モイゼルト軟膏1%の適正使用と安全性

モイゼルト軟膏1%の適正使用と安全性

モイゼルト軟膏1%は、アトピー性皮膚炎に用いるPDE4阻害薬です。成人の標準用法、4週間での効果判定、感染症・妊娠授乳時の注意、他の外用薬との使い分けを医療従事者向けに整理します。適正使用を診療でどう実践するべきでしょうか?

モイゼルト軟膏1%の基礎知識と核心ガイド

1%製剤を安全に使う要点
成人は1日2回が基本

成人では1%製剤を患部へ1日2回塗布し、皮疹面積0.1㎡当たり1gを塗布量の目安とする。

4週間で反応を評価する

1%製剤で治療開始後4週間以内に改善が得られなければ中止し、診断や治療方針を見直す。

感染部位と粘膜は避ける

皮膚感染症の病変、粘膜、潰瘍、明らかなびらんには塗布せず、必要時は感染治療を優先する。

モイゼルト軟膏1%の位置付けと作用機序



モイゼルト軟膏1%は、有効成分ジファミラストを1g中10mg含有する白色の外用製剤であり、効能又は効果はアトピー性皮膚炎です。ジファミラストはホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬に分類されます。PDE4は多くの免疫細胞に存在し、細胞内セカンドメッセンジャーであるcAMPを分解する酵素です。ジファミラストはPDE4の活性を阻害して細胞内cAMP濃度を高め、サイトカインおよびケモカインの産生を制御することで、皮膚の炎症を抑制すると考えられています。


参考)https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/bookSearch/01/14987035637711
臨床上は、外用ステロイドのように強さのランクで単純に位置付ける薬剤ではなく、作用機序が異なる非ステロイド性の抗炎症外用薬として理解することが重要です。アトピー性皮膚炎では、皮膚バリア機能の低下、掻痒、炎症が互いに増悪させるため、保湿によるバリア機能の補完を土台に、炎症の程度、罹患部位、年齢、感染症の有無、既存治療への反応を評価して外用治療を組み立てます。モイゼルト軟膏1%は、アトピー性皮膚炎と確定診断した患者への使用を前提とし、接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、乾癬、疥癬、表在性真菌症、皮膚リンパ腫など、類似の皮疹を呈する疾患を鑑別したうえで導入します。


参考)https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/difamilast_manual.pdf
成人を対象とした国内第III相試験では、15~70歳の軽症から中等症のアトピー性皮膚炎患者364例に対し、モイゼルト軟膏1%または基剤を1日2回、4週間塗布しました。主要評価項目である投与4週後のIGA反応割合は、1%群で38.46%、基剤群で12.64%であり、1%群で統計学的に有意な改善が示されました。ここでのIGA反応は、IGAスコアが0または1となり、かつベースラインから2段階以上改善した状態と定義されています。


PMDA モイゼルト軟膏0.3%・1% 添付文書

用法・用量と4週間での治療評価

添付文書における成人の標準的な用法及び用量は、モイゼルト軟膏1%を1日2回、適量、患部へ塗布することです。小児では原則として0.3%製剤を1日2回使用し、症状に応じて1%製剤を使用できます。そのため、モイゼルト軟膏1%は成人の基本規格である一方、小児にも症状に応じて選択され得る製剤です。小児で1%製剤を用いて症状が改善した場合には、0.3%製剤への変更を検討します。


塗布量は、皮疹面積0.1㎡当たり1gが目安です。0.1㎡はおおむね10cm四方の面積を10枚分に相当する大きさとしてイメージできますが、実臨床では病変の広がりを視診で把握し、処方量が治療対象の面積と使用期間に見合うかを確認することが重要です。患者が「薄く塗る」ことを過度に意識して必要量に達していない場合、あるいは広範囲に自己判断で使用している場合には、服薬・外用アドヒアランスと使用量の両方を確認します。

項目 基準・内容 備考
効能又は効果 アトピー性皮膚炎 他の皮膚疾患での有効性・安全性は確立していない
成人の標準用法 1%製剤を1日2回、適量を患部に塗布 処方医の指示を優先する
塗布量の目安 皮疹面積0.1㎡当たり1g 広範囲使用時は処方量と実使用量を確認する
初期評価 治療開始4週間以内に症状改善を確認 改善がなければ1%製剤は中止する
改善後の対応 継続投与の必要性を再評価 漫然とした長期使用を避ける
小児の1%使用 症状に応じて1日2回使用可能 改善時は0.3%製剤への変更を検討する

治療開始から4週間以内に症状の改善が認められない場合、添付文書では1%製剤の使用中止が求められています。この時点では単に薬剤を継続するのではなく、診断の再検討、接触因子や感染症の確認、塗布量・塗布部位・塗布回数の確認、保湿治療の実施状況、重症度に応じた治療強度の再評価を行います。反応不良を「薬が効かない」とだけ扱わず、治療対象が本当にアトピー性皮膚炎の炎症性病変であるかを見直すことが適正使用につながります。


副作用、感染症と塗布部位の確認

添付文書に記載された主な副作用として、0.5%以上に適用部位色素沈着障害が1.1%、0.5%未満に適用部位毛包炎およびそう痒症、頻度不明として適用部位膿痂疹、適用部位ざ瘡、接触皮膚炎、適用部位紅斑、適用部位刺激感、適用部位腫脹が挙げられています。外用部位の紅斑、掻痒、湿疹悪化がみられた際には、アトピー性皮膚炎そのものの増悪、接触皮膚炎、感染症、あるいは外用剤による局所反応を区別する視点が必要です。


皮膚感染症を伴う患者では、感染部位を避けて使用します。やむを得ず使用する場合でも、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬による適切な治療を先行させる、または併用を考慮します。びらん、痂皮、疼痛、膿疱、急速な悪化、単純ヘルペスやカポジ水痘様発疹症が疑われる所見があるときは、漫然と外用を継続せず、感染症の評価と対応を優先します。日本皮膚科学会の安全使用マニュアルでも、皮膚感染症が発現した際には当該部位への塗布を中止し、適切な感染症治療を行うことが示されています。


  • 粘膜、潰瘍、明らかに局面を形成しているびらんへの塗布は避ける
  • 眼に入った場合は、直ちに水で洗い流す
  • 皮膚感染部位は避け、必要に応じて感染症治療を優先または併用する
  • 密封療法や重層法は検討されておらず、経皮吸収増加の可能性を考慮する
  • 皮疹や掻痒の悪化時は、疾患増悪と接触皮膚炎などを鑑別する

びらんや潰瘍、粘膜などでは経皮吸収が増える可能性があり、通常の臨床試験で十分に検討された使用条件とは異なります。また、密封療法、塗布部位を覆う方法、亜鉛華軟膏を伸ばしたリント布の貼付なども経皮吸収を増加させるおそれがあるため、安全使用マニュアルでは行わないことが推奨されています。顔面、とくに眼瞼付近へ塗布する場合は、眼内に入らないよう、患者への具体的な説明が欠かせません。


妊娠・授乳、小児での留意事項

妊婦または妊娠している可能性のある女性には、モイゼルト軟膏1%を投与しないことが望ましいとされています。動物実験では、臨床曝露量の263倍の曝露で胚・胎児死亡率の上昇および胎児の心室中隔膜性部欠損が報告されています。妊娠可能な女性には、投与中および投与終了後の一定期間、適切な避妊を行うよう指導します。外用薬であってもジファミラストは経皮吸収されるため、妊娠意向、妊娠の可能性、避妊状況を処方前および継続時に確認する視点が必要です。


授乳婦では、治療上の有益性と母乳栄養の有益性を比較し、授乳継続または中止を検討します。雌ラットの動物実験で乳汁中への移行が報告されている一方、人における乳汁中濃度や乳児への影響は明らかではありません。授乳中に使用する場合には、乳児が軟膏を直接経口摂取するリスクを避けるため、乳頭部や乳頭周囲への塗布を避けるとともに、塗布部位が乳児の皮膚や口に接触しないように指導します。


小児では通常、0.3%製剤を1日2回使用しますが、症状に応じて1%製剤を使用できます。低出生体重児、新生児、生後3か月未満の乳児を対象とした有効性および安全性を指標とした臨床試験は実施されていません。年齢だけでなく、病変範囲、皮膚バリアの状態、感染症の有無、保護者が正確に塗布できる環境かを総合的に確認し、必要量を超える自己判断の広範囲塗布を防ぐことが重要です。


併用療法と処方・服薬指導の実践

アトピー性皮膚炎の管理において保湿外用薬は、皮膚バリア機能低下を補う基本治療です。モイゼルト軟膏の臨床試験では保湿外用薬の併用は制限されておらず、安全使用マニュアルでは保湿外用薬との併用は可能とされています。ただし、同一部位に複数の外用剤を使用する場合は、塗布順や塗布間隔の一律のルールだけに依存せず、混和による使用感の変化、塗り残し、過量使用を避けられるよう、処方内容に合わせて患者ごとに説明します。


長期投与試験では、必要に応じてステロイド外用薬またはタクロリムス軟膏の併用が可能とされていました。一方で、モイゼルト軟膏とステロイド外用薬、タクロリムス軟膏を同一部位に塗布した場合の安全性データは十分ではなく、同一部位での免疫抑制作用の増強可能性も完全には否定できません。したがって、併用時は部位ごとに薬剤を使い分けることを基本に、同一部位への併用が必要かを個別に検討します。


デルゴシチニブ軟膏、全身性ステロイド、シクロスポリン、経口JAK阻害薬、デュピルマブなどの生物学的製剤、光線療法との併用については、組み合わせや同一部位での使用条件により十分なデータがないものがあります。特に全身療法との併用では、患者の重症度、感染リスク、既往歴、治療歴を踏まえ、皮膚科専門医を含む治療チームで有益性とリスクを評価します。光線療法との併用も臨床試験では検討されていないため、安易な併用は避け、必要時には慎重な観察が求められます。


服薬指導では、「赤みや掻痒のあるアトピー性皮膚炎の患部に1日2回塗る」「感染が疑われるジュクジュク、膿、急激な痛みや水疱がある部位は自己判断で塗り続けず相談する」「眼、口の中などの粘膜には塗らない」「4週間を一つの評価時点とし、改善が乏しい場合は受診して治療方針を見直す」という要点を、患者または保護者が再現できる言葉で伝えます。症状改善後も無目的に継続するのではなく、継続の必要性、使用規格、保湿を含む維持療法を定期的に再評価することが、モイゼルト軟膏1%の適正使用に直結します。

【指定第2類医薬品】イブクイック頭痛薬DX 60錠