

留置針の種類を理解するときは、まず「どこに、何を、どのような目的で留置する器具か」を整理することが重要です。一般病棟などで点滴用の留置針という場合、通常は末梢静脈に柔らかいカテーテルを留置する器具を指します。代表的な構造は、金属製の内針の外側をプラスチック製のカテーテルが覆う方式です。穿刺後は内針を抜去し、カテーテルを血管内に残して輸液や薬剤を投与します。金属の針をそのまま血管内に残す器具とは区別して理解します。
参考)末梢静脈カテーテル挿入 - 21. 救命医療 - MSDマニ…
一方、一般的な金属製の翼状針は、翼を使って保持・固定できる針であり、プラスチック製カテーテルを残す末梢静脈留置針とは構造が異なります。ここで注意したいのは、「翼がある器具はすべて翼状針」とは限らない点です。末梢静脈留置針にも固定用のウイングを備えた製品があり、外見だけでは分類できません。また、CDCは、血管外漏出によって組織壊死を起こすおそれがある輸液や薬剤の投与に金属針を使用しないよう勧告しています。器具の選択では、名称や見た目だけでなく、血管内に残る部分の材質と投与目的を確認します。
参考)Welcome to LWC Communities!
ミッドラインカテーテルやPICCも、末梢静脈から挿入することがありますが、短い末梢静脈留置針と同じものではありません。ミッドラインは先端が中心静脈に達しない末梢静脈カテーテルです。これに対し、PICCは末梢挿入型中心静脈カテーテルであり、上腕などの静脈から挿入して先端を上大静脈近傍に留置します。「腕から挿入したから末梢静脈用」と判断せず、先端位置と使用目的を区別する必要があります。
参考)https://anesth.or.jp/files/pdf/JSA_CV_practical_guide_2026.pdf?var=20260527022503
日本麻酔科学会「安全な中心静脈カテーテル挿入・管理のためのプラクティカルガイド」
末梢静脈留置針の規格で基本になるのが、太さを表すゲージです。一般に、ゲージの数字が小さいものほど太く、数字が大きいものほど細くなります。ただし、同じゲージでもカテーテルの長さや製品設計が異なるため、ゲージだけで製品全体の性能を判断することはできません。下表は、JMSの製品案内に掲載された「アンジオカットプラス」の規格例です。外径や長さはこの製品の値であり、すべての留置針に共通する寸法ではありません。
参考)https://medical.jms.cc/products/detail.html?m=ProductsDetail&catid=4&itemid=74catid=4href="https://medical.jms.cc/products/detail.html?m=ProductsDetail&catid=4&itemid=74">https://medical.jms.cc/products/detail.html?m=ProductsDetail&catid=4&itemid=74itemid=74" target="_blank" rel="noopener">静脈留置針
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 16G | カラー:灰色/カテーテル外径:1.7mm | 掲載製品の長さは45mm |
| 18G | カラー:深緑/カテーテル外径:1.3mm | 掲載製品には30mmと48mmがある |
| 20G | カラー:ピンク/カテーテル外径:1.1mm | 掲載製品には30mmと48mmがある |
| 22G | カラー:濃紺/カテーテル外径:0.9mm | 掲載製品の長さは25mm |
| 24G | カラー:黄色/カテーテル外径:0.7mm | 掲載製品の長さは19mm |
表のように、同じ18Gや20Gでも長さの異なる製品があります。したがって、「20Gを準備する」という指示だけでは、長さまで特定できない場合があります。物品の準備や申し送りでは、必要に応じてゲージ、カテーテル長、製品名を組み合わせて確認すると、取り違えを防ぎやすくなります。
カラーコードは、太さを視覚的に識別するための補助手段です。国内では注射針や末梢血管用留置針などのカラーコードについて、ISO規格に沿った統一が進められてきました。ただし、異なる器具の色をそのまま横断的に読み替えるのは避けます。製品を準備するときは、ハブの色だけで決めず、包装に記載された器具の種類、ゲージ、外径、長さを確認してください。
また、ゲージ別の流量を一律の数値として覚える方法には限界があります。少なくとも、同一ゲージに複数の長さがあるため、実際の選定では採用製品の仕様を照合する必要があります。「太い規格だから目的を満たす」と決めつけず、必要な投与条件に対応する製品かどうかを個別に確認することが大切です。
参考)Summary of Recommendations
JMS「静脈留置針」製品案内・規格表
留置針の種類は、太さ以外にもカテーテルの材質や固定形状で分けられます。例えば、ポリウレタン製カテーテルを採用した製品があり、メーカーは強靭さ、柔軟性、平滑性などを特徴として示しています。また、体温で軟化するポリウレタンの特性を活用した製品もあります。ただし、特定の材質名だけで、すべての製品の操作性や臨床上の優劣が決まるわけではありません。先端加工やハブの形状なども含め、実際に採用している製品の情報を確認します。
固定形状ではウイング付きの製品があり、皮膚への固定に利用できます。小児向けの製品例には、穿刺時の保持を補助する取り外し可能なウイングホルダもあります。つまり、「ウイング付き」という分類の中にも構造の違いがあるため、製品を変更するときは従来品と同じ操作ができるとは限らないことを理解しておく必要があります。
参考)Welcome to LWC Communities!
参考)https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/ict/PDF/anzenmanual/1super.pdf
安全機構を比較するときの核心は、機能の区別です。「針刺し防止機構付き」という表示だけで、血液曝露防止弁も備えていると判断してはいけません。また、自動作動型であっても、製品が定める手順から外れてよいわけではありません。新規採用時や製品切り替え時には、電子添文とメーカーの説明資料を用い、内針抜去時の保持方法や安全機構の作動を確認する手順を共有します。
留置針は、診療科や年齢だけで機械的に選ぶのではなく、投与目的、使用期間、感染性・非感染性の合併症、実施者の習熟度を踏まえて選択します。CDCも、これらをカテーテル選択の判断材料として挙げています。「成人には必ず20G」「高齢者には必ず24G」といった固定的なルールでは、個々の治療条件や血管の状態を十分に反映できません。
最初に確認するのは、予定している薬剤や輸液が末梢静脈投与に適しているかどうかです。末梢静脈には濃すぎる、または刺激が強すぎる輸液では、中心静脈アクセスが必要になることがあります。この場合、末梢静脈留置針を太くしただけでは、投与経路の適否という問題は解決しません。薬剤の投与条件と治療計画を確認したうえで、末梢静脈カテーテル、ミッドライン、PICCなどを検討します。
参考)血管確保 - 21. 救命医療 - MSDマニュアル プロフ…
次に、必要な投与量や流量と、確保できる血管を照らし合わせます。急速な投与が必要な状況と、少量の薬剤を間欠的に投与する状況では、求める条件が異なります。選定時には「何Gか」だけでなく、どの製品の何mmを使用するのかまで明確にし、予定する投与方法に適合するかを確認します。長さの違う製品を同じ規格として扱わないことが、現場での選択を具体的にするポイントです。
治療期間も、デバイスを再検討する重要な要素です。CDCの2011年ガイドラインの推奨要約では、静脈治療が6日を超えると予想される場合、短い末梢静脈カテーテルではなく、ミッドラインまたはPICCを用いることがカテゴリーIIとして示されています。ただし、これは「6日を超えたら必ずPICCにする」という意味ではありません。薬剤の性質や血管の状態などを含めて判断するための目安です。
特に、ミッドラインを「短いPICC」と考えないことが重要です。ミッドラインは先端が中心静脈に達しないため、PICCと同じ投与条件をそのまま適用することはできません。長期化しそうだから長い器具を選ぶという順番ではなく、まず必要な投与経路を判断し、そのうえで期間や血管確保の難しさに合った器具を選びます。
留置針の種類が適切でも、留置後の観察や管理が不十分であれば、安全な治療にはつながりません。CDCは穿刺部位を毎日評価し、静脈炎、感染、機能不良が生じた末梢静脈カテーテルを抜去するよう勧告しています。観察では、熱感、圧痛、発赤、索状に触れる静脈などの静脈炎所見に加え、腫脹、漏れ、閉塞などの変化を確認します。患者からの痛みや違和感の訴えも、再評価のきっかけとして扱います。
ドレッシング材を貼った後も、穿刺部の観察が不要になるわけではありません。透明なドレッシングでは視診を行い、必要に応じてドレッシング越しに圧痛を確認します。また、湿潤、緩み、目に見える汚染があるドレッシングは交換します。固定することと観察可能性を保つことを両立し、患者には穿刺部の変化や新たな不快感があれば伝えるよう説明します。
交換時期については、成人と小児、施設の運用、参照するガイドラインを区別して理解する必要があります。CDCの2011年ガイドラインの推奨要約では、成人の末梢静脈カテーテルについて、感染と静脈炎を減らす目的で72~96時間より頻回に交換する必要はないとされています。一方、成人で臨床的な必要性だけに基づいて交換する方針は、同文書では未解決事項です。小児では臨床的な適応がある場合のみ交換するとされており、成人の時間基準を一律に当てはめるべきではありません。
したがって、「留置針は必ず何日間使える」「症状がなければ期限なく使用してよい」といった断定は避けます。交換方針は、感染監視、観察・記録の実施状況、スタッフの力量などを含めた施設の管理体制とも関係します。実際に、豪州の臨床ケア基準では、臨床的な必要性に基づく交換を検討する条件として、血流感染のサーベイランスや包括的な記録、能力要件への適合などが挙げられています。
参考)https://www.safetyandquality.gov.au/clinical-care-standards/management-peripheral-intravenous-catheters
さらに、治療上不要になったカテーテルは速やかに抜去することが原則です。留置針の管理では、選んだゲージや製品を維持すること自体を目的にせず、静脈アクセスが今も必要か、現在の薬剤や治療計画に合っているかを繰り返し確認します。留置針の種類の理解は、規格を暗記するためだけでなく、適切な器具の選択、留置中の評価、不要な留置の回避を一続きに考えるために役立ちます。
Australian Commission on Safety and Quality in Health Care「末梢静脈カテーテル管理の臨床ケア基準」