

「花粉症葛根湯」という検索では、手元にある葛根湯で鼻水やくしゃみを抑えられるか、抗ヒスタミン薬の代わりに使えるかという疑問が想定されます。医療従事者が説明する際は、適応と有効性の根拠を分けることが重要です。葛根湯には鼻炎を効能・効果に含む一般用医薬品がありますが、その記載だけで、あらゆる花粉症患者に有効であることや標準治療と同等の効果があることまで示されるわけではありません。
参考)https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/ResultDataSetPDF/340008_J0601008847_05_01/A
例えば、一般用医薬品の「神農葛根湯エキス顆粒」は、「体力中等度以上のものの次の諸症」として、感冒の初期、鼻かぜ、鼻炎、頭痛、肩こりなどを効能・効果に記載しています。一方、確認した「ツムラ葛根湯エキス顆粒(医療用)」の添付文書では、自然発汗がなく、頭痛、発熱、悪寒、肩こりなどを伴う比較的体力のある人の感冒、鼻かぜなどが対象です。同じ葛根湯という処方名でも、個々の製品の承認された効能・効果を確認する必要があります。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 葛根湯の一般用製品 | 鼻炎を効能・効果に含む製品がある。 | 神農葛根湯では体力中等度以上という条件がある。製品別に確認する。 |
| 葛根湯の医療用製品 | 確認したツムラ製品は、自然発汗がなく悪寒などを伴う比較的体力のある人の感冒、鼻かぜなどが対象。 | 花粉症への臨床効果を、鼻かぜの適応から推定しない。 |
| 小青竜湯 | 通年性鼻アレルギーに対する比較試験の報告がある。 | |
| 第2世代抗ヒスタミン薬 | 花粉症のくしゃみ・鼻漏型などで用いられる標準的な薬物療法。 | |
| 鼻噴霧用ステロイド薬 | 花粉症の重症度・病型に応じて単剤または併用で使用する。 |
漢方医学でいう「証」は、体質と症状を含めた評価です。葛根湯の医療用添付文書も、患者の証を考慮した投与と、改善が認められない場合の継続投与の回避を求めています。比較的体力があること、自然発汗がないこと、悪寒や肩こりなどの併存症状は確認事項になりますが、それらの所見だけで花粉症への効果を保証することはできません。
葛根湯の安全性を考えるうえで、麻黄と甘草は重要な確認対象です。葛根湯は、葛根、麻黄、大棗、桂皮、芍薬、甘草、生姜から構成される処方で、確認した一般用製品の添付文書にもこれらの生薬が記載されています。自然由来の成分であっても、薬理作用と副作用を持つ医薬品であることを患者に説明します。
医療用葛根湯の添付文書では、麻黄含有製剤、エフェドリン類含有製剤、モノアミン酸化酵素阻害剤、甲状腺製剤、カテコールアミン製剤、キサンチン系製剤などが併用注意として挙げられています。交感神経刺激作用が増強され、不眠、発汗過多、頻脈、動悸、精神興奮などが起こりやすくなるためです。小青竜湯や麻黄湯との併用も、麻黄の重複という観点から確認する必要があります。
花粉症治療で特に見落としたくないのが、フェキソフェナジン塩酸塩・塩酸プソイドエフェドリン配合剤です。葛根湯の添付文書では、この配合剤も併用注意に含まれます。「抗ヒスタミン薬を飲んでいる」という患者の申告だけでは、血管収縮成分の有無まで把握できません。フェキソフェナジン単剤なのか、プソイドエフェドリンを含む配合剤なのか、製品名と成分を確認することが大切です。
甘草については、偽アルドステロン症と、それに伴う低カリウム血症・ミオパチーに注意します。添付文書に記載される所見は、血圧上昇、浮腫、体重増加、脱力感、四肢痙攣・麻痺などです。他の甘草含有漢方製剤やグリチルリチン酸含有製剤との併用ではリスクが高まるため、血圧や血清カリウム値への留意が求められます。
肝機能障害・黄疸も重大な副作用として記載されています。異常が認められた場合は漫然と服用を続けず、投与中止を含む適切な対応が必要です。患者への説明では、動悸や不眠だけでなく、むくみ、筋力低下、黄疸、褐色尿などの具体的な変化を示すと、相談すべき症状を理解しやすくなります。
KEGG MEDICUS:ツムラ葛根湯エキス顆粒(医療用)の添付文書情報
葛根湯の服用量は、製品ごとの用法・用量を確認して説明します。確認したツムラ葛根湯エキス顆粒(医療用)では、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に経口投与し、年齢・体重・症状により適宜増減するとされています。一方、一般用の神農葛根湯エキス顆粒は、成人では1回1包、1日3回という記載です。医療用と一般用を同じ「1包」として扱わず、エキス量や製剤量、服用回数を確認します。
妊娠中の患者について、医療用添付文書では、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与するとされています。授乳中も、治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮した判断が必要です。小児では当該医療用製品の臨床試験が実施されておらず、高齢者では減量するなどの注意が求められます。「漢方薬なので妊婦や子どもにも安全」と一括して説明してはいけません。
医療用葛根湯の添付文書は、症状・所見の改善が認められない場合に継続投与を避けるよう求めています。また、確認した一般用製品には、一定期間服用しても改善しない場合の中止・相談と、長期連用時の相談が記載されています。ただし、その期間を花粉症に対する一律の治療期間として読み替えるべきではありません。生活への支障が残る患者では、原因と病型を再評価し、必要な標準治療を検討します。