固定チームナーシングとは?役割と実践のポイント

固定チームナーシングとは?役割と実践のポイント

固定チームナーシングの定義や基本構造、受け持ち看護師とリーダーの役割を解説。継続看護を支える仕組みから導入時の注意点、年間目標の設定まで、患者中心の看護を実現するために何を押さえるべきでしょうか?

固定チームナーシングの基礎知識と核心ガイド

固定チームで支える継続看護の実践
固定するのはチームの基盤

リーダーとメンバーを一定期間固定し、役割を明確にして患者中心の継続看護をチームで支えます。

受け持ち看護師を孤立させない

患者ごとの受け持ち看護師を軸に、勤務日の担当者やリーダーが情報を共有し、ケアをつなぎます。

年間目標を日々の行動につなぐ

チームの年間目標を具体的な実践に落とし込み、日々の看護と小集団活動を通じて改善を重ねます。

固定チームナーシングとは?定義と押さえたい五つの要素


固定チームナーシングは、リーダーとメンバーを一定期間固定し、役割と業務を明確にしたチームで継続的な看護を提供する看護方式です。個々の患者に継続して関わる受け持ち看護師が存在し、その看護師を固定チームが支えます。中心にあるのは継続性であり、単に看護師をいくつかのグループに分けるだけの仕組みではありません。


参考)7月 会長コラム - 固定チームナーシング研究会
固定チームナーシング研究会が示す定義は、リーダーとメンバーを一定期間、原則として1年以上固定すること、各チームが年間目標を持つこと、患者グループを継続して受け持つこと、患者ごとに継続した受け持ち看護師が存在すること、年間と日々のチーム活動に応援機能を備えることの五つです。「メンバーの固定」「患者の継続受け持ち」「年間目標」「役割分担」「相互支援」を組み合わせて理解すると、方式の全体像をつかみやすくなります。


ここでいう「固定」は、同じ看護師が毎日すべてのケアを行うという意味ではありません。受け持ち看護師が不在の勤務帯にも、チームの看護師が患者の状態や看護計画を引き継ぎます。名古屋市立大学医学部附属みどり市民病院も、チームの看護師が交代で患者を担当し、ある程度固定された看護師によって継続的なケアを提供する方式として説明しています。


参考)看護体制について
また、「1年以上」は、患者の入院期間や一人の看護師が連続勤務する期間を指すものではありません。チームの関係性や役割行動を育てるための、編成・運営上の期間です。研究会は、人が育ち、それぞれの役割を担えるようになることを見据えて、年間を通した育成と責任・権限の明確化を求めています。


固定チームナーシング研究会:固定チームナーシングの五つの定義

受け持ち看護師・固定チームリーダー・日々リーダーの役割

実践で混同しやすいのが、「患者を継続して受け持つ役割」と「その勤務日の看護を担当する役割」、そして「年間のチーム運営」と「その日の業務調整」です。固定チームナーシング研究会は、受け持ちナース、日々受け持ちナース、チームリーダー、日々チームリーダーなどの役割を挙げています。名称だけをそろえるのではなく、各部署の業務に合わせて役割を成文化することが重要です。


項目 基準・内容 備考
継続して受け持つ看護師 患者の看護過程を継続的に捉え、看護計画や退院支援の軸となる。 不在時も固定チームが支援し、一人で看護を抱え込まない。
日々受け持つ看護師 当日の患者の状態と看護計画を踏まえ、勤務帯の看護を実践する。 継続受け持ち看護師と同じ人になる場合もある。
固定チームリーダー 年間目標に沿ったチーム運営や、メンバーの役割遂行を支える。 責任の範囲と委譲される権限を明確にする。
日々リーダー その日のチーム活動を支え、患者状況に応じた業務調整を行う。 固定チームリーダーとの役割の境界を共有する。
固定チーム全体 患者グループを継続して受け持ち、受け持ち看護師を相互に支援する。 年間の改善活動と日々の看護実践をつなぐ。

上表は、研究会が示す役割と病院の公開実践例を、運用を考えるために整理したものです。全国共通の職務規程ではないため、実際の担当範囲や判断権限は施設で確認する必要があります。小江原中央病院では、患者ごとに担当看護師を決めて入院から退院までの看護過程を担う一方、日替わりのリーダーが日々のチーム活動を支援すると説明しています。


例えば、退院後の生活を見据えた患者の希望や支援上の課題は、受け持ち看護師を軸に整理します。ただし、その内容が本人の記憶だけにとどまると、不在時の看護に反映できません。看護計画や記録に残し、カンファレンスで検討し、日々の担当者が実践できる形にすることが運用上の要点です。研究会も、退院支援では受け持ち看護師の計画を軸にチーム全体で支えるとしています。


「チームで担当しているから誰かが対応するはず」という状態を避けるため、継続して検討する課題、当日中に対応する課題、リーダーへ相談する事項を分けておくと運用を整理できます。責任を一人に集中させることと、責任の所在を曖昧にしないことは別問題です。研究会が求める役割と業務の明文化を、自部署の具体的な場面に落とし込むことが大切です。


小江原中央病院:固定チームナーシングの看護体制と実践

固定チームナーシングのメリットと看護の質を支える条件

固定チームナーシングに期待される利点は、担当者が交代しても看護の方向性をつなぎやすいこと、受け持ち看護師を支える相談・教育の基盤を持てること、共通の目標に向けてチームで改善に取り組めることです。自治医科大学附属病院は、担当看護師がいないときも担当チームが継続して看護できることや、メンバーの相互理解が深まることを特徴として紹介しています。


参考)看護部紹介|自治医科大学附属病院 看護部

  • 看護の継続:患者の経過や看護計画をチームで共有し、担当者が交代しても必要なケアをつなぐ。
  • 受け持ち看護師への支援:カンファレンスでアセスメントや計画を検討し、一人だけで課題を抱えない体制をつくる。
  • 人材育成:新人や経験の浅い看護師が、先輩とともに患者の看護やチーム活動に取り組む。
  • 改善活動の継続:年間目標を定め、小集団で実践しながらチーム全体で進捗を確認する。

これらは、研究会の定義や自治医科大学附属病院の取り組みから整理できる特徴です。同院では、毎日のチームカンファレンスで患者情報を共有し、看護計画を一緒に考えています。また、年間目標の達成に向けて5名前後の小集団で活動しています。チームを固定することに加え、実際に相談し、学び、振り返る場を設けている点が重要です。


一方で、導入するだけで事故が減る、残業が減る、離職率が下がるとまでは断定できません。ここで参照した病院の公開情報は、それぞれの施設の体制や実践を紹介するものであり、他の看護方式と比較した効果を一律に証明する資料ではありません。メリットは「期待される働き」と「自部署で確認できた成果」を分けて評価する必要があります。


参考)固定チームナーシング – 医療法人慈恵会 小江原…
実践を振り返る際には、「同じチームだから伝わっている」と考えず、患者の希望、看護上の課題、計画の変更点が次の担当者にも分かるかを確認するとよいでしょう。チーム内の関係性を生かしながら、記録と対話で看護をつなぐことが、情報共有や看護計画の共同検討という取り組みを実質的に機能させるための視点になります。


自治医科大学附属病院:固定チームナーシングとチーム活動

導入・運用で注意したい負担の偏りとチーム間の分断

固定チームナーシングを運用するときは、チーム編成を固定すること自体が目的にならないよう注意が必要です。研究会が示す定義には、受け持ち看護師への支援だけでなく、日々のチーム活動における応援機能も含まれています。「自分のチームの患者だけを担当すればよい」という運用では、この相互支援の考え方を十分に生かせません。


運用上の点検例としては、患者数だけでなく、ケアに必要な時間や患者の状態、スタッフの経験、当日の勤務人数を確認し、負担に偏りがないかを話し合う方法が考えられます。これは、研究会のいう応援機能を実務に落とし込むための一案です。チーム編成の基本を保つことと、その日の状況に合わせて応援することを分けて設計すると、担当の明確さと柔軟性を両立させやすくなります。


リーダーへの業務集中にも目を向ける必要があります。年間目標の進捗管理、メンバーの育成、日々の調整をすべて一人に任せるのではなく、固定チームリーダー、日々リーダー、各メンバーが担う範囲を明確にします。研究会も、リーダーに責任と権限の範囲を伝え、一人で抱え込まないことを運営上のポイントとして挙げています。


チーム内の話し合いについても、開催しているだけで十分とはいえません。例えば、患者の状況を報告するだけで終わらず、「何を判断する必要があるのか」「看護計画をどう変更するのか」「誰がいつ確認するのか」まで具体化する進め方が考えられます。研究会は、目標達成に向けた計画を日々の業務に落とし込み、受け持ち看護師や日々リーダーが実践する内容を行動レベルで成文化する必要性を示しています。


参考)3月 会長コラム - 固定チームナーシング研究会
なお、チーム数や人数、会議の頻度を、他院の事例どおりに設定する必要はありません。自治医科大学附属病院は一般病棟を2~3チーム、1チーム10~15人としていますが、これは同院の実践例です。小江原中央病院は各病棟44~59床に対して1~3チームの体制を紹介しています。事例を参考にしつつ、自部署の患者像や配置条件に合わせて設計することが重要です。


年間目標の立て方と日々の看護につなげる実践例

固定チームナーシングの年間目標は、年度末に活動を発表するためだけのものではありません。研究会は、部署の現状分析から課題を明確にし、チームで実践できる目標と対策を立て、日々の活動に落とし込むことを求めています。目標設定では、取り組みたいテーマを先に決めるよりも、現在の患者ケアで何が課題になっているかを事実やデータから捉えることが出発点になります。


例えば、「退院支援を充実させる」だけでは、何を変えればよいのかが分かりにくくなります。そこで、「退院支援が必要な患者の課題をチームで共有できているか」「患者・家族の希望が看護計画に反映されているか」といった、自部署で確かめられる問いに分けます。これは、研究会が示す現状把握、対象の明確化、行動レベルでの成文化を踏まえた目標設計の例です。


次に、対象患者、実践する内容、担当する役割、実施する時期、評価方法を決めます。例えば、受け持ち看護師が患者の生活上の課題を整理し、チームカンファレンスで検討し、日々の担当者が計画に沿って実践するという流れです。評価項目として、必要事項の記録状況、課題を共有できた割合、支援上の問題が残った事例などを設定する方法が考えられます。これらは全国共通の必須指標ではなく、部署の課題に応じた設計例です。


活動の単位も工夫できます。自治医科大学附属病院では、月1回のチーム会で話し合い、年間目標に向けた活動を5名前後の小集団で進めています。チーム全員で方向性を共有しつつ、具体的な調査や実践の検討を小集団で担う構造は、年間目標を日々の行動につなげる参考になります。ただし、会議の頻度や小集団の人数は同院の例であり、すべての施設に同じ設定が必要なわけではありません。


評価では、活動を実施した回数だけでなく、患者への看護がどう変わったかを確認します。例えば、話し合いを増やした結果、看護計画の見直しや支援の実施につながったかを検討します。研究会は、達成したチーム目標を次年度には部署全体に広げ、部署の看護の質に貢献する仕組みをつくることも提案しています。うまくいった取り組みを一つのチームの経験で終わらせず、病棟の標準的な実践につなぐ視点が大切です。


参考)会長あいさつ - 固定チームナーシング研究会
固定チームナーシングを点検するときは、チームの名称や編成表だけで判断せず、患者ごとの継続した受け持ち看護師が機能しているか、不在時にも計画が引き継がれているか、リーダーとメンバーの役割が明確か、必要な応援が行われているかを確認します。五つの定義を日々の患者ケアに照らして確かめることで、自部署が改善すべき点を具体的に捉えられます。


固定チームナーシング研究会:チーム目標と日々の実践への落とし込み
固定チームナーシング研究会:目標設定と成果を部署全体に広げる考え方




看護実践の科学 2011年8月号