

中足骨骨折のシーネ固定は、受傷直後の疼痛を軽減し、骨折部の動きを抑えながら、その後の治療方針を決定するための初期対応です。代表的な方法は、下腿後面から足底を支える後方短下肢シーネです。ただし、すべての中足骨骨折で同じ固定が必要になるわけではありません。骨折した中足骨の番号、骨幹部・基部などの位置、転位、関節面への波及、複数骨折の有無によって、必要な固定強度と荷重制限は異なります。
参考)https://www.aafp.org/afp/2016/0201/p183
シーネは全周性ギプスと異なり、硬化材料で下肢の全周を覆わない構造です。急性期の腫脹が変化する時期に用いられ、腫脹が落ち着いた後にギプスや歩行用ブーツへ移行する場合があります。一方、シーネを選択しただけで圧迫障害が防げるわけではなく、包帯やパッドを強く巻くと皮膚障害や虚血を起こす可能性があります。一般的な後方シーネは、歩行時の荷重を受けることを前提とした器具ではない点にも注意が必要です。
参考)How To Apply a Posterior Ankle…
固定前には、受傷機転、疼痛の部位、腫脹、皮下出血、創傷、変形を確認します。圧痛は骨折部だけでなく、隣接する中足骨、足根中足関節、中足趾節関節まで評価します。足趾の知覚と運動、末梢循環を記録しておけば、固定後に生じた変化を比較できます。開放骨折や神経血管障害が疑われる場合は、通常の保存療法の流れに乗せず、緊急の整形外科評価につなげます。
画像評価では、足部の正面・斜位・側面の単純X線撮影が基本です。第五中足骨近位部は、斜位像を含めて骨折線の位置を確認します。また、中足骨基部の骨折や中足部の損傷では、Lisfranc損傷の合併に注意します。「中足骨骨折が見つかったから診断は完了」とせず、足根中足関節周囲の損傷も検討することが重要です。
以下は、成人の急性中足骨骨折に対する初期対応を整理したものです。期間は2016年のAAFP総説に示された代表的な目安であり、全症例に適用する一律の指示ではありません。実際の治療は、画像所見、軟部組織の状態、患者の活動性、整形外科の判断に合わせて調整します。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 第二~第五中足骨の安定した骨幹部骨折 | 急性期は後方シーネと免荷を検討し、安定性確認後に歩行用ブーツなどへ移行する。 | 転位が3mm未満、背底側方向の角状変形が10度未満で、他の損傷がない場合は保存療法の候補となる。 |
| 第一中足骨骨折 | 急性期は後方シーネと免荷を基本に評価する。 | 荷重と足部アーチへの影響が大きく、転位や角状変形があれば整形外科への紹介を検討する。 |
| 第五中足骨結節部の裂離骨折 | 非転位例では支持包帯や歩行用ブーツを用い、疼痛に応じた荷重を検討できる。 | 骨癒合の目安は4~8週。支持期間と骨癒合期間を同じ意味で説明しない。 |
| Jones骨折 | 急性期は後方シーネと免荷。保存療法では非荷重の短下肢ギプスを6~8週使用する方法がある。 | 治癒に10~12週程度を要する場合があり、競技者や活動性の高い患者では早期に手術適応を相談する。 |
| 開放骨折、骨折脱臼、関節内骨折、複数骨折 | シーネ固定だけで治療を完結させず、整形外科での評価につなげる。 | 緊急性は開放創、神経血管障害、脱臼、軟部組織損傷などを踏まえて判断する。 |
表に示した転位量や角度は、保存療法を検討するための参考基準です。「数値以下なら問題ない」という意味ではなく、複数骨折、関節損傷、骨折部位によって扱いは変わります。また、同じ総説内でも紹介基準の転位量には記述上の幅があるため、境界例は画像全体と臨床所見から判断し、数値だけで専門医への相談を省略しないことが安全です。
例えば、同じ「足の外側が痛い」という訴えでも、第五中足骨結節部の非転位裂離骨折とJones骨折では、免荷の必要性や復帰までの見通しが異なります。患者への説明や紹介状では、「第五中足骨骨折」とだけ記載せず、骨折位置と骨折型を明示すると、荷重指示の取り違えを防ぎやすくなります。
後方短下肢シーネの装着は、骨折評価と必要な整復の判断を行ったうえで、訓練を受けた医療従事者が実施します。通常の装着では足関節を中間位、すなわち約90度に保持し、下腿後面から足底の中足骨頭付近まで支持します。材料は石膏、グラスファイバー、パッド付きの既製シーネなどで、製品によって準備方法や硬化時間が異なります。
固定材の長さだけでなく、下腿と足部の形状に合わせた幅、パッドの配置、包帯の張力が固定の質を左右します。以下はMSDマニュアルの後方足関節シーネ手順に基づく基本的な流れです。既製シーネでは、単層石膏を重ねる手順をそのまま置き換えず、製品の使用方法に従います。
固定材の厚みは、材料の種類と構造によって異なります。MSDマニュアルでは単層の石膏ロールを用いる場合に8~10層としていますが、これはパッド付き既製品にも同じ層数を求める指示ではありません。材料の使用条件を無視して厚く重ねると、成形しにくくなるだけでなく、硬化時の発熱にも注意が必要になります。
足関節の角度は、硬化中に崩れやすい点にも注意します。装着直後に中間位であっても、保持を途中でやめると底屈位で固まる可能性があります。また、パッドと包帯のどちらも強く引っ張って巻かないことが重要です。完成後は外観だけで判断せず、足趾の色調、知覚、運動、毛細血管再充満などを確認し、固定前の状態と比較します。
中足骨骨折のシーネ固定では、荷重の指示を固定方法とは別に明確化することが重要です。「固定したので歩いてよい」とは限らず、急性期の後方シーネと免荷、その後の歩行用ブーツによる段階的な荷重は異なる治療段階です。一般的な後方シーネは荷重を前提としていないため、松葉杖などを用いた移動方法を確認し、患者に具体的な禁止事項と許可事項を伝えます。
中足骨骨幹部骨折について、2016年のAAFP総説では、初期の後方シーネと免荷の後、3~5日以内に再診し、腫脹の軽減とX線上の安定性を確認する流れを示しています。安定していれば短下肢歩行ギプスや歩行用ブーツへ移行し、疼痛に応じて荷重を進めます。その後は2~4週ごとの診察や、4~6週前後の画像評価で治癒を確認する方法が紹介されています。
ただし、安定した非転位骨幹部骨折では、初期から支持性のある靴や軟性支持を用い、疼痛に応じた荷重を認める方法も報告されています。したがって、すべての中足骨骨折に長期間の完全免荷を課すのも、すべてに早期荷重を認めるのも適切ではありません。骨折の安定性と使用する支持具を評価し、その症例に対して選択した方針を共有します。
Jones骨折では、より慎重な経過観察が必要です。保存療法の代表例では6~8週の非荷重固定を行い、画像上の仮骨形成と局所圧痛の消失などを確認して荷重を段階的に進めます。癒合所見が不十分な場合には免荷・固定を延長することがあり、競技者や活動性の高い患者では手術による早期復帰の可能性を含めて整形外科に相談します。
「シーネを何週間巻くか」「足を床につけてよいか」「装具をいつ外すか」「競技にいつ戻るか」は、同じ質問ではありません。急性期の仮固定期間、最終的な支持具の装着期間、骨癒合の確認時期、活動復帰を分けて説明します。装具から離脱する判断も、経過日数だけでなく局所圧痛と画像所見を踏まえる必要があります。
シーネ固定後に注意する合併症は、局所の圧迫による皮膚障害、虚血性障害、材料の硬化時の熱傷、コンパートメント症候群などです。固定後に疼痛が増強した場合は、「骨折なので痛い」と決めつけず、包帯の締め付け、局所圧迫、神経血管所見の変化を評価します。自宅で内服鎮痛薬を使用しても疼痛が制御できない場合には、受診を指示します。
帰宅時には、患肢の挙上、シーネを濡らさないこと、指示された荷重制限、松葉杖の使用方法、次回受診日を具体的に説明します。座位や安静時には、可能な範囲で患肢を心臓より高く保つ方法が示されています。一般的な後方シーネは、入浴のために患者が自由に取り外して装着し直す設計ではないため、着脱可能な歩行用ブーツと混同させない説明が必要です。
再受診を促す症状としては、鎮痛薬で抑えられない疼痛に加えて、足趾の知覚や運動の変化、色調や末梢循環の異常を患者が認識できる言葉で伝えます。医療者は、装着後の神経血管所見を記録するだけでなく、患者が異常時にどこへ連絡するかも明確にします。固定材や包帯による過度の圧迫は虚血性障害を起こし得るため、再診予定まで待たせない判断が重要です。
小児では、成人向けの転位基準や固定期間をそのまま適用しないようにします。Royal Children’s Hospitalの小児救急ガイドラインでは、多くの中足骨骨折は保存的に治療できる一方、Jones骨折、複数骨折、開放骨折、Lisfranc損傷疑いなどでは整形外科への相談を求めています。成人と小児を同じ説明文で扱わず、年齢と骨折型に応じて評価・フォロー体制を設定します。
参考)https://www.rch.org.au/clinicalguide/guideline_index/fractures/Metatarsal_Foot_Fractures_-_Emergency_Department/
本記事の期間や基準は、主にAAFPの中足骨骨折・足部骨折に関する総説と、2025年に更新されたMSDマニュアルの装着手順に基づく教育用の目安です。中足骨骨折のシーネ固定は、固定材を装着して終了する処置ではありません。骨折型の識別、固定前後の神経血管評価、症例別の荷重指示、早期再診を組み合わせて実施し、個々の診療では担当医の判断と施設の手順を優先します。
Royal Children’s Hospital:小児中足骨骨折の救急診療ガイドライン