

「声帯萎縮 トレーニング」という情報から自主練習を始めようとする患者に対しては、まず診断が確定しているかを確認します。米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会の2018年更新ガイドラインでは、嗄声が4週間以内に改善しない場合に喉頭観察、または実施できる医師への紹介を推奨しています。重篤な原因が疑われる場合は期間を問わず評価するという考え方であり、「4週間までは必ず様子を見てよい」という意味ではありません。
参考)https://aao-hnsfjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1177/0194599817751030
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 喉頭所見 | 声帯の萎縮、可動性、発声時の声門閉鎖、振動状態を確認する | 症状だけで加齢性変化と決めつけない |
| 発声時の過緊張 | 喉を締める発声や筋緊張性発声障害の合併を評価する | VFEや半閉鎖声道訓練の選択に関係する |
| 最長発声持続時間:MPT | 持続発声が可能な時間を測定する | 国内報告で効果判定に使用されているが、単独で判定しない |
| 聴覚心理的評価 | GRBAS尺度などで声の障害の程度や性質を評価する | 国内報告では全体的重症度を表すGスコアも使用されている |
| 患者報告アウトカム | VHIまたはVHI-10などで声に関連する不利益を把握する | 使用する尺度と版をそろえ、治療前後を比較する |
嗄声診療ガイドライン:Clinical Practice Guideline: Hoarseness(Dysphonia)(Update)
PhoRTEについては、2023年に巻号掲載された非劣性無作為化比較試験が参考になります。55歳以上の声帯萎縮患者を対象に、PhoRTE単独と、呼気筋力トレーニングであるEMSTを追加した群を比較しました。24人が無作為に割り付けられ、研究全体を完了したのは16人でした。両群でVHI-10の改善が認められ、平均変化量は単独群でマイナス8.20点、併用群でマイナス9.58点でした。
この試験では、EMST併用群の最大呼気圧の改善が単独群より大きかった一方、VHI-10については併用療法の非劣性を評価しています。非劣性とは、あらかじめ設定した条件で比較対象より劣らないことを検討する考え方であり、「EMSTを追加すれば声の改善が必ず上乗せされる」と証明したものではありません。少人数で、無作為化された人数と完了人数にも差があるため、効果の大きさをそのまま個々の患者に保証することは避けます。
PubMed:PhoRTE単独と呼気筋力トレーニング併用を比較した無作為化臨床試験
再評価では、初診時と同じ尺度で変化を追うとともに、患者が設定した生活上の目標を確認します。例えば「家族との会話で何度も聞き返される」「話すこと自体が負担になる」といった困りごとを具体化しておけば、MPTや音響指標の変化だけでは把握しにくい成果を検討できます。研究でも患者報告アウトカムと音響・空気力学的指標を併用しており、主観と客観の双方を扱うことが重要です。

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