


サスタノンは、テストステロン補充療法に使用される注射剤の製品名です。本記事では、英国の製品情報に掲載された「Sustanon 250」を中心に解説します。1mLのアンプルに4種類のテストステロンエステルを含む油性製剤で、英国では、臨床症状と生化学的検査によってテストステロン欠乏が確認された男性性腺機能低下症を適応としています。単なる疲労回復や筋肉増強を目的とする薬剤ではありません。
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配合成分は、テストステロンプロピオン酸エステル30mg、テストステロンフェニルプロピオン酸エステル60mg、テストステロンイソカプロン酸エステル60mg、テストステロンデカン酸エステル100mgです。エステルとしての合計量は250mgですが、テストステロンそのものに換算した含有量は176mgです。「250」という製品表示を、遊離のテストステロン250mgと解釈しないことが重要です。
添加剤には精製落花生油とベンジルアルコールが含まれます。英国の製品情報では、落花生または大豆へのアレルギーがある患者には禁忌とされています。薬剤アレルギーの確認では有効成分だけでなく、油性基剤まで問診する必要があります。ベンジルアルコールの含有量は1mLあたり100mgであり、小児への使用についても成人とは別に安全性を検討しなければなりません。
日本国内の医療機関による解説では、サスタノンは国内未承認薬とされています。ただし、これは国内医療機関の公開情報に基づく説明であり、本記事で国内の承認状況を網羅的に確認したものではありません。海外の承認と日本の承認を混同せず、実際の導入時には最新の承認状況、入手経路、製品の同一性、患者への説明内容を個別に確認することが重要です。
参考)医師が解説!サスタノン注射とは?期待できる効果や副作用を解説…
以下に示す用量や禁忌は、主として英国の製品情報に基づきます。海外製品情報の内容を、そのまま日本国内の承認用法・用量として扱うことはできません。医療従事者向けの記事としても、製品固有の情報と、テストステロン補充療法全般に関するガイドラインの推奨を区別して読む必要があります。
サスタノンに含まれる4種類のエステルは作用時間が異なり、全身循環に入ると加水分解されてテストステロンになります。複数のエステルを配合していることは、投与期間中の血中濃度が完全に一定になることを意味しません。英国の製品情報では、単回投与後24~48時間で総テストステロン濃度がピークに達し、その値は約70nmol/L、約21日後には男性の正常範囲の下限付近へ戻るとされています。
このため、投与翌日の検査値と次回投与直前の検査値は、同じ条件のデータとして比較できません。検査依頼や診療録には、採血日時だけでなく、直近の投与日、投与量、投与間隔を記録することが重要です。例えば、投与直後の高値だけで過量と判断したり、投与間隔の終盤に測定した低値だけで増量を決めたりするのではなく、症状の推移と採血条件を合わせて評価します。
英国の製品情報では、成人に通常1mLを3週間ごとに投与することが示されていますが、用量は個々の患者の反応に応じて調整するとされています。投与経路は深部筋肉内注射です。これは製品情報の紹介であり、患者が自己判断で投与量や間隔を変更するための指示ではありません。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 製剤の含有量 | 4種類のエステルとして250mg/mL | テストステロン換算量は176mg/mL。 |
| 成人の通常用量 | 英国製品情報では1mLを3週間ごと | 個々の患者の反応に応じて調整する。 |
| 投与経路 | 深部筋肉内注射 | 油性製剤として、ゆっくり筋肉内に投与する。 |
| 単回投与後のピーク | 投与後24~48時間、約70nmol/L | 製品情報に記載された値であり、個人ごとの測定値を保証しない。 |
| 単回投与後の濃度推移 | 約21日で男性正常範囲の下限付近へ戻る | 投与間隔と採血時点を併記して解釈する。 |
| 採血結果の評価 | テストステロン値と臨床反応を確認 | 投与から採血までの時間を含めて判断する。 |
また、持続性の注射剤では、投与を中止しても作用や副作用をすぐに取り消すことはできません。副作用が疑われる場合は「次回投与を見合わせれば直ちに改善する」と説明せず、症状に応じた評価と継続観察が必要です。製品情報でも、製剤の性質上、薬剤中止によって副作用を速やかに逆転できないことが明記されています。
テストステロン補充療法の適応は、症状だけ、または単回の低い検査値だけで決めるものではありません。米国内分泌学会の2018年ガイドラインは、テストステロン欠乏に合致する症状・徴候と、明確かつ持続的な血中テストステロン低値の両方を確認して、男性性腺機能低下症を診断するよう推奨しています。早朝空腹時の総テストステロン測定を繰り返して確認し、必要に応じて遊離テストステロンも評価します。
参考)Testosterone Therapy for Hypog…
性欲低下や性機能の変化があっても、それだけでサスタノンの適応と断定することはできません。診断では正確な測定法と適切な基準範囲を用い、アンドロゲン欠乏を確認した後に原因を調べます。LHとFSHを測定すると、精巣に原因がある原発性性腺機能低下症と、視床下部・下垂体に原因がある続発性性腺機能低下症の鑑別に役立ちます。
治療によって、性腺機能低下症に伴うテストステロン欠乏症状、性欲・性機能、骨密度、除脂肪体重などの改善が期待されます。ただし、これらの効果を、ホルモン欠乏が確認されていない人の健康増進や若返りにそのまま当てはめることはできません。65歳以上の男性でも、低値があるという理由だけで一律に治療するのではなく、症状と反復測定結果を確認し、利益とリスクを個別に検討することが推奨されています。
2型糖尿病についても、テストステロン低値があることと、血糖改善を目的として補充療法を行うことは別問題です。米国内分泌学会のガイドラインは、低テストステロンを伴う2型糖尿病患者に対して、血糖コントロール改善を目的とするテストステロン治療を推奨していません。治療目的を明確にし、代謝面の変化だけを理由に適応を広げないことが重要です。
サスタノンで注意する有害事象には、ヘマトクリット・ヘモグロビンの上昇、多血症、体液貯留、血圧上昇、ざ瘡、女性化乳房、気分の変化、持続勃起症などがあります。英国の製品情報に記載された副作用の多くは頻度不明であり、一律に「まれ」「よく起こる」と説明するのは適切ではありません。患者の自覚症状と検査所見の両方で安全性を確認します。
製品情報上の禁忌は、既知または疑いのある前立腺がん・乳がん、妊娠、授乳、有効成分または添加剤への過敏症です。落花生・大豆アレルギーも含まれます。一方、重い心・肝・腎機能障害や虚血性心疾患などは、浮腫や心不全を含む重篤な合併症に注意すべき状態として記載されています。製品固有の禁忌と、慎重な監視を要する病態を区別して整理します。
さらに、米国内分泌学会のガイドラインは、未治療の重症閉塞性睡眠時無呼吸、重度の下部尿路症状、コントロール不良の心不全、過去6か月以内の心筋梗塞・脳卒中、血栓性素因などがある男性では、テストステロン治療の開始を推奨していません。これらはサスタノンだけに固有の注意事項ではなく、補充療法全般の適応判断に関係します。
注射時には、油性製剤による肺油性微小塞栓にも注意が必要です。英国の製品情報では、投与中または投与直後に咳、呼吸困難、胸痛、発汗、めまい、失神などが生じ得るとされています。そのため、規定された投与経路を守り、ゆっくり投与するとともに、注射中と直後に患者の状態を観察します。突然の呼吸症状を、単なる緊張や注射の痛みとして処理しないことが重要です。
相互作用では、クマリン系抗凝固薬の作用増強、インスリンや他の糖尿病治療薬の必要量の変化、ACTHまたは副腎皮質ステロイドとの併用による浮腫増強が記載されています。2026年2月に更新掲載された英国製品情報には、SGLT2阻害薬との併用で赤血球増加症のリスクが高まる可能性も示されています。併用患者ではヘマトクリットとヘモグロビンの監視が推奨されており、処方確認では糖尿病治療薬まで含めた薬剤一覧を確認します。
妊孕性については、アンドロゲン投与によって精子形成が抑制され、生殖能力が低下する可能性があります。「男性ホルモンを補充すれば精子も増える」という理解は誤りです。近い将来の挙児希望がある男性には、補充療法を開始する前に生殖機能を踏まえた専門的な評価が必要です。テストステロン欠乏症状の治療と、男性不妊の治療を同一視しないことが大切です。
治療開始前には、症状、テストステロン値、血算、血圧、併存疾患、併用薬、妊孕性の希望などを整理し、治療効果と副作用を追跡できる基準を作ります。英国の製品情報では、開始前、最初の12か月は3か月ごと、その後は年1回の頻度で、ヘマトクリット・ヘモグロビンおよび前立腺評価を検討するとしています。長期投与では肝機能と脂質も定期的に確認します。
前立腺評価の運用は、年齢、リスク、患者の意向も踏まえて決めます。米国内分泌学会のガイドラインでは、対象患者と前立腺がん評価の利益・不利益を話し合い、監視を選択した場合には治療前と開始後3~12か月でリスクを評価するとされています。製品情報の検査頻度とガイドラインの推奨には表現の違いがあるため、両者を機械的に混ぜず、患者ごとの検査計画として明文化します。
ヘマトクリットが54%を超えた場合、米国内分泌学会の2018年ガイドラインは、安全な水準に下がるまで治療を中断し、低酸素状態や睡眠時無呼吸を評価したうえで、減量して再開するよう示しています。54%は治療中の対応に関する閾値であり、「54%以下なら誰でも開始できる」という意味ではありません。開始前から高値の患者は、そもそもの適応判断と原因評価が必要です。
前立腺については、治療開始後12か月以内に、確認されたPSA値がベースラインより1.4ng/mLを超えて増加した場合、確認されたPSA値が4.0ng/mLを超えた場合、または直腸診で前立腺の異常が検出された場合に、泌尿器科への相談が推奨されています。PSA上昇のみで前立腺がんと診断するのではなく、再確認と専門評価につなげます。
治療効果の評価では、血中濃度だけでなく、当初の症状が改善したか、有害事象が生じていないか、予定どおり治療を継続できているかを確認します。例えば、投与前の性欲低下が変わらない一方で、ざ瘡や浮腫が増えている場合は、単に数値を上げる方向へ進めず、治療反応と利益・リスクを再評価する必要があります。ガイドラインも、開始後に反応、副作用、治療の実施状況を評価するよう推奨しています。
患者説明では、効果を保証できないこと、定期採血が必要なこと、注射剤の作用は中止しても直ちに消失しないこと、精子形成に影響する可能性があることを具体的に伝えます。呼吸困難、胸痛、失神、著しい浮腫、持続する勃起などが生じた際には、次回の定期受診を待たず医療機関へ連絡するよう説明します。筋肉増強目的の高用量使用や他のアナボリックステロイドとの併用には、重篤な心血管・肝・精神面の有害事象や依存のリスクがあり、医療上の補充療法とは明確に区別する必要があります。
サスタノンを理解するうえで重要なのは、「持続性の男性ホルモン注射」という説明だけで終わらせないことです。症状と反復検査による適応確認、製剤の成分・添加剤の把握、投与と採血の時間関係の記録、血算や前立腺評価を含む継続監視を一つの診療計画として組み合わせます。本記事の用量・管理情報は海外資料に基づく医療従事者向けの解説であり、個々の患者への処方判断を代替するものではありません。
【第2類医薬品】アレジオン20 48錠