

問診では、「ぐるぐる回る」「ふわふわする」「立つと目の前が暗くなる」といった表現を記録しつつ、症状の言い方だけで鑑別を完結させないようにします。急性めまいの診療指針であるGRACE-3は、症状の時間経過と誘因に注目した評価を採用しています。持続する急性のめまい、自然に反復する発作、特定の動作で誘発される短い発作を区別することで、必要な診察や検査を選びやすくなります。
参考)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
また、患者が訴える「めまい」と、医療従事者が観察する「ふらつき」は、同じ問題を指しているとは限りません。本人の訴えに加えて、起立時の血圧変化、眼振、歩行の不安定さ、服薬内容を確認します。家族や介護職から得られる転倒歴や生活上の変化も、移動能力と安全性を評価するうえで役立ちます。高齢者の診療では、症状の原因と転倒の危険性を並行して検討する視点が必要です。
参考)https://www.aafp.org/afp/2022/0100/p39
最初の問診では、発症時刻、突然か徐々に始まったか、1回の症状がどれくらい続くか、発作のない時間があるかを確認します。続いて、寝返りや起き上がりなどの頭位変化、立ち上がりとの関係を聞き取ります。ここで大切なのは、動作によって症状が「新たに誘発される」のか、もともと続いている症状が「増悪する」のかを区別することです。頭を動かすとつらいという情報だけで、BPPVと判断してはいけません。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 頭位で誘発される短い発作 | 寝返りや頭位変化で生じる数秒から数十秒のめまいは、BPPVを疑う手がかりとなる。 | |
| 急性に発症し持続するめまい | 眼振、歩行不安定、神経学的所見を確認し、末梢性と中枢性を鑑別する。 | HINTSは適応と実施者の訓練が重要となる。 |
| 起立性低血圧 | 起立後3分以内に収縮期血圧が20mmHg以上、または拡張期血圧が10mmHg以上低下することが基本的な基準となる。 | 血圧変化だけでなく、症状と心拍数も確認する。 |
| 起立試験の測定方法 | 仰臥位で5分間安静にした後、起立前と起立後の血圧・心拍数を測定する。起立後1分・3分の測定が用いられる。 | 転倒や失神を防ぐため、立位保持の安全性を確認する。 |
| 薬剤と生活機能 | 多剤併用、鎮静や起立性低血圧に関連する薬剤、歩行・バランス障害、視力障害を確認する。 | 症状の原因評価と転倒リスク評価を並行して進める。 |
起立性低血圧の評価では、診察室で一度基準を満たさなかったからといって、症状との関係を否定しないことも重要です。立位から3分を超えて血圧低下が現れる遅延性の起立性低血圧もあります。問診上の疑いが強い場合は、測定条件や症状が出る場面を整理し、必要に応じて追加評価を検討します。安全に立位を保持できない患者に対して、無理に通常の起立試験を実施することは避けます。
高齢者の急性めまいでは、脳卒中を含む中枢性疾患を見逃さないことが重要です。特に突然発症した持続性のめまいでは、眼振の性状、歩行不安定の程度、脳神経や四肢の神経学的所見を評価します。GRACE-3では、眼振のある急性前庭症候群に対して訓練を受けた診察者がHINTSを用いること、眼振がない患者では歩行不安定の重症度を評価することが推奨されています。
HINTSは、頭部衝動試験、眼振の評価、眼球の垂直方向のずれの評価を組み合わせる診察です。ただし、すべての「老人めまい」に使える一般的なスクリーニングではありません。GRACE-3が推奨する対象は、主に症状が持続し眼振を伴う急性前庭症候群であり、実施者には訓練が求められます。短い頭位性発作や症状が消失している患者に適用して、「末梢性だから安全」と判断する運用は避ける必要があります。
画像検査にも注意が必要です。GRACE-3は、急性めまいの中枢性・末梢性の鑑別目的で非造影頭部CTをルーチンに使用することを推奨していません。このため、頭部CTに異常がないという理由だけで脳卒中を除外する判断は適切ではありません。一方、この推奨は、出血など別の病態を疑う状況でもCTが不要という意味ではありません。症状と診察所見、検査の目的を整理し、脳卒中が疑われる場合は施設の救急診療体制に沿って評価します。
また、訓練を受けた診察者が適切にHINTSを行える場合、MRIを一律に最初の検査とする必要はないとされています。しかし、これは画像検査を省略すること自体が目標なのではありません。診察が中枢性を示す場合や判定困難な場合にはMRI・MRAを用いるなど、診断の不確実性に応じて検査を追加することが重要です。
BPPVが確認された場合は、障害されている半規管に応じた治療を選びます。後半規管型BPPVでは、Dix-Hallpike試験で誘発される回旋性・上向き眼振が診断上重要で、耳石置換法による治療、または実施可能な医療従事者への紹介が推奨されています。典型的な診断基準を満たし、それと矛盾する症状や所見がない患者では、画像検査をルーチンに追加する必要はありません。逆に、非典型的な経過や所見があれば、BPPV以外の原因を再検討します。
参考)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
Minds:良性発作性頭位めまい症診療ガイドライン2023年版
薬物療法では、めまいという訴えだけを根拠に、前庭抑制作用をもつ薬を継続しないことが重要です。米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会のBPPV診療ガイドラインは、抗ヒスタミン薬やベンゾジアゼピン系薬などの前庭抑制薬によるルーチン治療を推奨していません。高齢者では、鎮静やふらつきに関連する薬剤が転倒リスクに関わるため、症状を抑える利益だけでなく、移動能力や日中の覚醒への影響も評価します。
起立性低血圧が認められた場合は、原因と増悪要因を確認します。治療の目標は血圧の数値を正常化することだけではなく、症状を軽減し、生活機能を改善することです。原因となり得る薬剤の調整や非薬物療法を検討し、必要に応じて薬物療法につなげます。水分・塩分摂取の増加を検討する際には、心不全や慢性腎臓病などへの影響を評価する必要があり、高齢者全員に一律の摂取量を勧める対応は避けます。
服薬確認では、薬剤名だけでなく、開始・増量の時期、服用時間、症状が出る時間帯を整理すると、関連性を検討しやすくなります。降圧作用や鎮静作用をもつ薬剤などが疑われても、患者に自己判断で中止させるのではなく、処方医と情報を共有して調整します。多剤併用という事実だけで原因を断定せず、各薬剤の必要性と有害事象の可能性を個別に評価する姿勢が求められます。
老人めまいの診療では、症状の軽減だけでなく、安全に立ち上がれるか、歩けるか、生活を継続できるかを評価します。転倒には、歩行障害、バランス障害、視力障害、起立性低血圧、多剤併用、環境要因などが関わります。そのため、めまいの原因を治療しても、ほかの危険因子が残っていれば転倒リスクは解消しません。患者の生活環境と身体機能を合わせて確認することが必要です。
リハビリテーションは、患者ごとの障害に合わせて組み立てます。前庭障害には前庭リハビリテーション、筋力低下には下肢の運動療法、栄養上の問題には栄養指導など、原因別の対応を検討します。BPPVに対しても、前庭リハビリテーションは選択肢として位置づけられていますが、耳石置換法が適応となる病態では、原因に対する治療との役割を区別します。単に「歩くように」と伝えるのではなく、バランスと筋力を含めた個別の訓練計画が重要です。
参考)高齢者に特有の“めまい”“ふらつき”を専門に治療。順天堂東京…
起立に伴う症状がある患者には、急な体位変換を避け、段階的に立ち上がるなどの対策を検討します。同時に、どの場面でふらつくかを本人や支援者と共有し、必要な見守りや環境調整につなげます。患者指導は診断名の説明だけで終わらせず、「どの動作に注意するか」「どのような変化があれば再評価するか」を具体的に伝えることが大切です。
経過観察では、発作の頻度や持続時間だけでなく、転倒・転倒しかけた経験、移動範囲、日常生活上の支障も確認します。症状が改善しない場合は診断と治療方針を再検討し、新たな神経症状や著しい歩行不安定が出現した場合は緊急性を再評価します。高齢者のめまいに対する医療は、危険な病態の見極め、原因別の治療、薬剤の適正化、個別のリハビリテーションをつなげ、生活の安全を支えることが中心となります。

ブラックキャップ [12個入] ゴキブリ駆除剤 固形物 食いつき2.5倍! 置いたその日から効く 防除用医薬部外品 【Amazon.co.jp限定】