1歳6ヶ月食事の量と進め方|医療者向け支援ガイド

1歳6ヶ月食事の量と進め方|医療者向け支援ガイド

1歳6ヶ月の食事について、離乳完了期の量や硬さ、献立、補食、鉄不足と窒息の予防、食べない場合の評価を公的資料に基づき解説します。医療従事者は発育と摂食機能をどう確認し、保護者への具体的な支援につなげればよいでしょうか?

1歳6ヶ月食事の基礎知識と核心ガイド

1歳6ヶ月の食事を支える量と安全
食事量は発育と合わせて評価する

一食の目安量だけで不足と判断せず、身長・体重の推移と食べ方を確認し、その子に合う量を考えます。

三回の食事と補食で栄養を補う

主食・主菜・副菜を組み合わせ、必要に応じて一日一〜二回の補食を設け、食事で足りない栄養を補います。

食材の形と食べる姿勢で事故を防ぐ

硬い豆やナッツを避け、丸い食品は切って形を変えます。座って食べる環境と見守りも欠かせません。


1歳6ヶ月の食事は離乳完了から幼児食へ移る時期


1歳6ヶ月の食事支援では、月齢だけで「大人と同じものが食べられる」と判断しないことが出発点です。「授乳・離乳の支援ガイド」は、離乳の完了を、形のある食物をかみつぶせるようになり、エネルギーや栄養素の大部分を母乳・育児用ミルク以外の食物から摂取できる状態としています。その時期の目安は生後12〜18か月頃ですが、食欲、摂食行動、成長・発達には個人差があるため、画一的に進めないことが重要です。


参考)https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/6790a829-15c7-49d3-9156-9e40e8d9c20c/b0946e59/20230401_policies_boshihoken_junyuu_01.pdf
ここで医療従事者が保護者と共有したいのが、個別性です。「1歳6ヶ月になったから普通食へ切り替える」のではなく、提供された食品を口に取り込み、かみつぶして飲み込めているかを確認します。食材の種類や量を増やすことと、硬さや大きさを進めることは、子どもの様子を観察しながら調整します。離乳食の段階名は支援の目安であり、子どもを評価する合否基準ではありません。


また、離乳完了は断乳・卒乳と同義ではありません。母乳や育児用ミルクを飲んでいても、食事から栄養の大部分を摂れていれば離乳完了の状態に当てはまります。授乳を終える時期は一律に決めず、食事の進み具合、子どもと保護者の状態、家庭の考え方を踏まえて支援します。「まだ授乳しているから食事が進まない」と単純化せず、授乳と食事の実際を確認する姿勢が必要です。


身体発育の評価では、母子健康手帳の成長曲線に身長・体重を記入し、それまでの経過を見ます。ある日の摂取量や同年齢児との比較だけで栄養不足と決めつけず、その子なりの発育パターンを確認します。一方、体重増加がみられず成長曲線から外れていく場合や、急速な体重増加がある場合は、医師に相談し、その後の変化も含めて評価します。


こども家庭庁「授乳や離乳について」


食事量と硬さの目安を栄養評価にどう生かすか

1歳6ヶ月の食事量を説明する際には、離乳完了期の一回量が参考になります。ただし、これは毎食必ず完食させる量ではありません。藤沢市が公表する離乳完了期の目安では、主食は軟飯90g〜ごはん80g、野菜・果物は40〜50g、主菜は魚または肉15〜20g、豆腐なら50〜55gなどとされています。主菜の数字は、それぞれをすべて足して食べさせる意味ではありません。


参考)離乳完了期(1歳~1歳6カ月頃)のポイント|藤沢市
















































参考)日本人の食事摂取基準



項目 基準・内容 備考
食事回数 一日三回を基本とする 生活リズムを整えながら進める。
補食 必要に応じて一日一〜二回 三回の食事とは別に、不足する栄養を補う。
主食の一回量 軟飯90g〜ごはん80g 調理後の食べる状態の目安。発達に合わせて選ぶ。
野菜・果物の一回量 合計40〜50g 複数の食材を使う場合も、合計量として考える。
魚・肉の一回量 いずれか15〜20g 複数の主菜食材を使う場合は、組み合わせて調整する。
豆腐の一回量 50〜55g 魚・肉などに代わる主菜の選択肢として扱う。
推定エネルギー必要量 1〜2歳の男児950kcal/日、女児900kcal/日 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の参考値であり、個人への固定的な処方量ではない。

エネルギーの参考値は、一日の食事全体を考えるために使います。一食ごとに厳密に三等分して摂らせるものではなく、補食や乳汁も含めた摂取状況と、実際の発育経過を合わせて判断します。保護者に細かなカロリー計算だけを求めるより、何を、どの程度、どのように食べているかを把握することが、具体的な支援につながります。


硬さは、離乳完了期には歯ぐきでかめる程度が目安です。例えば、軟らかい肉だんご程度の硬さが参考になります。ただし、食品ごとの繊維、ぱさつき、まとまりやすさも異なるため、月齢表示や見た目の大きさだけでは判断できません。食品を十分に軟らかく加熱し、必要に応じてとろみをつけるなど、食べやすく調理します。市販品でも、子どもの食べ方を見て硬さが合っているか確認します。


藤沢市「離乳完了期(1歳~1歳6カ月頃)のポイント」
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書


主食・主菜・副菜と補食を組み合わせる献立の考え方

献立は、穀類などの主食、魚・肉・卵・大豆製品などを使う主菜、野菜を中心とする副菜を組み合わせると整理しやすくなります。家族の料理を活用する場合は、調味前に取り分ける、子どもが食べやすい硬さにする、薄味で仕上げるといった工夫が基本です。「大人と同じ食卓を囲むこと」と「大人と同じ味付け・形状で出すこと」は分けて考えます。



  • 朝食の組み合わせ例:軟らかいごはん、十分に加熱した卵料理、軟らかく煮た野菜。主食・主菜・副菜をそろえる考え方を具体化した例で、食材は既に食べられるものを使い、量や形状を調整します。


  • 昼食の組み合わせ例:ごはん、骨を除いて食べやすくした魚、野菜の煮物。魚の身が食べにくい場合は、子どもの状態に応じて水分やとろみを補うなど、飲み込みやすい調理を考えます。


  • 夕食の組み合わせ例:ごはん、豆腐とひき肉を使った軟らかい料理、加熱した野菜。主菜に複数の食品を使う場合は、一回量の目安をそれぞれ満量ずつ重ねず、組み合わせて調整します。


  • 補食の考え方:必要に応じて一日一〜二回設けます。食事とは無関係な楽しみだけでなく、三回の食事で十分に摂れないエネルギーや栄養素を補う機会として位置付けます。

鉄の供給源を食事に取り入れることも重要です。「授乳・離乳の支援ガイド」は、離乳の進行に合わせて鉄やビタミンDの供給源となる食品を意識的に取り入れるよう示しています。肉や魚などを食べやすく調理し、主食に偏らない献立を提案します。食べる量が少ない子どもには、総量を増やすことだけでなく、実際に食べられる食品の組み合わせも検討します。


牛乳は飲用として一歳を過ぎてから与えることが望ましいとされていますが、飲めるようになったからといって、食事内容の評価が不要になるわけではありません。また、フォローアップミルクは、離乳が順調に進んでいる子ども全員に必須の食品ではありません。離乳が進まず鉄欠乏のリスクが高い場合や、適当な体重増加がみられない場合には、医師に相談したうえで、必要に応じた活用を検討します。


家庭での実行可能性にも目を向けます。毎食すべてを手作りすることを支援の条件にせず、市販のベビーフードや幼児向け食品も選択肢に含めます。その際は、主食中心の商品に野菜や主菜を足すなど、製品の内容に合わせた組み合わせが必要です。表示を確認し、食材の偏り、硬さ、温度、開封後の取扱いにも注意するよう伝えます。



食べない・偏るときは摂取量だけでなく背景を評価する

「1歳6ヶ月なのに食べない」という相談では、まず保護者が何に困っているかを具体化します。いつから食べないのか、普段と比べてどの程度減ったのか、一部の食品だけなのか、食事全体なのかを確認します。東京都こども医療ガイドも、食欲不振の診察では、摂取量がいつもの半分なのか、ほとんど摂れないのかなどを具体的に把握することを挙げています。


参考)東京都こども医療ガイド
次に、食事の内容だけでなく、授乳や補食を含む生活の流れ、子どもの食欲、食べ方、発達状況、家庭の食習慣を合わせて確認します。支援ガイドは、子どもの個性や家庭の状況に応じた無理のない進め方を重視しています。そのため、「食べないなら量を減らす」「食べるまで待つ」といった一つの方法を全員に当てはめず、どの場面で困っているかを整理して対応します。


手づかみ食べや食具の使用についても、上手にできるかだけを評価しません。手づかみ食べは、食品の硬さや触感を知り、自分の意思で食べる行動につながる経験です。離乳完了期には、前歯でかみ取る練習を通して一口量を覚え、食具を使って自分で食べる準備を進めます。汚れや片付けが負担になっている場合は、その大変さを受け止めたうえで、家庭で続けられる方法を一緒に考えます。


保護者への説明では、完食や食品数だけを目標にせず、食べる楽しさと安心できる親子関係を支えることが重要です。家族と食卓を囲む、味や舌ざわりを経験する、自分で食べようとする行動を見守るといった過程にも意味があります。無理をさせないという基本を共有し、保護者の不安や負担を軽減できる具体策を選びます。


一方、長く続く食欲不振を、年齢による食べむらだけで説明してはいけません。体重が増えず成長曲線から外れていく場合は、健診の時期を待たずに医師へ相談します。慢性的な食欲不振では、母子健康手帳を持参して身長・体重の伸びを確認することが有用です。水分も摂れない、ぐったりしているなどの状態がある場合は、食事の工夫だけで経過をみず、速やかな医療評価につなげます。


東京都こども医療ガイド「食欲がない」


窒息と食物アレルギーを予防する安全な食事支援

1歳6ヶ月の食事では、栄養の確保と同時に窒息予防を具体的に伝える必要があります。消費者庁は、硬くてかみ砕く必要がある豆やナッツ類を五歳以下の子どもに食べさせないよう注意喚起しています。小さく砕いた場合でも、気管に入り込むと肺炎や気管支炎を起こすリスクがあります。「細かくすればよい」と説明せず、対象となる食品を避けることを明確に伝えます。


参考)食品による子どもの窒息・誤嚥(ごえん)事故に注意!—気管支炎…
ミニトマトやぶどうなど、丸く滑りやすい食品は、丸ごと出さないことが原則です。四等分する、必要に応じて皮を取り除く、軟らかく調理するなど、形と食べやすさを変えます。こども家庭庁は、もち・白玉団子のように粘着性が高い食品や、いか・こんにゃくのように弾力がありかみ切りにくい食品についても、〇〜五歳では使用を避けるよう示しています。切ったという事実だけで安全と判断せず、食品の性質も確認します。


食べる場面の整備も重要です。座って姿勢を整え、食べることに集中できるようにします。口に食べ物を入れたまま走る、遊ぶ、笑う、泣くなどの状況は、窒息・誤嚥のリスクを高めます。泣いている子どもをあやすために食べ物を与えることや、眠そうな状態で食事をさせることも避けます。家庭だけでなく、祖父母宅や保育施設など、食事に関わる人と注意事項を共有することが大切です。


消費者庁「食品による子どもの窒息・誤嚥事故に注意!」
こども家庭庁「窒息・誤飲事故」
食物アレルギーについては、発症を心配して特定の食品の摂取開始を遅らせても、予防効果があるという科学的根拠はないとされています。ただし、既に症状が出た食品を家庭の判断で再び食べさせることとは別の話です。疑わしい症状がある場合や、既に診断を受けている場合は、医師の診断・指示に基づいて食事を進めます。


卵、牛乳、小麦などを除去する必要がある場合には、禁止事項だけを伝えるのではなく、必要な栄養をどの食品から補うかまで具体化します。1歳6ヶ月の食事支援の目的は、目安量への到達や食品の制限そのものではありません。発育、摂食機能、安全性、家庭の負担を合わせて評価し、医師、看護職、管理栄養士などが基本情報を共有して、子どもと保護者が無理なく食事を続けられるよう支えることです。





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