

| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 排尿痛・頻尿・尿意切迫感 | 症状が残る間は性行為を控える | 「軽くなった」と「なくなった」を区別して確認する |
| 下腹部の痛み・違和感 | 持続している場合は再開を見合わせる | 強い痛みがある場合は受診を優先する |
| 発熱・悪寒・背部痛・嘔吐 | 性行為の再開より速やかな診察を優先する | 腎盂腎炎などの可能性を評価する |
| 抗菌薬による治療経過 | 処方どおりに使用し、改善不十分なら再相談する | 再開のために薬を中断・延長・変更しない |
| 妊娠中・男性・再発を繰り返す場合 | 一般的な自己判断の目安だけで済ませない | 背景疾患や個別の検査・治療の必要性を確認する |
| 性感染症が疑われる場合 | 原因に応じた性行為の制限とパートナー対応を行う | 通常の膀胱炎とは再開条件が異なる |
治療後も排尿痛や頻尿が続く患者では、「まだ膀胱炎が治っていない」とだけ考えず、再診につなげることが大切です。患者が「性行為をしてもよいか」と尋ねる背景には、治療の効果への不安や、パートナーへの感染を心配する気持ちが含まれることもあります。医療者は、症状の有無と感染症の種類を整理し、それぞれの疑問を分けて説明するとよいでしょう。
排尿時の痛みは膀胱炎だけに特有の症状ではありません。尿道炎や子宮頸管炎などでもみられるため、性行為に関連して症状が出た患者では、尿道からの分泌物、おりものの変化、不正出血、パートナーの症状、性感染症への曝露の可能性などを確認します。患者が「膀胱炎」と自己判断していても、医療者側まで診断を固定しないことが重要です。
参考)Urethritis and Cervicitis - ST…
米国CDCの性感染症診療ガイドラインでは、非淋菌性尿道炎や子宮頸管炎について、本人とパートナーの治療が済み、症状が消失するまで性行為を控えるよう説明しています。具体的には、7日間投与の治療ではその治療を完了するまで、単回投与の治療では投与後7日間という条件が示されています。ただし、実際の対応は病原体と治療法によって確認する必要があり、この「7日間」を通常の細菌性膀胱炎にそのまま転用してはいけません。
患者への説明では、「膀胱炎なら全員が7日後に再開できるのではなく、性感染症の場合には別の待機条件がある」と区別すると誤解を減らせます。また、本人の症状が消えても、治療が必要なパートナーの対応が終わっていなければ再感染につながり得ます。性感染症が疑われる段階では、検査結果や治療方針を確認するまでは性行為を控えるよう案内し、原因が判明した後に再開条件を具体化します。
性行為のたびに膀胱炎を繰り返す患者では、その都度「何日休めばよいか」だけを説明しても、困りごとの解決につながりません。成人の再発性尿路感染症は、一般に過去6か月で2回以上、または過去12か月で3回以上を目安に定義されます。発症の時期、性行為との関連、過去の尿培養・薬剤感受性の結果、抗菌薬の使用歴などを整理し、再発予防の必要性を検討します。
参考)Recommendations
NICEは、再発性尿路感染症に対して、行動・衛生面の対策を説明し、適切な対象では腟エストロゲンなども考慮したうえで、それらが不十分または適さない場合に単回の抗菌薬予防投与を検討するとしています。性行為など明確な誘因がある場合に用いる選択肢ですが、現在の尿路感染症が十分に治療されていることが前提です。過去の培養結果、耐性菌の可能性、副作用、本人の希望も含めて判断します。
これは「性行為後は誰でも抗菌薬を飲めばよい」という意味ではありません。患者が以前の残薬を自己判断で服用したり、パートナーの薬を使用したりすることは避け、予防投与を行う場合は薬剤、使用のタイミング、再評価の時期を処方医と明確にします。NICEは、単回予防投与を開始する際に使用法や副作用を説明し、6か月以内の見直しを案内するよう推奨しています。
閉経前後の患者では、腟の乾燥などの症状も併せて確認します。NICEは、該当する患者の再発性尿路感染症に対し、生活上の対策だけでは不十分または適さない場合に腟エストロゲンを検討することを推奨しています。ただし、海外の推奨を国内の処方へそのまま置き換えず、国内で使用可能な製剤、適応、患者の既往歴などを確認する必要があります。