

肺線維症は、肺の組織が傷ついた後に硬く厚くなる「線維化」が進み、酸素を取り込みにくくなる病態です。代表的な病気に特発性肺線維症(IPF)があり、労作時の息切れ、乾いた咳、徐々に進む呼吸機能の低下などがみられます。原因不明の間質性肺炎だけでなく、膠原病、薬剤、粉じん、感染症などを背景に間質性肺疾患が起こる場合もあります。
肺線維症の薬は、咳をすぐに止める一般的な鎮咳薬とは役割が異なります。抗線維化薬は、線維化に関係する仕組みに作用し、肺機能低下の進行を遅らせることを目的とします。病気を元どおりに治す薬ではなく、画像検査、呼吸機能、酸素飽和度、症状、生活への影響を継続的に評価しながら使われます。
| 種類 | 主な用途 | 一般名や製品例 |
|---|---|---|
| 抗線維化薬 | 特発性肺線維症、全身性強皮症に伴う間質性肺疾患など。適応は製剤で異なる | ニンテダニブ、オフェブ |
| 抗線維化薬 | 特発性肺線維症 | ピルフェニドン、ピレスパ |
| 免疫に作用する薬 | 膠原病関連間質性肺疾患など、原因・病型に応じて検討 | 副腎皮質ステロイド、免疫抑制薬など |
| 在宅酸素療法 | 低酸素血症を伴う呼吸不全で酸素を補う | 酸素濃縮器、携帯用酸素など |

ニンテダニブは、線維芽細胞の増殖や移動に関係する複数の受容体チロシンキナーゼを阻害する薬です。線維芽細胞は、傷ついた組織の修復に関わる細胞ですが、過剰な働きが続くと肺の線維化に関与します。ニンテダニブは、特発性肺線維症、全身性強皮症に伴う間質性肺疾患などを適応とする製剤があります。
ニンテダニブは肺の線維化を完全に止めたり、失われた肺機能を回復させたりする薬ではありません。肺機能低下を遅らせることを目的として、専門医が病状や副作用を評価しながら使用します。下痢、吐き気、食欲低下、肝機能検査値の異常などが起こることがあり、定期的な血液検査が重要です。
ピルフェニドンは、線維化に関係するサイトカインや酸化ストレスなどに働きかけると考えられている抗線維化薬です。日本では特発性肺線維症に用いられます。ニンテダニブと同様に、病気の進行抑制を目的とする薬であり、息切れがすぐになくなる薬ではありません。
胃腸症状、食欲低下、肝機能障害、発疹、光線過敏症などに注意が必要です。光線過敏症は日光に当たった皮膚に強い赤みや発疹が出る反応で、屋外活動時の紫外線対策について医療者から説明を受けます。服用継続が難しい副作用がある場合は、自己判断で中断せず相談します。
肺高血圧症は、肺の血管の圧が高くなり、心臓の右側に負担がかかる病気です。息切れ、倦怠感、むくみ、失神などがみられることがあります。肺線維症に伴う肺高血圧症を含め、治療薬の選択には原因分類と専門的な評価が必要です。
肺動脈性肺高血圧症では、エンドセリン受容体拮抗薬、PDE5阻害薬、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬、プロスタサイクリン関連薬などが使われますが、これらは肺線維症すべてに一律に使う薬ではありません。肺高血圧症については循環器領域の治療分類もあわせて確認し、呼吸器・循環器の専門医のもとで治療します。