

ビタミンeを多く含む食品には、アーモンドなどの種実類、ひまわり油などの植物油、魚介類、かぼちゃや赤ピーマンなどの野菜があります。医療従事者が患者に説明する際は、含有量のランキングを示すだけでなく、食事全体の中で無理なく取り入れられる食品を選ぶ視点が重要です。とくに油やナッツは少量で摂取量を確保しやすい一方、日常的に食べる量を考慮しなければ、実際の栄養摂取を適切に評価できません。
参考)ビタミンEの働きと1日の摂取量
ビタミンEは脂溶性ビタミンで、天然にはトコフェロールとトコトリエノールがそれぞれ4種類、計8種類存在します。体内では肝臓のα-トコフェロール輸送タンパク質によってα-トコフェロールが選択的に保持されます。日本人の食事摂取基準でもα-トコフェロールを対象に基準値が設定されているため、食品の比較ではα-トコフェロールの含有量をそろえて確認することが基本です。
主な生理的役割は、細胞膜などに存在する脂質を酸化障害から守ることです。ただし、抗酸化作用という生物学的な働きと、サプリメントによる疾病予防効果は区別しなければなりません。「抗酸化作用があるから、摂取量を増やすほど動脈硬化やがんを予防できる」という説明は適切ではありません。ビタミンEサプリメントの常用による心血管疾患の予防効果は、臨床試験で一貫して示されていません。
参考)厚生労働省eJIM
また、食品成分表の値は可食部100g当たりの標準的な成分値です。実際の摂取量は食べた重量から換算します。「乾」「いり」「生」「ゆで」などの状態が違えば比較する食品項目も異なるため、患者の食事記録に対応する項目を選ぶ必要があります。成分値と食品の状態をセットで示すことが、記事や栄養指導資料の再現性につながります。
以下は、長寿科学振興財団「健康長寿ネット」に掲載された食品成分値を基に、日常の食事に取り入れやすい食品を比較したものです。一食量は本記事で設定した比較用の重量であり、すべての人に推奨する摂取量ではありません。一食当たりの量は「100g当たりの含有量×可食部重量÷100」で算出しています。
| 食品・状態 | α-トコフェロール量/可食部100g | 比較用の一食量と含有量 |
|---|---|---|
| アーモンド・乾 | 30.0mg | 15gで4.5mg |
| ひまわり油 | 39.0mg | 4gで約1.6mg |
| オリーブ油 | 7.4mg | 4gで約0.3mg |
| らっかせい・乾・大粒種 | 11.0mg | 15gで約1.7mg |
| にじます・海面養殖・皮つき・生 | 5.5mg | 80gで4.4mg |
| めかじき・生 | 4.4mg | 80gで約3.5mg |
| モロヘイヤ・茎葉・生 | 6.5mg | 50gで約3.3mg |
| 西洋かぼちゃ・果実・生 | 4.9mg | 80gで約3.9mg |
| 赤ピーマン・果実・生 | 4.3mg | 50gで約2.2mg |
表の100g当たりの値を見ると、植物油やアーモンドが高いことが分かります。ただし、油を100g摂取することを想定した比較は、実際の献立づくりには向きません。少量の油、適量の種実類、主菜になる魚、日々の副菜を組み合わせ、一日全体でどの程度摂取できるかを考えることが実用的です。
同じ食品群でも含有量は一様ではありません。例えば、掲載値ではアーモンド・乾が100g当たり30.0mgである一方、くるみ・いりは1.2mgです。植物油についても、ひまわり油は39.0mg、オリーブ油は7.4mg、ごま油は0.4mgと差があります。「ナッツならどれでも同じ」「植物油はすべてビタミンEが豊富」と一括りにせず、食品名と種類を確認して説明しましょう。
なお、表の魚と野菜は生の状態の成分値です。例えば「生のかぼちゃ80g」の値を、そのまま「ゆでたかぼちゃ80g」の値として扱うことはできません。調理後の食事記録を評価する場合は、対応する調理済み食品の成分値を使います。生の材料重量を使った概算と、食べた料理からの推計を区別して記録すると、患者への説明でも混乱を防げます。
日本人への栄養指導では、「日本人の食事摂取基準2025年版」に基づく目安量を用います。成人男性は18~64歳で6.5mg/日、65~74歳で7.5mg/日、75歳以上で7.0mg/日です。成人女性は18~29歳で5.0mg/日、30~64歳で6.0mg/日、65~74歳で7.0mg/日、75歳以上で6.0mg/日とされています。
| 年齢 | 男性の目安量 | 女性の目安量 |
|---|---|---|
| 18~29歳 | 6.5mg/日 | 5.0mg/日 |
| 30~49歳 | 6.5mg/日 | 6.0mg/日 |
| 50~64歳 | 6.5mg/日 | 6.0mg/日 |
| 65~74歳 | 7.5mg/日 | 7.0mg/日 |
| 75歳以上 | 7.0mg/日 | 6.0mg/日 |
ここで重要なのは、目安量は「これを下回ったら欠乏症になる」という診断の境界値ではないことです。目安量以上を習慣的に摂取していれば不足のリスクは低いと考えられますが、ある一日の摂取量が目安量に届かなかったことだけで不足とは判断できません。食事記録を使う場合も、単日の数値だけで結論を出さず、普段の食品選択や摂取の継続性と合わせて評価します。
海外の解説との数値の違いにも注意が必要です。厚生労働省eJIMが紹介する米国の資料では、14歳以上の推奨量は15mg/日ですが、これは米国の基準です。同サイトにも日本人については日本の食事摂取基準を参照するよう明記されています。日本の「目安量」と米国の「推奨量」は指標も異なるため、数値だけを並べて、日本人が一律に不足していると説明することは避けます。
ビタミンEは脂質とともに消化管から吸収されます。そのため、野菜だけを極端な無脂肪食として摂取するより、食事全体で適量の脂質を含む構成を考えることが合理的です。ただし、「吸収を高めるために油を大量に追加する」という意味ではありません。魚や種実類なども含め、普段の食事にどのような脂質源があるかを確認したうえで調整します。
具体的な組み合わせを説明する際は、例えばアーモンド・乾10gで3.0mg、赤ピーマン・生50gで約2.2mg、ひまわり油4gで約1.6mgとなり、これらの材料に含まれるα-トコフェロールは合計約6.8mgと概算できます。これは成分表から計算した材料段階の量であり、調理による変化や皿・調理器具に残る油まで反映した実測摂取量ではありません。計算例と実際の吸収量を混同しないことが重要です。
献立の提案では、「ビタミンEの多い食品を追加する」だけでなく、「既存の食品とどう置き換えるか」を考えます。例えば、間食の一部を適量のアーモンドにする、いつもの副菜に赤ピーマンを使う、魚の種類を変えるなどです。食品を追加する場合は、ビタミンEだけでなく、一日に必要なエネルギーの範囲に収まるかという食事全体の評価も欠かせません。
また、100g当たりの含有量が高くても、実際には少量しか使わない食品があります。しその葉・生は100g当たり3.9mgですが、薬味として使う量での寄与は限定的です。一方、一品としてまとまった量を食べる魚や野菜は、成分濃度だけでは見えにくい摂取源になります。患者に食品を提案するときは「何mg含むか」に加えて、「普段どのくらい食べるか」「どの料理に使えるか」まで具体化すると、行動に結び付けやすくなります。
健康な人で明らかなビタミンE欠乏症が起こることはまれですが、脂肪吸収障害のある患者では注意が必要です。胆汁の分泌障害や、クローン病などに伴う脂肪吸収不良では、食品を摂取していても十分に吸収できない場合があります。欠乏症では末梢神経障害、運動失調、骨格筋の障害、網膜障害などがみられることがあり、食品の追加だけでは対応できないケースもあります。
こうした患者では、「食べている量」と「体内で利用できている量」が一致しない可能性を念頭に置きます。食事歴に加えて原疾患や症状を確認し、必要に応じて医師による評価と管理栄養士による栄養管理につなげます。吸収障害や遺伝性疾患に対する治療的な補充は、健康な人への一般的な食品選択の助言とは別に扱う必要があります。
安全性についても、通常の食品と高用量サプリメントを区別します。食品を介したビタミンE摂取による有害影響は、これまでの研究では見つかっていません。一方、高用量のサプリメントでは血液凝固への影響が問題となり、臨床試験では出血性脳卒中のリスク増加が報告されています。「食品に含まれる栄養素だから、濃縮したサプリメントも同じように安全」とは説明できません。
日本人の食事摂取基準2025年版における成人の耐容上限量は、男性が800mg/日、女性は18~29歳と75歳以上が650mg/日、30~74歳が700mg/日です。ただし、耐容上限量は摂取目標ではなく、上限未満ならすべての人に長期使用の安全性が保証されるという意味でもありません。高用量補充による有害事象の報告や服薬状況を踏まえ、必要性を個別に判断します。
とくにワルファリンなどの抗凝固薬や抗血小板薬を使用している患者では、高用量ビタミンEの併用によって出血リスクが高まる可能性があります。問診では単独のビタミンE製品だけでなく、マルチビタミンや美容目的の複合サプリメントも確認し、製品名、表示単位、一日量を把握します。IU表示は天然型と合成型でmgへの換算が異なるため、数値だけで比較しないことも重要です。
厚生労働省eJIM「ビタミンE:医療関係者向け情報」
患者への説明では、食品から日常的に摂取する意義と、病気の予防を期待して高用量サプリメントを使うことを切り分けます。ビタミンeを多く含む食品の指導は、特定の食品や成分の大量摂取を勧めるためではありません。一食量で比較した供給源を示し、日本の目安量、患者の食事パターン、原疾患、服薬状況を結び付けて、継続できる食事に整えることが中心になります。