

患者説明では、臨床的な「後遺症」と、補償制度上の「後遺障害」を区別します。前者は治療後に残る疼痛や機能低下などを指す説明として用いられますが、後者は対象となる制度の基準に沿って評価されるものです。障害等級表には鎖骨の著しい変形、関節の機能障害、局部の神経症状などが規定されており、「プレートが体内に残っていること」自体を独立した障害として扱う項目はありません。
参考)https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken03/index.html
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 通常のプレートで無症状 | 骨癒合が確認され、固定材料による問題がなければ温存を検討する | |
| 局所の疼痛・皮膚刺激 | 症状とプレートの位置、突出、圧痛との対応を確認する | |
| フックプレート | 骨癒合と肩峰下への機械的影響を評価し、除去時期を検討する | |
| 骨癒合が不十分 | 単純な抜釘ではなく、骨折部の安定性と治療方針を再評価する | |
| 症状が軽微・非特異的 | 改善の見込みと再手術のリスクを比較する |
参考)https://www.mhlw.go.jp/topics/2004/06/tp0625-2d.html
鎖骨の変形について、厚生労働省の障害認定基準は「裸体となったとき、変形が明らかにわかる程度」を著しい変形としています。X線写真で初めて発見できる程度の変形は、この基準には該当しません。そのため、画像上の変形を確認するだけでは不十分であり、外観との対応を診察で確認することが求められます。
また、プレートの輪郭が皮下に見えることと、骨折後の鎖骨自体に著しい変形があることは別の所見です。診療記録では「鎖骨部が突出している」とだけ記載するのではなく、骨変形を認めるのか、固定材料が触知されるのかを明確に分けます。これは、骨の変形を対象とする認定基準と、インプラントによる刺激症状を混同しないための整理です。
労災と自賠責は、類似する障害についても号番号が異なる場合があります。例えば肩関節を含む一上肢の一関節の著しい機能障害は、労災の障害等級表では10級9号です。また、局部の頑固な神経症状は労災では12級12号、局部の神経症状は14級9号とされています。診断書や説明資料を作成する際は、対象制度を明示し、別制度の番号をそのまま転記しないようにします。
プレート除去の有無と認定時期の関係では、固定材料が機能障害の原因になっているかが重要です。厚生労働省の労災障害認定基準は、金属釘などが機能障害の原因となる場合には、その除去を待って等級認定を行うとしています。一方、固定材料が機能障害の原因とならない場合は、創面治癒をもって認定して差し支えないとしています。これは労災の基準であり、他制度の個別事案に無条件で適用する説明は避けます。
このため、「プレートを除去しないと後遺障害は認定されない」「除去しなくても必ず認定される」という両極端な説明は不適切です。医療側では、温存する医学的理由、固定材料と症状の関係、抜釘による改善の見込み、今後の治療予定を整理します。固定材料の除去で改善が見込まれる機能障害を、除去後の経過を確認せずに永続的な障害と断定しないことが大切です。
厚生労働省:体幹骨・上肢・下肢の障害等級認定基準
厚生労働省:労災保険の障害等級表