


リオナ錠250mgは、クエン酸第二鉄水和物を有効成分とする経口製剤であり、「慢性腎臓病患者における高リン血症の改善」と「鉄欠乏性貧血」の二つの効能又は効果を有する医療用医薬品です。妊娠中の使用を検討する場面では、後者である鉄欠乏性貧血に対する鉄補充薬としての位置付けを明確にした上で、患者個別の病態を評価する必要があります。
本剤に含まれる3価鉄イオンは、腸上皮細胞において一部が2価鉄イオンへ還元された後に消化管から吸収され、トランスフェリンと結合して循環します。その後、骨髄の赤芽球に取り込まれ、ヘモグロビン合成に利用されることで鉄欠乏性貧血の改善に寄与します。妊娠中は循環血漿量の増加、胎児・胎盤への鉄供給、分娩時出血への備えなどにより鉄需要が増すため、妊娠前からの鉄欠乏や食事摂取不足、悪阻、頻回妊娠などを背景に貧血を認めることがあります。
一方で、「妊娠中だから鉄剤を一律に投与する」という考え方は適切ではありません。貧血の原因は鉄欠乏だけではなく、葉酸・ビタミンB12欠乏、炎症に伴う貧血、遺伝性血液疾患、出血、腎機能障害など多岐にわたります。本剤は鉄欠乏状態にない患者には投与禁忌とされており、鉄欠乏を評価せずに投与することは鉄過剰につながるおそれがあります。妊婦のHb低下が生理的血液希釈の範囲か、治療対象となる鉄欠乏性貧血かを見極めることが、リオナ錠250mgを安全かつ有効に用いる出発点です。リオナ錠250mgの最新の電子添文、インタビューフォーム、リスク管理計画は、製造販売元およびPMDAの医療関係者向け情報で確認できます。
参考)リオナ錠250mg
PMDA:リオナ錠250mg 医療用医薬品情報
電子添文の「妊婦」の項では、妊婦又は妊娠している可能性のある女性に対し、「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」と記載されています。この表現は妊婦への絶対的禁忌を意味するものではありませんが、妊婦での安全性が十分に確立されたと解釈して漫然と投与してよいものでもありません。処方時には、未治療の鉄欠乏性貧血が母体の症状、分娩時の耐容性、産後の回復などに及ぼし得る影響と、薬物治療に伴う有害事象・不確実性を比較衡量する必要があります。
参考)医療用医薬品 : リオナ (リオナ錠250mg)
妊娠週数だけで投与可否を決めるのではなく、貧血の程度、症候の有無、Hbの経時変化、血清フェリチン、赤血球指数、炎症の有無、食事・悪阻・出血状況、既往歴、併用薬、経口鉄剤の忍容性などを統合して判断します。とくにフェリチンは貯蔵鉄の評価に有用ですが、炎症時には上昇し得るため、単独の値だけで鉄欠乏を否定せず、CRPや臨床経過も含めて解釈することが重要です。
| 確認項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 適応の確認 | 鉄欠乏性貧血であることを確認する | 鉄欠乏状態にない患者への本剤投与は禁忌である |
| 妊娠状況 | 妊娠週数、妊娠経過、母児の状態を把握する | 産婦人科と情報を共有し、治療の必要性を個別に評価する |
| 血液検査 | Hb、赤血球指数、フェリチンなどを確認する | 炎症や併存疾患の影響を踏まえて総合的に判断する |
| 鉄過剰リスク | 他の鉄含有製剤、サプリメント、静注鉄投与歴を確認する | 本剤投与中もHb、フェリチン等を適宜測定する |
| 消化管疾患 | 消化性潰瘍、炎症性腸疾患などの既往・症状を確認する | 病態を悪化させるおそれがある |
| 併用薬 | 抗菌薬、甲状腺ホルモン剤などを確認する | 鉄とのキレート形成による吸収低下に注意する |
患者説明では、「妊娠中であることを理由に自己判断で休薬・増量・市販鉄サプリメントの追加をしないこと」を明確に伝えます。つわり、便秘、下痢、服薬困難などは妊娠経過に伴って変動しやすいため、服薬継続が困難であれば、患者が中断する前に産婦人科医・処方医・薬剤師へ相談できる導線を示すことも重要です。
鉄欠乏性貧血に対する本剤の通常用量は、成人にクエン酸第二鉄として1回500mgを1日1回、食直後に経口投与です。患者の状態に応じて適宜増減できますが、最高用量は1回500mgを1日2回までとされています。リオナ錠250mgは1錠当たりクエン酸第二鉄水和物250mgを含有するため、通常の1回500mgは2錠に相当します。妊娠中であっても、添付文書上、妊婦のみを対象にした別の定型用量が提示されているわけではありません。したがって、妊婦に対しては「妊娠中だから低用量」と機械的に決めるのではなく、適応の妥当性、臨床症状、検査値、忍容性を踏まえた処方設計が必要です。
鉄欠乏性貧血患者12例を対象とした食事影響試験では、本剤500mgを食直後に投与した場合、空腹時投与に比べ、血清鉄濃度のベースライン補正後の最大濃度および曝露量が増加しました。添付文書の食直後投与という用法は、吸収面も踏まえた設定です。妊娠悪阻等で食事摂取が不安定な場合は、単に「食後に飲む」と指導するだけでなく、実際に服薬可能な食事のタイミング、嘔吐との関係、服薬後の消化器症状を確認し、処方医へ具体的にフィードバックすることが実務上有用です。
モニタリングでは、Hb上昇の確認だけで治療を終了したり継続したりせず、血清フェリチン値なども用いて鉄補充の状況と鉄過剰のリスクを評価します。添付文書は、鉄欠乏性貧血に対する投与中、ヘモグロビン値および血清フェリチン値などを適宜測定し、鉄過剰に注意するよう求めています。ほかの鉄含有製剤を投与中の患者では鉄過剰症を引き起こすおそれがあるため、経口処方薬、静注鉄、妊婦用サプリメント・健康食品を含めて鉄摂取源を確認します。
リオナ錠250mgの鉄欠乏性貧血患者を対象とした国内第III相比較試験では、安全性解析対象346例中102例、29.5%に副作用が認められました。主な副作用は下痢67例、19.4%、悪心34例、9.8%、便秘11例、3.2%でした。添付文書の副作用欄にも、下痢、悪心、便秘のほか、腹部不快感、嘔吐、腹部膨満、腹痛などが記載されています。妊娠中は悪阻、便秘、腹部不快感が妊娠自体でも生じ得るため、症状を妊娠によるものと決めつけず、本剤開始・増量との時間的関係、重症度、脱水、食事摂取量、体重変化を確認することが必要です。
また、本剤により便が黒色を呈することがあります。これは鉄剤でみられることのある変化ですが、タール便、出血を疑う腹痛、めまい・動悸の増悪、失神、血圧低下などを伴う場合は、薬剤による便色変化のみと自己判断せず、消化管出血なども念頭に評価します。過量投与時には悪心、嘔吐、腹痛、血性下痢、吐血などの消化器症状に加え、重症例ではショックや肝障害に至る可能性があるため、家庭内の小児の誤飲も含め、処方量・保管方法の説明が欠かせません。
相互作用では、鉄が他薬と結合して吸収を低下させることがあります。キノロン系抗菌薬では同時服用を避けるなどの注意が必要であり、甲状腺ホルモン剤のレボチロキシン、テトラサイクリン系抗生物質、セフジニル、レボドパ・ベンセラジド塩酸塩などでも相手薬の作用減弱のおそれがあります。妊婦でレボチロキシンを服用している場合や、感染症治療で抗菌薬が追加された場合には、処方変更・臨時処方の時点で必ず相互作用を確認し、同時服用を避ける必要性や間隔について、処方医・薬剤師が個別に指示します。経口アルミニウム製剤についても、クエン酸との併用で血中アルミニウム濃度上昇が報告されているため、同時服用を避けるなどの対応が必要です。
妊娠中の薬物療法では、「胎児に影響しない薬か」という単純な二択で説明すると、患者の不安を強めたり、必要な治療の中断を招いたりすることがあります。リオナ錠250mgについては、添付文書上、妊婦又は妊娠している可能性のある女性に対し、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することとされています。この文言を患者に伝える際は、不確実性を隠さず説明しながらも、処方が「鉄欠乏性貧血を治療する必要性」と「薬剤のリスク」を医師が比較検討して行われていることを、平易な言葉で共有することが大切です。
説明の際には、薬剤名と目的を混同させないことも重要です。リオナ錠250mgは高リン血症治療剤としても用いられる一方、妊娠中に問題となる場面では鉄欠乏性貧血に対する鉄補充の目的で処方されることがあります。患者がインターネット検索で「高リン血症の薬」という情報に触れた場合、なぜ自分に処方されているのか不安を持つことがあります。「今回の処方目的は鉄欠乏性貧血への鉄補充であること」「用量・回数は適応によって異なること」「他者の服用方法を参考にして増減しないこと」を明確に説明します。
強ミヤリサン 錠 330錠 [指定医薬部外品]