

ツムラ二朮湯エキス顆粒(医療用)は、漢方製剤に分類される処方箋医薬品である。医療用製剤としての添付文書に記載された効能又は効果は五十肩であり、肩関節周囲炎を疑う患者に対して、画像所見、可動域制限、夜間痛、炎症の程度、罹病期間、生活機能などを評価した上で使用を検討する。
五十肩という診断名は日常診療で広く使われる一方、頸椎疾患による関連痛、腱板断裂、石灰沈着性腱板炎、変形性肩関節症、関節リウマチ、感染性関節炎、悪性腫瘍など、他の疾患を除外すべき症例がある。したがって、二朮湯は「肩が痛い」ことのみを根拠に一律に選択する薬剤ではない。著明な発熱、局所の強い発赤・熱感、外傷後の急な筋力低下、進行性のしびれ、全身症状、非典型的な経過があれば、先に診断の再評価を行う必要がある。
添付文書では、使用に際して患者の証、すなわち体質・症状を考慮するよう求められている。また、症状や所見の改善が認められない場合は継続投与を避け、経過を十分に観察することが重要とされる。漢方薬を「長期でも安全な補助薬」と単純化せず、治療目標、判定時期、中止・変更の基準を初回処方時から共有する姿勢が必要である。
参考)302 Found
ツムラ二朮湯エキス顆粒(医療用)電子添文
ツムラ二朮湯エキス顆粒(医療用)は、1日量7.5g中に混合生薬の乾燥エキス5.0gを含む。構成生薬は、ハンゲ、ソウジュツ、イレイセン、オウゴン、コウブシ、チンピ、ビャクジュツ、ブクリョウ、カンゾウ、ショウキョウ、テンナンショウ、ワキョウカツである。名称に含まれる「二朮」は、ソウジュツとビャクジュツの両方を配合する点に由来する。
通常、成人には1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。年齢、体重、症状により適宜増減する。実務上は、服薬アドヒアランス、食事との関係、顆粒の味やにおいに対する忍容性、嚥下機能、他の内服薬の服用回数を確認し、継続可能な投与設計にすることが欠かせない。特に高齢者では一般に生理機能が低下しているため、減量を含め慎重に投与する。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 販売名 | ツムラ二朮湯エキス顆粒(医療用) | 識別コードはツムラ/88 |
| 効能又は効果 | 五十肩 | 肩痛のみで安易に適応判断しない |
| 通常成人用量 | 1日7.5gを2~3回に分割投与 | 食前又は食間に経口投与 |
| 主な構成生薬 | ソウジュツ、ビャクジュツ、ハンゲ、ブクリョウ、カンゾウなど12生薬 | 併用漢方薬との生薬重複を確認する |
| 高齢者 | 減量するなど注意して投与 | 臓器機能、栄養状態、併用薬を評価する |
| 小児 | 小児を対象とした臨床試験は実施されていない | 安易な成人用量の類推を避ける |
服薬説明では、「食間」は食事中ではなく、一般に食後約2時間を目安とすることを、患者の生活リズムに合わせて具体的に伝える。食前・食間投与の原則が守れない場合に自己判断で中断させるのではなく、処方医・薬剤師へ相談するよう案内することが望ましい。処方後には、痛みの強さだけでなく、結帯動作、挙上動作、夜間覚醒、仕事・家事への支障といった患者ごとの機能目標を用いて反応を評価する。
五十肩は、肩関節痛と可動域制限を主徴とする病態であり、疼痛優位の時期と拘縮が目立つ時期では患者の訴えや治療上の課題が異なる。二朮湯を処方する際も、単に疼痛スコアの低下を期待するだけではなく、現在の病期、炎症所見、可動域、睡眠障害、運動療法への参加可能性を総合的に把握する必要がある。
漢方医学的には、添付文書が示すように証を考慮することが原則である。したがって、「五十肩なら二朮湯」という疾患名のみの選択ではなく、患者の体力、冷えや熱感、発汗、胃腸症状、水分代謝に関わる訴え、疼痛の性状、併存疾患、他の漢方薬の使用状況を問診と診察で確認する。漢方処方の適否は個別評価に依存するため、定型化した自己判断や一般向けの症状チェックだけでの選択は適切ではない。
また、改善が不十分なまま同じ処方を続けることは避ける。添付文書は、症状・所見の改善が認められない場合に継続投与を避けるよう明記している。二朮湯への反応だけを見て診断を固定せず、症状の遷延、可動域制限の進行、神経学的所見、他部位痛の出現があれば、診断・治療方針そのものを見直す。
二朮湯にはカンゾウが含まれる。このため、偽アルドステロン症、低カリウム血症およびそれに伴うミオパチーが安全管理の中核となる。添付文書では、血清カリウム値や血圧値などに十分留意することが求められている。浮腫、体重増加、血圧上昇、脱力感、筋痙攣、四肢の麻痺などは、患者からの訴えを待つだけでなく、診察・服薬指導・定期確認時に能動的に尋ねるべき症候である。
併用注意として、カンゾウ含有製剤、ならびにグリチルリチン酸及びその塩類を含有する製剤が挙げられている。具体例には芍薬甘草湯、補中益気湯、抑肝散などが含まれる。複数の医療機関からの処方に加え、一般用医薬品や健康食品が関与することもあるため、「漢方薬はありますか」という抽象的な質問ではなく、薬剤名、製品現物、お薬手帳、購入先まで確認することが望ましい。
重大な副作用として、間質性肺炎、偽アルドステロン症、ミオパチー、肝機能障害および黄疸が記載されている。咳嗽、呼吸困難、発熱、肺音異常がみられる場合は、投与を中止し、速やかに胸部X線や胸部CTなどによる評価を行う。肝機能障害・黄疸については、AST、ALT、Al-P、γ-GTPなどの著明な上昇を伴うことがあるため、倦怠感、食欲低下、黄疸、褐色尿といった症状も確認する。
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する。授乳婦では、治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討する。処方時には妊娠・授乳の確認を形式的な問診で終えず、患者が相談しやすい環境を整えた上で、薬物療法の必要性と代替手段を個別に検討することが重要である。
二朮湯の適正使用では、開始前の評価と同じくらい、開始後の再評価が重要である。初回処方時に、どの症状を改善目標にするのか、いつまでにどの程度の変化を確認するのか、改善しない場合には何を再評価するのかを明確にしておく。例えば、「夜間痛による中途覚醒の回数」「洗髪動作の可否」「上衣の着脱時痛」「他動・自動可動域」「鎮痛薬の追加使用頻度」といった評価項目を用いると、主観的な印象だけに頼らず経過を追いやすい。
患者説明では、漢方薬であっても副作用が起こり得ること、他の漢方薬や市販薬との重複が問題になり得ることを簡潔かつ明確に伝える。「むくみ」「体重の急な増加」「血圧上昇」「力が入りにくい」「足がつる」「息苦しさや咳」「発熱」「皮膚や白目が黄色い」といった症状が出た場合には、自己判断で飲み続けず、速やかに処方医・薬剤師へ連絡するよう説明する。
肩関節周囲炎の管理は、薬物療法だけで完結するものではない。病期と疼痛に応じて、過度な安静を避けつつ、適切な可動域訓練、日常生活動作の調整、必要時の理学療法や整形外科的評価を組み合わせる。痛みを我慢して無理に動かすことも、疼痛への恐怖から肩を全く使わないことも、機能低下につながり得る。二朮湯を用いる場合も、患者の生活背景と治療目標に沿った多面的な支援の一部として位置付ける。
保存面では、品質保持のため湿気を避け、直射日光の当たらない涼しい場所に保管する。開封後は特に湿気を避ける。顆粒剤では保管環境や分包の取り扱いが服薬継続に影響するため、患者が薬を保管している場所も確認するとよい。処方意図、効果判定、リスクモニタリング、他職種間の情報共有を一体として行うことが、ツムラ二朮湯を安全かつ適切に使用するための基本となる。