

三次救急とは、生命に関わる重篤な救急患者に対して、高度な専門的医療を総合的に提供する救急医療体制です。「第三次救急医療」「救命救急医療」とも呼ばれ、主に救命救急センターがその役割を担います。厚生労働省は、緊急性・専門性の高い脳卒中や急性心筋梗塞、複数の診療科領域にわたる重症外傷、診断が難しい症例など、他の医療機関では治療の継続が困難な患者への対応を位置づけています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001094025.pdf
三次救急を理解するうえで重要なのは、救急医療の段階は受診の順番ではなく、必要な医療機能の違いを表すという点です。一次救急を受診し、次に二次救急へ進み、その後に三次救急へ到達しなければならないわけではありません。初期・二次救急医療機関からの転送に加えて、救急搬送機関から直接患者を受け入れる機能も求められています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002xuhe-att/2r9852000002xuo0.pdf
救命救急センターは、原則として、重症かつ複数の診療科領域にわたる重篤な救急患者を24時間体制で受け入れる施設です。単に夜間に診察できる病院という意味ではなく、専門的な治療と全身管理を組み合わせ、地域の救急医療を最終的に支える役割を持ちます。初期・二次救急医療機関や救急搬送機関との円滑な連携も、その機能の一部です。
医療従事者にとっては、「三次救急だから重症患者を診る」という理解に加えて、「自施設で提供できない治療をどの施設が担うのか」を把握することが重要です。三次救急の役割は高度な医療の提供ですが、すべての救急患者を一律に集中させることではありません。地域の各医療機関が担う機能を明確にし、患者の状態に適した医療へつなぐことが、救急医療体制の基本になります。
一次救急、二次救急、三次救急の違いは、主として担う診療機能にあります。初期救急とも呼ばれる一次救急は、主に夜間や休日の外来診療を担います。二次救急は、入院や緊急手術を必要とする患者への医療を担い、三次救急は、生命に関わる重篤な患者への救命医療を担います。ただし、実際の診療では患者の状態や医療機関の専門性に応じて役割が重なり、単純な軽症・中等症・重症の区分だけでは説明できません。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 一次救急・初期救急 | 主に軽度の救急患者に対する夜間・休日の外来診療を担う。 | 休日夜間急患センターや診療所などが担い、必要に応じて高次の医療機関へつなぐ。 |
| 二次救急 | 入院治療や緊急手術を必要とする救急患者への医療を担う。 | 高齢者救急を含む地域の救急患者の初期診療と入院治療を支える。 |
| 三次救急 | 生命に関わる重篤な患者に高度で総合的な救命医療を提供する。 | 他の医療機関では対応困難な患者や、複数診療科の対応を要する症例を受け入れる。 |
| 搬送先の選定 | 患者の重症度・緊急度と、必要な治療に対応する診療機能を照合する。 | 病態によっては専門性の高い二次救急医療機関で対応する体制も構築される。 |
「入院する患者はすべて三次救急」「救急車で搬送される患者はすべて三次救急」という理解は適切ではありません。二次救急にも入院や緊急手術を行う機能があり、三次救急には、それらに加えて、他施設で対応が難しい重篤な病態への高度な救命医療が求められます。搬送手段や入院の有無だけで区分を判断するのではなく、患者に必要な治療と受入施設の機能を確認する必要があります。
また、「二次救急では重症患者を診られない」と一括りにすることも避けるべきです。厚生労働省の搬送・受入体制に関する資料では、重症度・緊急度が高い患者について、救命救急センターだけでなく、症状に応じて専門性の高い二次救急医療機関で対応することも示されています。医療機関の名称や区分だけでなく、必要な専門治療を実施できるかどうかが重要です。
このため、医療従事者が地域の救急体制を把握する際は、一次・二次・三次という分類に加え、どの施設がどの診療領域に対応するかを確認することが実務につながります。地域の救急医療機関の役割を明確にし、適切な連携を形成することは、医療計画においても重視されています。
三次救急の対象は、特定の診断名だけで決まるものではありません。同じ疾患でも、全身状態、臓器障害の程度、必要な治療、複数診療科の関与の有無によって、対応すべき施設は異なります。救命救急センターでは、急性疾患や外傷、熱傷などのうち、呼吸・循環のサポートが必要な重症患者や、既存の単一診療科だけでは対応が困難な病態などが対象になります。
参考)救命救急科|診療科一覧|独立行政法人 国立病院機構 災害医療…
例えば、交通外傷で頭部・胸部・腹部など複数部位に損傷がある患者では、一つの診療科だけでなく、複数領域の治療と全身管理を組み合わせる必要があります。このような症例は、複数の診療科領域にわたる重症外傷を受け入れ、高度な医療を総合的に実施するという三次救急の役割を理解しやすい例です。
一方で、脳卒中や急性心筋梗塞という診断名だけを理由に、「必ず三次救急に搬送する」と一般化することはできません。厚生労働省の資料は、三次救急の対象として「緊急性・専門性の高い」症例を挙げており、症状によっては専門性の高い二次救急医療機関で対応する体制も示しています。実際の選定では、病態に必要な診療機能と地域の連携体制を踏まえます。
初療に関わる医療従事者には、確定診断だけではなく、呼吸・循環のサポートが必要か、複数領域の損傷や臓器障害があるか、自施設で治療を継続できるかという視点が求められます。三次救急の対象を疾患名の一覧として覚えるよりも、「どの医療機能が必要になっているか」という観点で捉えることが、適切な連携を考える助けになります。
救命救急センターは、初期・二次救急医療機関の後方病院として機能し、重篤な救急患者への医療を確保する施設です。厚生労働省の資料では、重症で複数の診療科領域にわたる救急患者に対して、高度な救急医療を総合的に24時間提供できることが求められています。これは救急外来での初期対応だけでなく、必要な専門治療へつなぐ体制を含むものです。
三次救急の診療では、患者が抱える問題を一つの臓器や診療科の範囲に限定せず、全身状態を踏まえて対応します。重症外傷や多臓器不全のような病態では、複数領域の診療を組み合わせることが施設の重要な役割になります。そのため、救命救急センターの機能は、特定の専門医が在籍していることだけではなく、重篤な患者に対して総合的な診療を提供できる体制として理解する必要があります。
高度救命救急センターは、救命救急センターのうち、特に広範囲熱傷、指肢切断、急性中毒などの特殊な病態に対する高度な診療機能を担う施設です。厚生労働省は、これらの患者への救命医療に必要な相当高度な診療機能と、24時間の診療体制を確保するための職員配置を求めています。通常の救命救急センターで対応が困難な症例を集約する役割も示されています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000023220.pdf
「高度救命救急センター」という名称は、一次・二次・三次とは別の「四次救急」という全国一律の区分を意味するものとして扱うのではなく、救命救急センターの中で特殊な病態への高度な機能を担う施設と理解するのが適切です。名称の「高度」だけに注目するより、患者が必要とする特殊な治療に対応できるかを確認することが重要になります。
受入先を検討する際は、三次救急の指定の有無に加えて、対象病態に対する診療機能も確認する必要があります。例えば、広範囲熱傷や指肢切断では、それぞれに対応する高度な診療体制が重要になります。救命救急センターと高度救命救急センターの違いは、単なる施設規模の大小ではなく、特殊な病態に対する機能の違いとして整理すると理解しやすくなります。
三次救急への搬送や転院を考える基本は、患者の重症度・緊急度と、必要な診療機能を対応させることです。救命救急センターは、初期・二次救急医療機関および救急搬送機関と連携して重篤な患者への医療を確保する施設であり、症状によっては専門性の高い二次救急医療機関で対応する体制も想定されています。したがって、施設区分だけで搬送先を機械的に決めるのではなく、患者に必要な医療を軸に調整します。
施設間連携を考える際には、まず自施設で提供できる治療と、対応が困難な治療を整理することが出発点になります。例えば、複数の診療科による対応が必要な重症外傷や、呼吸・循環のサポートが必要な重篤な病態では、総合的な救命医療を提供できる施設との連携が重要です。三次救急への紹介を、単に「重症だから」という言葉だけで捉えず、どの診療機能が必要かを明確にする視点が役立ちます。
また、24時間体制という制度上の役割と、個別患者に対する搬送・受入調整は分けて理解する必要があります。救命救急センターには、原則として重篤な救急患者を24時間体制で受け入れる役割がありますが、具体的な搬送先の選定では、患者の病態に対応する診療機能と地域で構築された体制を確認する必要があります。「三次救急ならどこでも同じ治療が受けられる」と考えるのではなく、患者ごとに必要な機能を照合することが大切です。
地域の連携は、三次救急へ患者を送る場面だけに限られません。厚生労働省は、第二次救急医療機関が高齢者救急をはじめとする地域の救急患者の初期診療と入院治療を主に担うなど、医療機関ごとの役割を明確化する方針を示しています。三次救急が重篤な患者への救命医療を担い、二次救急などが地域で必要とされる診療を支えるという役割分担が、救急医療体制全体の基盤になります。
院内教育では、一次・二次・三次救急の定義を覚えるだけでなく、自施設の診療機能、地域の救命救急センターの役割、専門性の高い受入施設との関係を整理すると、実務に結びつけやすくなります。三次救急とは、単に「最も重症の患者が来る場所」ではなく、他施設では対応が難しい重篤な患者へ高度な医療を提供し、地域の救急医療を支える機能です。この視点を共有することが、施設間の役割分担を理解する基礎になります。