


「ツムラ48」は、医療現場で用いられる「ツムラ十味敗毒湯エキス顆粒(医療用)」を指す通称である。一般名は十味敗毒湯エキスで、薬効分類は漢方製剤である。番号が「48」ではなく「6」である他のツムラ漢方製剤と取り違えないよう、電子カルテの採用品目、薬袋、薬歴および患者の持参薬を照合することが重要である。
十味敗毒湯は、桔梗、柴胡、川芎、茯苓、甘草、荊芥、防風、独活、樸樕、生姜の10種類の生薬から構成される漢方製剤である。添付文書上の効能又は効果は、体力中等度なものの皮膚疾患で、発赤があり、ときに化膿するものに対する「化膿性皮膚疾患の初期・急性皮膚疾患の初期、じんましん、急性湿疹、水虫」である。処方時には、病名だけで一律に適否を決めるのではなく、発赤、腫脹、膿疱、掻痒、病期、皮疹の分布、患者の体質や併存疾患を踏まえて評価する。
なお、尋常性痤瘡は添付文書上の効能又は効果として明記されていない。一方、尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023では、炎症性皮疹に対する漢方薬の一つとして十味敗毒湯に言及がある。このため、痤瘡診療での使用を検討する場合は、添付文書の適応とガイドライン上の臨床的位置付けを混同せず、患者への説明内容と診療録への評価を明確にする必要がある。PMDA:ツムラ十味敗毒湯エキス顆粒(医療用)
参考)https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdSearch/02/5200070D1105?user=1
ツムラ48の通常の成人用法・用量は、1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与する。年齢、体重、症状により適宜増減する。顆粒剤の服薬継続には味やにおい、服用回数、食前・食間というタイミングが障壁になることがあるため、処方意図を説明するだけでなく、実際に継続可能な服薬方法を確認することが重要である。
漢方製剤は「自然由来で安全」という誤解を招きやすいが、医療用医薬品として副作用、相互作用、重複投与の管理が必要である。特にツムラ48には甘草が含まれるため、血清カリウム値および血圧値に留意する。高齢者、腎機能低下例、心不全や高血圧のある患者、浮腫を有する患者、利尿薬や副腎皮質ホルモン薬を使用している患者では、リスク評価をより慎重に行う。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 製剤名 | ツムラ十味敗毒湯エキス顆粒(医療用) | 通称として「ツムラ48」と呼ばれる |
| 通常成人量 | 1日7.5gを2~3回に分割 | 食前または食間に経口投与する |
| 添付文書上の主な適応 | 化膿性皮膚疾患の初期、急性皮膚疾患の初期など | 発赤があり、ときに化膿する皮膚疾患が対象 |
| 特に確認する成分 | 甘草 | 偽アルドステロン症、低カリウム血症に注意する |
| 痤瘡での位置付け | 炎症性皮疹への選択肢の一つ | 標準治療の代替として一律に用いる薬剤ではない |
服薬指導では、「症状が改善したから自己判断で増減する」「市販の甘草含有漢方薬やグリチルリチン酸含有製剤を追加する」といった行動がないかも確認する。患者がドラッグストアで購入した漢方薬、かぜ薬、胃腸薬、健康食品を使用している場合は、製品名だけでは成分の重複を判定できないことがあるため、現物、写真、購入履歴などを用いて確認する姿勢が求められる。
尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023では、炎症性皮疹に対して、他の治療が無効である、または他の治療を実施できない状況における選択肢の一つとして、荊芥連翹湯、清上防風湯、十味敗毒湯を推奨している。十味敗毒湯の推奨度はC1であり、「選択肢の一つとして推奨する」という位置付けである。これは、第一選択薬として強く推奨される治療と同列ではないことを意味する。
痤瘡におけるツムラ48の検討では、皮疹のタイプを区別することが必須となる。ガイドライン上、十味敗毒湯は炎症性皮疹、すなわち紅色丘疹や膿疱を主な対象として扱われる。一方、面皰に対しては十味敗毒湯の推奨度はC2であり、行ってもよいが推奨はしないとされる。白色面皰や黒色面皰が主体で、炎症が乏しい患者に対して、ツムラ48のみで病態全体を管理するという期待は適切ではない。
炎症性皮疹に対する標準的治療には、過酸化ベンゾイル、アダパレン、アダパレン・過酸化ベンゾイル配合剤、外用抗菌薬、必要時の内服抗菌薬などがある。ツムラ48を検討する際も、これらの標準治療が未導入なのか、刺激症状・妊娠可能性・併存疾患・アドヒアランスの問題などで実施困難なのか、治療反応が不十分なのかを整理する。漢方薬を「標準治療に失敗した場合の最後の手段」と単純化するのではなく、病態、禁忌・注意事項、患者の希望、服薬継続性を統合して治療設計を行うことが望ましい。
痤瘡は慢性炎症性疾患であり、炎症が軽快した後も面皰や微小面皰への維持療法が重要となる。ガイドラインでは、炎症軽快後の寛解維持にアダパレン、過酸化ベンゾイル、アダパレン・過酸化ベンゾイル配合剤が強く推奨されている。ツムラ48の開始・継続・中止を考える際には、急性炎症期の対応と維持期の対応を分けて説明し、長期的な瘢痕予防と再燃管理につなげる。日本皮膚科学会:尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023
参考)https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/zasou2023.pdf
ツムラ48で臨床上とくに重要なのは、甘草に関連する偽アルドステロン症および低カリウム血症である。偽アルドステロン症では、血圧上昇、浮腫、体重増加、尿量減少、低カリウム血症などが問題となる。低カリウム血症が進行すると、脱力感、四肢のけいれんや麻痺、倦怠感などを伴うミオパチーにつながるおそれがある。
問診では、浮腫、筋力低下、こむら返り、動悸、血圧上昇の有無を確認する。症状だけに依存せず、リスクの高い患者や長期投与例では、血圧、体重変化、血清カリウム値を含む検査データの推移を評価する。異常を認めた場合は、ツムラ48の中止を含めた適切な処置を検討し、必要に応じて原因薬の見直しと電解質補正を行う。
併用薬としては、甘草含有製剤、グリチルリチン酸およびその塩類を含有する製剤との重複に注意する。代表例には芍薬甘草湯、補中益気湯、抑肝散などの甘草含有漢方製剤が含まれるが、個別の漢方製剤で甘草の含有有無・含有量は異なるため、薬剤名の印象だけで判断しない。また、利尿薬や副腎皮質ホルモン薬の併用では低カリウム血症が起こりやすくなる可能性があるため、処方意図と検査計画を確認する。
漢方製剤の安全性管理では、処方元が複数にまたがる場面が課題になる。皮膚科、内科、婦人科、整形外科などから別々に漢方薬が処方され、市販薬やサプリメントも併用されると、重複成分が見落とされやすい。薬局ではお薬手帳だけでなく、他院受診、オンライン診療、市販薬、健康食品の使用状況まで確認し、疑わしい場合は処方医・薬剤師間で情報共有する。
ツムラ48を処方または服薬指導する際には、「皮膚症状に使う漢方薬」という説明だけで終わらせず、治療目標と評価時期を具体化する。たとえば炎症性皮疹の患者では、開始前に丘疹・膿疱の数、紅斑、疼痛、掻痒、皮脂量、既存の瘢痕、日常生活への影響を記録する。診察時には同一条件で写真を撮影する、同一部位の皮疹数を追跡するなど、主観的な印象に偏らない評価方法を取り入れるとよい。
患者には、ツムラ48が即効性だけを目的とする薬ではなく、処方意図に沿って一定期間の経過を観察する薬剤であることを説明する。一方で、症状が悪化する、膿瘍や痛みを伴う結節が出現する、広範囲に皮疹が拡大する、浮腫や筋力低下など副作用を疑う症状がある場合には、次回予約を待たずに連絡・受診するよう伝える。自己判断での増量、他の漢方薬や市販薬の追加も避けるように指導する。
医療従事者にとっての要点は、ツムラ48を「炎症性の皮膚症状に用いる十味敗毒湯の医療用製剤」と正確に理解したうえで、痤瘡では炎症性皮疹に対する補助的な選択肢として位置付けることである。添付文書上の適応、痤瘡ガイドラインの推奨度、標準治療との役割分担、甘草由来の安全性リスクを一つの診療プロセスに組み込み、患者ごとに適正使用を判断することが重要である。PMDAの最新添付文書は改訂される可能性があるため、処方・監査・服薬指導の時点で必ず最新版を確認する。