

マードレトローチは、京都薬品工業が製造販売する口腔咽喉薬であり、一般用医薬品では第2類医薬品に分類されます。トローチとして口中でゆっくり溶解させ、口腔・咽頭の局所に有効成分を作用させることを目的とした製剤です。口腔乾燥、疼痛、発熱など全身症状を直接改善する薬剤ではなく、局所症状に対するセルフメディケーション用の対症療法薬として位置付ける必要があります。
参考)一般用医薬品 : マードレトローチ
効能・効果は、口腔内の殺菌・消毒、口臭の除去、ならびにのどの炎症による声がれ、のどのあれ、のどの不快感、のどの痛み、のどのはれです。医療従事者は、「のどが痛い」という主訴だけから安易に選択するのではなく、口腔内・咽頭の局所炎症に由来する軽度の症状か、感染症、アレルギー、逆流、腫瘍性病変、深頸部感染症などの鑑別が必要な状態かを見極める視点を持つことが重要です。
とくに、のどの痛みと発熱を伴う場合には、溶連菌感染症、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、急性扁桃炎などを含めた評価が必要となり得ます。マードレトローチは原因疾患を治療する医療用抗菌薬や抗ウイルス薬の代替ではありません。そのため、症状の程度、発症からの期間、全身状態、周囲での感染症流行、基礎疾患を確認したうえで、OTC薬の範囲を超える場合には速やかに医療機関への相談を促します。
マードレトローチの製品情報(KEGG MEDICUS)
マードレトローチには、クロルヘキシジン塩酸塩、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、キキョウ流エキスが配合されています。クロルヘキシジン塩酸塩は口腔内の殺菌・消毒を担う成分です。アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、キキョウ流エキスは、のどや口腔の炎症に伴う不快症状を和らげる目的で配合されています。
ただし、複数の成分が配合されているからといって、原因を問わず広範な咽頭症状へ使用できるわけではありません。患者・購入者には、トローチが局所で溶けることにより作用する剤形であること、症状が改善しない場合は漫然と継続しないことを説明します。また、他の口腔用薬、のどスプレー、うがい薬、総合感冒薬との併用では、殺菌・消炎成分の重複や使用回数の過多を避けるため、成分確認が必要です。
| 成分 | 基準・内容 | 服薬指導上の着眼点 |
|---|---|---|
| クロルヘキシジン塩酸塩 | 口腔内の殺菌・消毒を目的とする成分 | 口腔用殺菌薬やうがい薬との重複使用を確認する |
| アズレンスルホン酸ナトリウム | のど・口腔の炎症に伴う症状への配合成分 | 局所炎症の対症療法であり、原因疾患の治療薬ではない |
| グリチルリチン酸二カリウム | 抗炎症作用を期待して配合される成分 | 多成分配合製剤との併用時は成分重複を確認する |
| キキョウ流エキス | 生薬由来の抗炎症作用を期待して配合される成分 | 生薬成分を含むことを踏まえ、既往のアレルギー歴を聴取する |
成分ごとの作用説明は、過度な効果の保証につながらない表現を避けることが大切です。「炎症を完全に治す」「感染を予防できる」と断定するのではなく、承認された効能・効果の範囲で、口腔内の殺菌・消毒と、のどの炎症に伴う症状の緩和を目的とする製品であると説明します。
用法・用量は、15歳以上で1回1錠、1日4~6回です。口中に含み、かまずにゆっくり溶かして使用します。15歳未満は使用しません。トローチは、口中で時間をかけて溶解させることに意味がある剤形であり、短時間でかみ砕く、丸のみする、水や湯で服用するなどの使い方では、期待する局所作用が得られにくくなる可能性があります。
服薬指導では、「口の中で飴のようにゆっくり溶かしてください。ただし食品ではないため、決められた回数を超えて使用しないでください」と具体的に伝えると理解を得やすくなります。嚥下機能が低下している人、高齢者、トローチを口中で保持することが難しい人では、のどにつかえる危険性も踏まえ、剤形適性を個別に評価します。添付文書でも、のどにつかえないよう注意し、かみ砕いたり飲み込んだりしないことが示されています。
PTPシートの誤飲は、食道粘膜損傷など重大な事故につながるおそれがあります。とくに高齢者、視力低下がある人、認知機能に課題がある人、介助者が管理するケースでは、薬を渡す時点で錠剤をPTPから取り出すか、本人が安全に取り出せる状況かを確認することが実務上重要です。
マードレトローチの適正使用では、購入希望者の「のどの症状」がセルフケアの対象範囲内かを確認することが重要です。短期間の軽度な咽頭違和感、軽い声がれ、口腔内の不快感などであれば、用法・用量を守った使用を案内しやすい一方、症状の背景によっては受診勧奨を優先すべき場合があります。
受診勧奨を検討する例として、高熱が続く、強い嚥下痛がある、唾液も飲み込みにくい、呼吸が苦しい、喘鳴がある、頸部腫脹がある、口が開けにくい、著しい倦怠感を伴う、血痰や口腔内出血がある、症状が長引く、繰り返す嗄声があるといった状況が挙げられます。また、口臭が主訴の場合も、単なる一時的な口腔内不潔だけでなく、歯周病、齲蝕、舌苔、唾液分泌低下、消化器症状、耳鼻咽喉科領域の病変などの可能性を考え、経過や随伴症状を確認します。
質問例としては、「いつから症状がありますか」「発熱や咳、鼻水はありますか」「飲み込めないほどの痛みはありますか」「息苦しさはありますか」「他ののど薬やうがい薬を使っていますか」「過去に薬や化粧品でアレルギー症状が出たことはありますか」などが実用的です。これらの情報により、セルフメディケーションの継続可否、併用の整理、医師・歯科医師の受診勧奨の必要性を判断しやすくなります。
使用中に発疹・発赤、かゆみ、吐き気など、添付文書で相談対象とされるような症状が現れた場合には、使用を中止し、製品の説明文書を持って医師、薬剤師または登録販売者へ相談するよう案内します。薬剤アレルギーの既往がある人、口腔内や咽頭に明らかな異常がある人、医療機関で治療中の人では、販売前の情報収集を丁寧に行うことが望まれます。
保管は直射日光を避け、湿気の少ない涼しい場所で行い、小児の手の届かないところに置きます。別容器への移し替えは誤用や品質変化の原因となるため避け、PTPシートを切り離す際には未使用部分のアルミ箔に傷を付けないよう注意します。開封後は品質保持の観点からなるべく早く使用し、外箱に開封年月日を記録しておくことも推奨されています。