


コランチル配合顆粒は、ジサイクロミン塩酸塩、乾燥水酸化アルミニウムゲル、酸化マグネシウムを含む胃炎・消化性潰瘍用剤です。医療用製剤の効能・効果は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎における自覚症状及び他覚所見の改善とされています。単一成分の制酸薬ではなく、胃の攣縮を緩和する成分と、胃酸を中和する成分を組み合わせている点が特徴です。
参考)https://www.data-index.co.jp/drugdata/pdf/2/672173_2329107D1096_3_02.pdf
ジサイクロミン塩酸塩には、消化管の副交感神経末梢を遮断して平滑筋を弛緩させるアトロピン様作用と、平滑筋に直接働いて弛緩させるパパベリン様作用があります。電子添文では、この二重の鎮痙作用に加え、塩酸分泌の抑制も説明されています。胃のけいれん性の痛みに対する作用を理解する一方、抗コリン作用が眼、泌尿器、循環器などにも影響することを、安全性評価と結び付けて把握する必要があります。
制酸成分のうち、酸化マグネシウムは速やかに制酸反応を示し、乾燥水酸化アルミニウムゲルは制酸作用の持続時間が長いとされています。制酸薬の作用には、胃酸の直接的な中和だけでなく、胃内のpH変化に基づくペプシン活性の抑制や胃粘膜被覆作用も含まれます。したがって、コランチルを説明するときは「胃酸を抑える薬」と一括りにせず、鎮痙と制酸を併せ持つ配合剤として整理すると、効果と副作用の関係が明確になります。
なお、医療用のコランチル配合顆粒については、共和薬品工業から2024年4月付で販売中止の案内が公表されています。現在の記事では、従来どおり新規処方できる製品であるかのような記載を避ける必要があります。過去の処方歴を確認する場面では、薬剤名だけでなく、使用時期や実際の服用状況、現在の処方内容まで照合することが重要です。
参考)https://www.amel-di.com/medical/di/download/news?nid=69053
共和薬品工業「コランチル配合顆粒 販売中止のご案内」
医療用コランチル配合顆粒の通常成人用量は、1回1~2gを1日3~4回経口投与し、年齢や症状により適宜増減するという設定です。電子添文の適用上の注意では、症状が起こりやすい時間に合わせて食後又は食間に、必要ならさらに就寝前にも投与するとされています。「胃薬だから必ず食後」と固定せず、処方された服用時点と患者の症状が現れる時間を照合します。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| ジサイクロミン塩酸塩 | 製剤1g中に5mg | 鎮痙作用を担う成分 |
| 乾燥水酸化アルミニウムゲル | 製剤1g中に400mg | 持続性の制酸作用を担う成分 |
| 酸化マグネシウム | 製剤1g中に200mg | 速やかな制酸作用を担う成分 |
| 医療用製剤の適応 | 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎の自覚症状及び他覚所見の改善 | 承認された疾患と改善対象を区別して把握する |
| 通常成人用量 | 1回1~2g、1日3~4回 | 年齢・症状により適宜増減 |
| 服用タイミング | 症状に合わせて食後又は食間、必要なら就寝前 | 実際の処方指示を確認する |
表の成分量、適応、用法・用量は、医療用コランチル配合顆粒の2023年4月改訂電子添文に基づきます。配合剤のため、投与量を増やすと鎮痙成分だけでなく、アルミニウムとマグネシウムを含む制酸成分の投与量も同時に増加します。症状に応じた調整では、単一成分だけを増減できないという配合剤の特性も踏まえる必要があります。
電子添文には、再評価結果における有効率として、胃潰瘍92.0%、十二指腸潰瘍90.7%、胃炎86.5%が掲載されています。ただし、胃潰瘍と十二指腸潰瘍では内視鏡所見、胃炎では自覚症状の消失・改善を主な指標としており、評価対象や指標が異なります。この数字を一律の「胃痛改善率」として紹介したり、他剤との直接比較による優越性の根拠として扱ったりしないことが大切です。
コランチルの安全性を評価する際は、ジサイクロミンの抗コリン作用に関係する禁忌と、アルミニウム含有製剤としての禁忌を分けて確認します。電子添文に記載された禁忌は次の五つです。とくに透析患者は投与禁忌であり、「胃薬だから腎機能にかかわらず使える」という理解は適切ではありません。
緑内障では病型の区別が重要です。閉塞隅角緑内障は禁忌ですが、開放隅角緑内障は「特定の背景を有する患者に関する注意」に位置付けられ、眼圧上昇と症状悪化に注意することとされています。また、前立腺肥大も、排尿障害を伴う場合は禁忌であり、前立腺肥大の診断がある場合には排尿障害を起こすおそれに注意します。病名だけで判断せず、病型や症状の有無を確認する必要があります。
透析を受けていない腎障害患者についても、長期投与によるアルミニウムの影響は無視できません。電子添文では、定期的に血中アルミニウム、リン、カルシウム、アルカリフォスファターゼなどを測定するよう記載されています。酸化マグネシウムは高マグネシウム血症を悪化させるおそれもあるため、腎障害と電解質異常の有無は別々に確認します。
そのほか、甲状腺機能亢進症では心悸亢進・頻脈の悪化、潰瘍性大腸炎では腸管運動抑制に伴う中毒性巨大結腸、下痢のある患者では酸化マグネシウムによる下痢の助長に注意が必要です。高齢者では口渇、排尿障害、便秘、眼圧亢進などが現れやすいとされており、服用前から存在する症状と服用後の変化を比較して評価します。
コランチルの相互作用は、抗コリン作用の増強と、制酸成分による併用薬の吸収・排泄への影響が中心です。電子添文では、アルミニウムイオンやマグネシウムイオンの吸着作用、消化管内・体液のpH上昇を踏まえ、併用薬との投与を1~2時間あけるという一般的な注意が記載されています。ただし、個別の薬剤では別の具体的な間隔が指定されているため、すべてを「2時間あければよい」と処理してはいけません。
テトラサイクリン系抗生物質では、テトラサイクリンやドキシサイクリンなどの投与から3~4時間後に本剤を投与することとされています。キノロン系抗菌剤では、レボフロキサシンやロメフロキサシンなどの投与から2時間後に本剤を投与するという記載です。いずれもアルミニウムやマグネシウムと不溶性のキレートを形成し、抗菌薬の吸収が阻害されて効果が減弱するおそれがあります。服用間隔だけでなく、どちらを先に服用するかまで明示することが重要です。
レボチロキシンナトリウムなどの甲状腺ホルモン剤では、本剤への吸着による吸収阻害と効果減弱が問題になります。ペニシラミンも吸収率低下による効果減弱に注意が必要です。一方、クエン酸ナトリウムなどのクエン酸製剤は、キレート形成によってアルミニウムの吸収を促進し、血中アルミニウム濃度を上昇させることがあります。同じキレート形成でも、抗菌薬の吸収低下とは結果が異なるため、機序を混同しないことが大切です。
三環系抗うつ剤、フェノチアジン系薬剤などの抗コリン作用を有する薬剤やMAO阻害剤等との併用では、散瞳、排尿障害、心悸亢進、頻脈、便秘、口内乾燥などに注意します。この種の薬理作用の重なりは、服用時刻をずらすだけで回避できると判断せず、処方全体で評価する必要があります。また、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムとの併用によるアルカローシス、大量の牛乳やカルシウム製剤との併用によるミルク・アルカリ症候群も記載されています。
副作用の確認では、口渇や便秘だけでなく、視調節障害、眼圧亢進、眠気、めまい、心悸亢進、排尿障害などにも目を向けます。また、酸化マグネシウムを含むため、下痢や軟便が現れることもあります。「便秘を起こす薬」「下痢を起こす薬」のどちらか一方に固定せず、配合成分ごとの作用と患者の変化を対応させて評価することが重要です。
重大な副作用としては、乾燥水酸化アルミニウムゲルの長期投与によるアルミニウム脳症、アルミニウム骨症、貧血が挙げられており、いずれも頻度不明です。さらに、その他の副作用として、配合成分である酸化マグネシウムの長期大量投与時の高マグネシウム血症も記載されています。長期服用歴を確認する際には、処方期間だけでなく、実際の服用量や他のマグネシウム含有製剤との重複も確認する視点が必要です。
医療用製剤では、視調節障害や眠気を起こすことがあるため、自動車の運転など危険を伴う機械操作に注意させるとされています。妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与します。授乳婦では、ジサイクロミンのヒト母乳中への移行が報告されており、治療と母乳栄養の有益性を踏まえて授乳の継続又は中止を検討します。小児等を対象とした臨床試験は実施されていません。
名称が似た市販薬のコランチルA顆粒は、医療用コランチル配合顆粒と区別して扱います。メーカーの製品情報では、1包1g中の有効成分量は、ジサイクロミン塩酸塩5mg、乾燥水酸化アルミニウムゲル400mg、酸化マグネシウム200mgです。ただし、市販薬の用法は15才以上が1回1包、1日3回、食間に服用するもので、15才未満には服用させないとされています。医療用の用量をそのまま市販薬へ当てはめることはできません。
市販薬の効能・効果は、胃痛、腹痛、さしこみ、胃酸過多、胸やけです。使用上の注意では、透析療法を受けている人は服用しないこと、服用後は乗物又は機械類の運転操作をしないこと、長期連用しないことが明記されています。また、他の胃腸鎮痛鎮痙薬、ロートエキスを含有する他の胃腸薬、乗物酔い薬は服用中に使用しないこととされています。医療用製剤の「運転操作に注意」という記載と、市販薬の「運転操作をしない」という記載の違いも、そのまま区別して説明します。
参考)コランチルA顆粒|薬局で購入でき…
市販のコランチルA顆粒では、5~6回服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、医師、薬剤師又は登録販売者へ相談するよう定められています。服薬確認では「コランチルを使っている」という申告だけで判断せず、医療用製剤の過去の使用なのか、市販のコランチルA顆粒の使用なのかを、薬袋、お薬手帳、現物の包装などで照合します。成分量の共通性だけで同じ使用条件とみなさず、製品ごとの適応、用量、注意事項を確認することが、適切な情報提供につながります。