

乳幼児の黄疸を診療する際は、まず出生直後から続く黄疸なのか、一度軽快した後に再び現れた黄疸なのかを確認します。新生児期には間接型ビリルビン優位の黄疸がよくみられますが、直接型ビリルビンの上昇を伴う胆汁うっ滞は生理的な現象ではありません。「赤ちゃんにはよくある黄疸」という説明だけで経過観察せず、日齢、哺乳状況、体重推移、便と尿の色を組み合わせて評価することが重要です。
参考)Neonatal Cholestasis - Pediatr…
臨床では、間接型優位の高ビリルビン血症と、直接型上昇を伴う高ビリルビン血症を分けると、鑑別と対応の方向性が明確になります。間接型優位では哺乳不足、母乳性黄疸、溶血などを考えます。一方、直接型上昇では胆道閉鎖症、感染症、代謝性・遺伝性疾患などを検討し、肝胆道系の精査へ進みます。総ビリルビン値がそれほど高くなくても、直接型が上昇していれば見逃せません。
母乳栄養に関連する黄疸も、一つの病態として扱わないことが大切です。出生早期の摂取不足に伴う黄疸は、哺乳量不足や過度の体重減少と関連し、生後3~5日頃にビリルビンがピークとなります。これに対し、母乳性黄疸は哺乳と体重増加が良好な児にもみられ、間接型優位の黄疸が生後3か月頃まで続くことがあります。ただし、母乳を飲んでいるという事実だけで母乳性黄疸と決めつけてはいけません。
参考)https://www.aafp.org/afp/2023/0600/practice-guidelines-hyperbilirubinemia-newborns
本記事で扱う光線療法の評価方法は、主に新生児の高ビリルビン血症を対象とします。米国小児科学会の2022年ガイドラインは在胎35週以上の新生児を対象としており、在胎35週未満の早産児や幼児へ治療曲線をそのまま適用するものではありません。乳児期以降に新たに出現した黄疸も、新生児期の生理的黄疸の延長とせず、ビリルビン分画や肝機能を含めて原因を評価します。
生後24時間以内に認める黄疸は、溶血などによる早期の高ビリルビン血症を考える所見です。外見から程度を推測して待つのではなく、経皮ビリルビンまたは血清総ビリルビンを速やかに測定します。生後24時間を過ぎても、皮膚の黄色さだけで血清値を正確に推定することはできません。視診は発見のきっかけとして用い、治療の必要性は測定値で判断します。
以下は、米国小児科学会の2022年ガイドラインを解説した資料と、乳児胆汁うっ滞の評価指針に基づく確認項目です。各数値は目的が異なり、光線療法の開始基準、溶血の疑い、胆汁うっ滞の評価基準を混同しないようにします。日本の診療現場で使用する際は、対象児の在胎週数と自施設の採用基準を確認してください。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 生後24時間以内の黄疸 | 経皮または血清ビリルビンを速やかに測定 | 溶血などの病的原因を考慮する。 |
| 経皮値から血清値への確認 | 経皮値が15 mg/dL以上、または光線療法閾値との差が3 mg/dL以内 | 血清総ビリルビンで確認し、治療判断につなげる。 |
| ビリルビンの急速な上昇 | 生後24時間以内は毎時0.3 mg/dL以上、その後は毎時0.2 mg/dL以上 | 溶血を示唆する所見であり、原因検索を検討する。 |
| 直接型ビリルビンの上昇 | 1.0 mg/dL超は病的と考え、胆汁うっ滞を評価 | 総ビリルビン値だけで安心せず、専門医への相談を検討する。 |
| 生後2週を過ぎる黄疸 | 総ビリルビンと直接型ビリルビンの測定を検討 | 全身状態良好な母乳栄養児の検査時期には指針による違いがある。 |
| 光線療法の適応 | 生後時間、在胎週数、血清総ビリルビン、神経毒性リスクで判定 | すべての新生児に共通する単一の開始値は設定しない。 |
遷延性黄疸の採血時期には、指針間で違いがあります。乳児胆汁うっ滞の評価指針では、生後2週を過ぎて黄疸があれば分画測定を勧め、診察所見と便・尿の色が正常な母乳栄養児では、生後3週まで慎重に観察する選択肢を示しています。一方、米国小児科学会の指針では、人工栄養児は生後2週、母乳栄養児は生後3~4週に黄疸が残る場合の分画測定を推奨しています。この違いを「母乳栄養なら無条件で待ってよい」と解釈せず、淡色便、濃色尿、体重増加不良などがあれば早期に評価します。
原因検索では、出生歴と母体の血液型・抗体検査結果を確認し、必要に応じて児の血液型や直接抗グロブリン試験を調べます。治療しても上昇する、いったん低下した後に急上昇するなどの経過では、G6PD欠損症を含む溶血性疾患も検討します。また、遷延する間接型優位の黄疸では、先天性甲状腺機能低下症などを念頭に新生児マススクリーニング結果を確認します。
乳幼児の黄疸で特に診断の遅れを避けたい疾患が胆道閉鎖症です。胆管の閉塞により胆汁を腸へ排出できなくなり、黄疸、淡色便、濃い黄色の尿が現れます。初期から便が真っ白になるとは限らず、薄いクリーム色や淡い黄色に見える場合もあります。「黄色が残っているから正常」「白色便ではないから胆道閉鎖症ではない」という判断は危険です。
参考)https://www.ncchd.go.jp/center/benshoku/for_medicalperson/docs/manual2.pdf
診療上の重要なキーワードは
胆汁うっ滞
です。直接型ビリルビンの上昇を伴う黄疸では、生理的黄疸とは異なる評価が必要になります。胆汁が腸へ流れにくい状態は脂肪や脂溶性ビタミンの吸収障害を招き、ビタミンK欠乏による出血にもつながります。黄疸の濃さだけでなく、便色、尿色、出血傾向、成長の経過まで確認します。
国立成育医療研究センターが公開する活用マニュアルでは、生後2週、生後1か月、生後1~4か月の記録を基本とし、日常的な便色観察も勧めています。医師、助産師、看護師、保健師が同じカードを使って説明すれば、退院指導から家庭訪問、健診まで観察をつなぎやすくなります。紹介時には便色番号、確認日、黄疸と濃色尿の有無、総・直接型ビリルビンの測定結果を共有します。
胆道閉鎖症では早期の外科的評価と治療が重要です。疑った段階で紹介先へ連絡し、地域で必要な検査をどこまで行うか調整します。すべての検査を紹介元で完了させてから送るのではなく、専門施設での評価が遅れない診療連携を優先します。
国立成育医療研究センター:胆道閉鎖症早期発見のための便色カード活用マニュアル
新生児の間接型高ビリルビン血症では、血清総ビリルビンを、生後時間と在胎週数に対応する治療曲線に照らして評価します。同じ測定値でも、生後何時間か、早産か、溶血や敗血症があるかによって対応は異なります。在胎38週未満、溶血性疾患、敗血症、低アルブミン血症、直近24時間の臨床的不安定性などは神経毒性リスクの評価に関係します。在胎週数の扱いを含め、採用する曲線の適用条件を確認する必要があります。
光線療法は、光の作用でビリルビンを排泄されやすい形に変える治療です。開始後は血清ビリルビンの反応を確認し、対象児の生後時間、上昇速度、リスク因子に応じて測定頻度を調整します。米国小児科学会の指針では、入院児は開始から12時間以内の測定を基本としています。治療中も哺乳状況や水分状態を評価し、必要な栄養を確保します。
光線療法の中止も「黄色さが薄れた」という見た目だけで決めません。米国小児科学会の指針では、開始時の生後時間に対応した光線療法閾値より、血清総ビリルビンが少なくとも2 mg/dL低下したことが中止を検討する目安です。ただし、生後48時間未満で治療を開始した児、溶血がある児、在胎38週未満の児などでは再上昇リスクを考慮し、治療継続や中止後の再検を個別に判断します。
交換輸血が必要となる重症例では、通常の再検間隔で待つことはできません。同指針では、交換輸血閾値の2 mg/dL手前を治療強化の閾値とし、交換輸血に対応できる新生児集中治療体制での管理を求めています。集中的光線療法、必要な輸液、緊急採血、輸血準備を進め、交換輸血閾値への到達または急性ビリルビン脳症の徴候があれば緊急対応します。静注免疫グロブリンはすべての黄疸に用いるものではなく、同種免疫性溶血など適応を限定して検討します。
一方、胆汁うっ滞を伴う黄疸では、光線療法の適否だけに議論を集中させないことが重要です。胆道閉鎖症なら外科的治療、感染症ならその治療など、原因への介入が必要になります。栄養管理や脂溶性ビタミン補充も病態に応じて検討し、間接型高ビリルビン血症の管理とは分けて考えます。
米国家庭医学会:AAP新生児高ビリルビン血症ガイドラインの解説
哺乳不足に関連する黄疸では、授乳回数だけでなく、実際に飲めているか、体重がどう変化しているかを確認します。母乳栄養を支援する際、米国小児科学会の指針では24時間に少なくとも8回の授乳を勧めています。ただし、回数を満たしていても摂取量が十分とは限りません。過度の体重減少や摂取不足があれば、授乳方法の調整と必要な栄養補充を医療者が評価します。黄疸予防を目的とした水やブドウ糖水の補足は推奨されません。
母乳性黄疸を考える場合も、哺乳と体重増加が良好であることを確認し、遷延時には直接型ビリルビンや新生児マススクリーニング結果を評価します。胆汁うっ滞などを確認せずに母乳だけを原因と説明すると、保護者の不安を増やすだけでなく、治療が必要な疾患の発見を遅らせるおそれがあります。母乳栄養に関連する黄疸の種類と、今回どの所見を根拠に判断したかを具体的に伝えます。
退院後の再診時期は、「全員1週間後」など一律に決めるのではなく、最終ビリルビン値と、その時点の光線療法閾値との差を基に設定します。閾値に近いほど短い間隔での再測定が必要です。引き継ぎでは、測定値だけでなく測定時の生後時間、在胎週数、治療歴、溶血の評価結果を共有します。これにより、外来担当者が同じ条件で治療曲線を読み直せます。
光線療法後は反跳性の再上昇にも注意します。生後48時間未満で治療を開始した場合や、直接抗グロブリン試験陽性、溶血が疑われる場合には、中止後早期の血清ビリルビン測定が必要になります。経皮測定は光線療法の影響を受けるため、中止直後の評価を安易に経皮値だけで済ませず、採血の必要性と測定時期を確認します。
保護者への説明には、予定された再診日と、それより早く相談すべき変化を分けて記載します。特に便が薄くなる、尿が濃い黄色になる、黄疸が続く・再び目立つといった変化は、胆汁うっ滞の評価につながる情報です。便色異常があれば、可能な範囲で新しい便の付いたおむつを持参してもらい、便色カードと照合します。家庭での観察を検査・紹介へつなぐ仕組みまで整えることが、乳幼児の黄疸診療では重要です。
Merck Manual Professional Edition:新生児胆汁うっ滞の評価と治療