

典型的な痛風発作では、足の母趾の付け根に当たる第1中足趾節関節に、しばしば夜間から急速に強い痛み、発赤、腫脹が現れます。ただし、足関節、膝、手関節、肘などに発症することもあり、母趾以外の関節炎だからという理由で痛風を否定できません。過去の発作部位や発症速度は診断の手がかりになりますが、今回も以前と同じ原因であると決めつけない姿勢が必要です。
参考)Recommendations
発熱を伴う関節痛では、「何度までなら痛風として経過を見られるか」という一律の体温基準ではなく、感染の可能性と全身状態を評価します。感染性関節炎は発熱がなくても起こり得るため、平熱であることも除外根拠にはなりません。痛風の既往や尿酸値に注意が向きすぎると、緊急性の高い感染性関節炎を見落とす危険があります。
参考)https://seimc.org/wp-content/uploads/2025/05/seimc-geio-gc-2024-Artritis_Septica.pdf
診察では、発症時刻、疼痛の増悪速度、罹患関節、過去の発作と今回の違いを確認します。そのうえで、皮膚の傷や感染、直近の関節注射・手術、免疫抑制状態、菌血症を疑う背景などを把握します。感染性関節炎は、感染リスクが明らかでない患者にも起こり得ます。リスク因子の有無は事前確率を考える材料であり、単独で診断や除外を行うための条件ではありません。
検査では、血清尿酸値、炎症反応、関節液所見の役割を区別します。血清尿酸値は痛風の評価に有用ですが、高値だけで今回の関節炎を痛風と確定することはできません。また、発作中には尿酸値が低下し、正常範囲に入ることがあります。NICEは、発作中の血清尿酸値が6mg/dL未満でも痛風が強く疑われる場合、発作が落ち着いてから少なくとも2週間後に再測定するよう推奨しています。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 発熱・関節の発赤や腫脹 | 痛風と感染性関節炎のいずれでも認め得る | |
| 血清尿酸値 | 発作中は正常範囲でも痛風を否定できない | 強く疑う場合は発作消退後に再評価する。 |
| 血中白血球数・CRP | 感染を含む炎症の評価や経過観察に用いる | |
| 関節液の結晶検査 | 尿酸塩結晶の確認は痛風診断の重要な根拠になる | 結晶が検出されても細菌感染の併存は否定できない。 |
| 関節液白血球数 | 50,000/μL超は感染性関節炎を示唆する | |
| 関節液のグラム染色・培養 | 原因菌の確認と抗菌薬選択に重要 | |
| 血液培養 | 発熱例、菌血症・敗血症が疑われる場合に採取を検討する |
痛風の診断が不確実な場合は、関節穿刺と関節液の顕微鏡検査を検討します。穿刺が実施できない場合や診断がなお不明な場合には、単純X線、超音波、デュアルエナジーCTなどが補助になります。ただし、尿酸塩沈着を示す画像所見が得られても、感染性関節炎の可能性がある場面で微生物学的評価を不要にするわけではありません。
感染の可能性を評価したうえで痛風発作と判断した場合、治療の中心は急性炎症の抑制です。NICEは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、コルヒチン、短期間の経口副腎皮質ステロイドを第一選択の候補とし、併存疾患、併用薬、患者の希望に基づいて選択するよう推奨しています。発熱だけに着目した解熱ではなく、疼痛、腫脹、関節機能を含めた発作全体の改善を評価します。
薬剤選択では、腎機能、消化管障害のリスク、心血管疾患、薬物相互作用などを確認します。NSAIDsを使用する患者では、必要に応じてプロトンポンプ阻害薬の併用も検討します。NSAIDsやコルヒチンが禁忌、忍容性不良、または無効の場合には、ステロイド注射などが選択肢となります。ただし、発熱と関節炎がある患者を十分な鑑別なしに痛風と決めつけ、抗炎症治療のみで経過を見ることは避けます。
関節の冷却は、処方薬に加えて疼痛軽減を図る補助的な方法です。一方、冷却や鎮痛薬によって痛みが軽くなっても、そのこと自体は感染の除外根拠になりません。発熱の持続、関節所見の悪化、治療反応の乏しさがあれば、最初の診断を再検討する必要があります。
尿酸降下薬は、発作時の痛みや発熱を直接抑える薬ではありません。すでに服用している患者に発作が起こった場合は、原則として既存の尿酸降下薬を継続し、抗炎症薬を併用します。患者には「痛くなったから尿酸の薬をやめる」という自己判断を避けるよう説明します。ただし、副作用など別の中止理由がある場合は、処方医による個別判断が必要です。
既存治療の継続と、新規導入の時期は分けて考えます。NICEは通常、発作消退後2~4週間以上を目安に尿酸降下薬を開始する一方、発作が頻回の場合には発作中の導入も可能としています。したがって「発作中の開始は絶対禁止」と一律に記載するのではなく、適用する指針、発作頻度、抗炎症治療の併用、継続診療の見通しを踏まえて判断することが適切です。国内での処方は、各薬剤の添付文書と国内の診療方針を確認して行います。
Buckinghamshire:痛風管理と既存の尿酸降下療法の継続
発熱や関節痛が軽快しても、痛風の診療が完了したわけではありません。尿酸塩結晶の沈着という背景が残っていれば、発作の再発や痛風結節、関節障害につながり得ます。発作後の再診では、血清尿酸値を再評価し、腎機能、心血管リスク、併用薬、生活習慣を確認したうえで、長期的な尿酸降下療法の必要性と目標を患者と共有します。
NICEでは、尿酸降下療法中の血清尿酸値の目標を6mg/dL未満としています。痛風結節や慢性痛風性関節炎がある患者、6mg/dL未満でも頻回の発作が続く患者では、5mg/dL未満という低い目標を検討します。これらは長期管理の治療目標であり、「この値以上なら今回の発熱は痛風」「この値未満なら痛風ではない」と判定するための基準ではありません。
尿酸降下薬は少量から開始し、血清尿酸値や忍容性を確認しながら調整する治療が基本です。導入・増量時には発作予防の利益とリスクを説明し、必要に応じてコルヒチンなどの予防的使用を検討します。患者には、尿酸を下げる過程で発作が起こり得ること、発作時の対応薬と長期管理薬では役割が異なることをあらかじめ伝えておくと、自己中断を防ぐ支援につながります。
生活指導では、過量飲酒や肥満が痛風発作を悪化させ得ることを説明し、バランスの取れた食事と適切な体重管理を勧めます。一方、特定の食品や食事法だけで発作を確実に防げると説明する根拠は十分ではありません。食事指導を薬物療法の代わりとして扱わず、患者の実行可能性に配慮しながら継続的な尿酸管理を支えることが大切です。