者への説明では、単に「痛みが強いから検査する」のではなく、「感染が深い組織へ広がっていないかを確認する」と目的を伝えると理解につながります。
急性びまん性外耳道炎では、医療者による慎重な分泌物・落屑の除去と、抗菌薬や抗炎症薬などの局所治療が基本になります。治療を選ぶ前に、外耳道の閉塞の程度、炎症が外耳道を越えて広がっていないか、鼓膜に穿孔がないかを確認します。外耳道炎の患者すべてに、同じ内服抗菌薬を一律に使用するという考え方ではありません。
外耳道の腫れが強いと、処方した点耳薬が病変部に届かない場合があります。このような場合は、医療者が耳用のガーゼタンポンなどを用いて薬剤を届きやすくする処置を検討します。点耳薬の処方後に改善が乏しいときは、薬剤の選択だけでなく、閉塞の有無や投与方法も評価する必要があります。
全身抗菌薬は、重症例や外耳道を越えた蜂窩織炎がある場合などに検討されます。また、限局した外耳道膿瘍では、びまん性外耳道炎と異なり、局所の抗菌薬だけでは有効でないことがあり、膿瘍の状態に応じた切開排膿や経口抗菌薬が必要です。外耳道真菌症では清拭と抗真菌治療が中心となるため、痛みや耳漏が続くからといって細菌感染と決めつけないことが大切です。
耳介軟骨膜炎では、迅速な治療によって軟骨への血流障害や変形を防ぐ視点が重要です。膿瘍が形成されている場合は切開排膿を行い、軟骨膜と軟骨を再び密着させる処置が必要になることがあります。抗菌薬は感染の状況や培養・感受性結果を踏まえて選択し、感染性の原因が明確でない例では全身性炎症性疾患も評価します。
なお、海外の医学資料に記載された薬剤や治療法を、そのまま国内の個別処方に置き換えるべきではありません。本記事では治療の考え方を示しており、薬剤の具体的な選択や投与方法は、患者背景、鼓膜の状態、病原体、国内の製剤情報などを確認したうえで判断する必要があります。特に鼓膜穿孔がある場合には、使用する溶液によって強い痛みや内耳障害の危険があるため、自己判断の点耳を避ける説明が欠かせません。
患者への初期指導では、痛む耳を繰り返し触ったり、綿棒や耳かきで奥を掃除したりしないよう説明します。耳漏があっても、取り除こうとして外耳道内に物を入れると、皮膚を傷つけるおそれがあります。外に流れ出た分泌物を外側からやさしく拭くことと、耳の中を自分で清掃することは区別して伝えます。
炎症がある間は、水泳を避け、入浴や洗髪時に水やシャンプーが耳に入らないようにします。「乾燥を保つ」という説明が、耳の奥までティッシュや綿棒を入れて水分を取る行為につながらないよう、具体的に禁止事項を共有します。治療中の水の侵入を避けることと、外耳道を機械的に刺激しないことをセットで案内するのが実用的です。
耳栓や補聴器の使用状況も確認します。器具が不衛生であったり、耳に合っていなかったりすると、外耳道炎の素因になることがあります。繰り返す症例では、単に薬を再処方するだけでなく、器具の清潔保持や適合状態、耳の湿疹・アレルギーなど、背景にある要因への対応を検討します。
自己流の消毒液や、以前処方された残りの点耳薬を使わないよう指導することも重要です。耳痛の原因には細菌感染、真菌感染、皮膚炎、膿瘍などがあり、必要な治療は同じではありません。鼓膜の状態も本人には確認できないため、「耳に使う薬だから安全」とは判断せず、診察で原因と使用可否を確認する必要があります。
痛みへの対処としては、アセトアミノフェンなどの鎮痛薬が選択肢になりますが、鎮痛だけで原因治療が完了するわけではありません。痛みが軽くなっても耳漏や腫れが続いていないかを確認し、処方された点耳薬は指示された方法で使用します。点耳薬は使い方が適切でないと十分に作用しない可能性があるため、患者が投与方法を理解しているかの確認も必要です。
受診後の説明では、「悪くなったら来てください」だけで終えず、新しい難聴、めまい、耳周囲の腫れ、高熱、全身状態の悪化があれば早めに再受診するよう具体的に伝えます。耳痛が3日たっても改善しない場合や、感染を繰り返す場合も再評価の対象です。ただし、糖尿病や免疫低下がある人、強い深部痛や夜間痛が続く人に、3日間待つことを一律に勧めるものではありません。外耳の痛みでは、局所所見と患者背景に応じて受診の緊急度を調整することが重要です。