漢方23番「当帰芍薬散」の適応と安全管理

漢方23番「当帰芍薬散」の適応と安全管理

漢方23番として知られる当帰芍薬散について、医療用製剤の適応、構成生薬、証の見方、用法・用量、副作用、妊娠・授乳期の注意点を医療従事者向けに整理します。患者ごとの体質と症状を踏まえて適正使用できているでしょうか?

漢方23番の基礎知識と核心ガイド

当帰芍薬散23番の臨床整理
23番は当帰芍薬散

ツムラ23番は当帰芍薬散エキス顆粒であり、冷え、疲労、貧血傾向を伴う患者の証を重視して用いる漢方製剤です。

婦人科症状だけに限定しない

月経不順や月経困難、更年期障害に加え、倦怠感、動悸、慢性腎炎、妊娠中の諸病などが効能又は効果に含まれます。

副作用と重複生薬を確認する

消化器症状、発疹・瘙痒、肝機能異常に注意し、他の漢方薬との併用時には構成生薬の重複を必ず確認します。


漢方23番とは何か:製剤名・位置付け・基本特性



「漢方23番」は、一般にツムラの医療用漢方製剤における識別番号であり、正式な販売名は「ツムラ当帰芍薬散エキス顆粒(医療用)」である。読み方は「とうきしゃくやくさん」で、当帰芍薬散エキスを有効成分とする顆粒剤である。医療機関や薬局で患者から「23番を飲んでいる」「ツムラ23とは何の薬か」と質問を受けることがあるが、番号のみでは薬効や投与目的が伝わらないため、当帰芍薬散であることを確認したうえで、服薬状況と処方意図を丁寧に把握する必要がある。
当帰芍薬散は、婦人科領域で頻用される代表的な漢方処方の一つとして認識されやすい。しかし、医療用添付文書上の効能又は効果は婦人科症状のみではない。筋肉が一体に軟弱で疲労しやすく、腰脚の冷えやすい患者を基本像とし、貧血、倦怠感、更年期障害、月経不順、月経困難、不妊症、動悸、慢性腎炎、妊娠中の諸病、脚気、半身不随、心臓弁膜症が列挙されている。したがって、「女性の月経トラブルに用いる薬」という単純化ではなく、冷え、虚弱、貧血傾向、水分代謝の乱れを伴う患者像との整合性から評価することが重要である。PMDA 医療用医薬品情報:ツムラ当帰芍薬散エキス顆粒(医療用)
なお、「漢方23番」という表現は主としてツムラ製剤の番号に由来する。処方名としては当帰芍薬散である一方、医療用・一般用製剤の別、メーカー、剤形、エキス量、用法・用量は一律ではない。患者が市販薬の「23番」と医療機関から交付された「ツムラ23」を同一の用法で扱うことがないよう、服用中の製品名、包装、1回量、服用回数、他の漢方薬の有無を確認することが実務上の基本となる。


構成生薬と証からみる患者選択

ツムラ当帰芍薬散エキス顆粒(医療用)は、成人1日量7.5g中に、シャクヤク4.0g、ソウジュツ4.0g、タクシャ4.0g、ブクリョウ4.0g、センキュウ3.0g、トウキ3.0gの混合生薬から得た乾燥エキス4.0gを含有する。トウキ、センキュウ、シャクヤクは、漢方医学でいう血の不足や血行不全と関連付けて理解されることが多く、ブクリョウ、ソウジュツ、タクシャは水分バランスの偏りを考慮する場面で着目される構成である。
ただし、構成生薬の役割を現代医学の単一薬理作用に置き換え、「当帰が入っているから貧血に効く」「利水生薬が入っているから浮腫に必ず効く」と解釈することは適切ではない。当帰芍薬散は複数生薬からなる漢方製剤であり、個別症状だけではなく、患者全体の体質、冷えの部位、疲れやすさ、月経症状、顔色、めまい、浮腫、胃腸機能、併存疾患などを総合して適否を見極める。

項目 基準・内容 備考
識別 ツムラ/23 「漢方23番」はツムラ当帰芍薬散を指すことが多い
処方名 当帰芍薬散 読み方は「とうきしゃくやくさん」
構成生薬 シャクヤク、ソウジュツ、タクシャ、ブクリョウ、センキュウ、トウキ 医療用ツムラ製剤の成人1日量7.5gに基づく
基本的な患者像 筋肉が一体に軟弱で疲労しやすく、腰脚の冷えやすい者 添付文書に記載された効能又は効果の基本像
主な随伴所見 貧血傾向、倦怠感、めまい、頭重、肩こり、浮腫、月経関連症状 症状のみでなく証としての適合性を判断する

臨床では、月経不順や月経困難があっても、強い実証傾向、顔面紅潮、のぼせ、便秘、著明な腹力などが前景にある場合、当帰芍薬散が常に第一選択とは限らない。反対に、更年期症状として頭重感、めまい、肩こりを訴える場合でも、冷え、倦怠感、浮腫傾向、虚弱の有無を確認することで、処方意図をより具体的に評価できる。月経に関連する症状を主訴とする患者では、妊娠可能性、妊娠の有無、過多月経・不正出血の程度、器質性疾患の除外状況も並行して確認すべきである。
添付文書の薬効薬理には、ヒト顆粒膜細胞やラット下垂体培養細胞におけるホルモン分泌への作用、フリーラジカル消去作用、サイトカインに対する作用、更年期障害に対する動物実験の知見などが記載されている。ただし、これらにはin vitroまたは動物実験の知見が含まれ、個々の患者における臨床的有効性や適応判断を直接保証するものではない。薬理データを処方根拠として過大解釈せず、承認された効能又は効果、患者の証、経過観察を軸に扱う必要がある。ツムラ当帰芍薬散エキス顆粒(医療用)添付文書


効能又は効果と用法・用量の実務ポイント

医療用ツムラ当帰芍薬散エキス顆粒の効能又は効果は、「筋肉が一体に軟弱で疲労しやすく、腰脚の冷えやすいもの」を前提としたうえで、貧血、倦怠感、更年期障害、月経不順、月経困難、不妊症、動悸、慢性腎炎、妊娠中の諸病、脚気、半身不随、心臓弁膜症である。ここでの「貧血」は、鉄欠乏性貧血、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血などの病態診断や原因検索を代替する表現ではない。息切れ、動悸、著明な倦怠感、顔面蒼白、月経過多などを認める場合には、血算、鉄関連検査、必要時の婦人科的評価など、鑑別と原疾患への対応が優先される。
通常、成人には1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。年齢、体重、症状により適宜増減される。ツムラ医療用顆粒では、一般的に1包2.5gとして調剤・交付されるため、標準的には1回1包を1日3回と理解される場面が多いが、実際の処方指示を優先する。1日2回処方や減量投与もあり得るため、「23番は必ず毎食前に1包」と決めつけないことが大切である。

  • 食前は一般に食事のおよそ30分前、食間は食後およそ2時間以降から次の食事までの間を指すが、処方医・薬剤師の具体的な指示を優先する。
  • 飲み忘れ時に自己判断で2回分をまとめて服用しないよう説明し、次回服用との時間間隔も確認する。
  • 症状が改善しない場合は漫然投与を避け、証の再評価、鑑別診断、アドヒアランス、副作用、併用薬を確認する。
  • 患者が一般用医薬品の当帰芍薬散を追加購入している場合、医療用製剤との重複服用を防止する。
  • 月経痛や浮腫などが急激に悪化した場合は、漢方薬の継続のみで様子をみず、緊急性を含めた原疾患評価につなげる。

添付文書では、本剤の使用に際して患者の証、すなわち体質・症状を考慮すること、十分に経過観察し、症状または所見の改善が認められない場合には継続投与を避けることが明記されている。この記載は漢方診療に固有の要点であると同時に、薬物療法一般に共通する適正使用原則でもある。初診時の症状だけで長期継続を正当化せず、冷え、月経周期、月経痛、浮腫、めまい、倦怠感、睡眠、消化器症状など、処方目的に沿った評価指標を事前に共有しておくと再評価しやすい。


副作用・併用薬・特定患者での注意点

当帰芍薬散は「自然由来の生薬を用いた漢方薬だから副作用は少ない、または起こらない」と誤解されることがある。しかし、医療用添付文書には副作用として、過敏症の発疹・瘙痒等、肝機能異常としてAST・ALT等の上昇、消化器症状として食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹痛、下痢等が記載されている。これらの異常が認められた場合には、投与中止を含む適切な対応を検討する。
特に著しく胃腸が虚弱な患者では、食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹痛、下痢などが現れることがあるため、開始後の消化器症状を確認する。すでに食欲不振、悪心または嘔吐がある患者では、それらが悪化するおそれがある。患者が「体にやさしい薬なので、胃の不調が出ても続けてよい」と自己判断しないよう、症状が持続または増悪する場合の連絡先と受診目安を具体的に説明する。
妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する。添付文書に妊娠中の諸病が効能又は効果として含まれていることと、あらゆる妊娠中の不調に安全に使用できることは同義ではない。妊娠週数、主訴、産科的評価、既往歴、併用薬、胎児・母体の状態を踏まえ、産婦人科医を含む処方判断が必要となる。授乳婦では、治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮し、授乳継続または中止を検討する。小児を対象とした臨床試験は実施されておらず、高齢者では生理機能低下を考慮して減量などに注意する。ツムラ当帰芍薬散エキス顆粒(医療用)添付文書:特定の背景を有する患者に関する注意
併用薬確認では、当帰、芍薬、蒼朮、沢瀉、茯苓、川芎を含む他の漢方製剤や健康食品、民間薬の使用を聴取する。添付文書でも、他の漢方製剤等を併用する場合は含有生薬の重複に注意することとされている。患者は「漢方薬は別の目的だから重複しない」と考える場合があり、処方薬だけでなくドラッグストア購入品、オンライン購入品、サプリメントまで確認することが望ましい。重複は必ずしも直ちに有害事象を意味するものではないが、不要な曝露量増加や副作用評価の困難化につながるため、処方内容を一元的に把握する意義がある。


医療従事者が行う服薬支援と継続評価

漢方23番の服薬支援では、まず患者が「何のために服用しているのか」をどの程度理解しているかを確認する。例えば、月経不順を主訴として開始された患者であれば、月経周期、経血量、月経痛、冷え、疲労感、めまい、浮腫などを継続評価の項目にできる。更年期障害に関連して処方された場合は、頭重、頭痛、めまい、肩こり、動悸、睡眠、日常生活への支障を確認する。主観的症状だけでなく、必要に応じて貧血の評価、婦人科疾患、内分泌疾患、循環器疾患、腎疾患などの原疾患評価を並行させる姿勢が重要である。
説明時は、「当帰芍薬散は症状名だけではなく、冷えや疲れやすさなどを含めた体質・症状に合わせて選ばれている漢方薬です」と伝えると、証を考慮する意義が伝わりやすい。一方で、「体質に合えば必ず効く」「生理の不調はすべて漢方だけでよい」といった過度な期待を避け、改善が乏しいときは処方変更や検査、専門診療が必要になる可能性も説明する。
また、当帰芍薬散を服用する患者では、月経関連症状を相談しにくい背景があることにも配慮したい。妊娠希望の有無、不妊治療の状況、妊娠可能性、産後の経過、更年期の症状、服薬負担、顆粒の味やにおいによるアドヒアランス低下を、非判断的に確認する。顆粒剤の服用が困難な場合でも、自己中断ではなく、服用方法、服用タイミング、剤形変更の可否を処方医・薬剤師と相談するよう促す。
当帰芍薬散は、適応となる患者像と経過観察を明確にしたときに、臨床で活用しやすい漢方製剤である。一方、貧血、浮腫、めまい、動悸、月経異常といった訴えには見逃してはならない器質的疾患が含まれ得る。漢方23番を処方・調剤・服薬支援する際は、番号や一般的なイメージだけに依存せず、承認効能、証、構成生薬の重複、副作用、患者背景、治療反応を一体として確認することが、安全かつ適切な使用につながる。


【第2類医薬品】命の母A 840錠