

育児用ミルクとフォローアップミルクの最も重要な違いは、使用目的です。育児用ミルクは母乳の代わりとして乳児の栄養を支える食品であるのに対し、フォローアップミルクは離乳期以降に食事から不足しやすい栄養素を補うための食品です。名称やパッケージが似ていても、両者は同じ役割を持つ製品ではありません。
参考)https://www.cfa.go.jp/sites/default/files/node/basic_page/field_ref_resources/6790a829-15c7-49d3-9156-9e40e8d9c20c/b0946e59/20230401_policies_boshihoken_junyuu_01.pdf
本記事でいう育児用ミルクには、母乳の代替として用いる乳児用調製粉乳と乳児用調製液状乳が含まれます。厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」でも、この意味で育児用ミルクという言葉が使われ、フォローアップミルクは含めないと明記されています。医療従事者が保護者に説明するときは、最初に「どのミルクについて相談しているか」を確認する必要があります。
乳児用調製粉乳は、乳児の発育に必要な栄養条件を満たすように製造される母乳代替食品です。国が許可した製品には特別用途食品のマークが表示され、エネルギーやたんぱく質、脂質、各種ビタミン、ミネラルなどの成分組成に基準があります。したがって、「粉末状の乳製品なら何でも母乳の代わりになる」という理解は適切ではありません。
参考)https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_special_dietary_uses/assets/food_labeling_cms206_20230927_07.pdf
一方、フォローアップミルクは母乳代替食品ではなく、離乳食や幼児食と組み合わせて栄養を補う位置づけです。東京都こども医療ガイドでは、牛乳の代用品として開発され、牛乳に不足する鉄やビタミンを多く含むと説明されています。「育児用ミルクの上位版」「成長したら必ず進む次の段階」と捉えるのではなく、食事を補完する選択肢として理解することが重要です。
参考)東京都こども医療ガイド
保護者への説明では、「育児用ミルクは母乳の代わり、フォローアップミルクは食事の補助」と役割を分けると、両者の関係を伝えやすくなります。ただし、これは授乳を早期に終了するよう勧める意味ではありません。授乳の継続や終了は、子どもの離乳の進行、成長・発達、保護者の考えを踏まえて支援します。
栄養成分を比較すると、フォローアップミルクは一般に育児用ミルクより鉄やカルシウム、たんぱく質を多く含み、脂肪は少ないという特徴があります。ただし、特定の栄養素が多いことと、乳児の主な栄養源として適していることは別問題です。成分の一部だけを見て「こちらの方が栄養価が高い」と説明しないようにします。
参考)「乳児用調製粉乳」と「フォローアップミルク」の違いは何ですか…
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 育児用ミルクの目的 | 母乳の代替として乳児の栄養を支える | 乳児用調製粉乳・乳児用調製液状乳が該当する。 |
| フォローアップミルクの目的 | 離乳期以降の食事で不足しやすい栄養を補う | 母乳代替食品ではなく、離乳が順調なら必須ではない。 |
| 使用時期の考え方 | 育児用粉ミルクは出生後から、フォローアップミルクは離乳期以降に使用する | フォローアップミルクは必要に応じて生後9か月以降に検討し、実際には製品の対象月齢も確認する。 |
| 鉄・カルシウム | フォローアップミルクでは育児用ミルクより多い傾向がある | 具体的な含有量は製品表示で確認する。 |
| たんぱく質・脂肪 | フォローアップミルクは一般にたんぱく質が多く、脂肪が少ない | 乳児用ミルクとの単純な優劣ではなく、食事との組み合わせで評価する。 |
| 牛乳の飲用開始 | 鉄欠乏性貧血の予防の観点から1歳を過ぎてからが望ましい | 飲料として与えることと、離乳食の食材として利用することは区別する。 |
鉄の違いについて、2019年版「授乳・離乳の支援ガイド」の脚注には、フォローアップミルクの鉄含有量が6商品平均で粉末100g当たり9.0mg、育児用ミルクは平均6.5mgで、約1.4倍と記載されています。この数値はガイドに掲載された商品平均であり、現在販売されているすべての製品にそのまま当てはまる数値ではありません。
また、粉末100g当たりの値だけでは、子どもが実際に摂取する鉄の量は分かりません。製品ごとの標準調乳濃度と飲用量を確認し、調乳後100mL当たり、または1日分の摂取量という同じ条件にそろえて比較する必要があります。消費者庁の資料でも標準濃度でのエネルギー量と、エネルギー当たりの栄養成分が区別されており、比較の単位をそろえる視点が欠かせません。
日本乳業協会は、フォローアップミルクでは乳児用調製粉乳と異なり、銅と亜鉛が強化されていないと説明しています。ただし、「強化されていない」は「まったく含まれていない」と同じ意味ではありません。原材料由来の成分と添加・強化の有無を区別し、含有量は個々の製品表示で確認することが大切です。
「授乳・離乳の支援ガイド」は、フォローアップミルクについて、母乳代替食品ではなく、離乳が順調に進んでいる場合は摂取する必要はないとしています。一方、離乳が順調に進まず鉄欠乏のリスクが高い場合や、適当な体重増加が見られない場合には、医師に相談したうえで、必要に応じて活用することなどを検討するとしています。
このため、医療従事者の判断は「生後何か月になったか」だけでは完結しません。授乳・食事の内容、食べ方、成長の経過、保護者が困っている点を合わせて評価します。実際の相談では、次の情報を整理すると、栄養補助が必要なのか、まず離乳食の進め方を調整すべきなのかを検討しやすくなります。
母乳育児では、生後6か月の時点で鉄欠乏を生じやすいとの報告があるため、適切な時期に離乳を開始し、鉄の供給源となる食品を意識して取り入れることが重要です。ただし、母乳育児を行っているという理由だけで、すべての子どもにフォローアップミルクを勧めることにはなりません。まず食事の内容と離乳の進行を確認する、という順序が基本です。
また、体重増加が不十分な場合に「鉄を多く含むミルクへ変えればよい」と短絡しないことも重要です。ガイドは、成長曲線から外れていくような体重増加不良について医師への相談を求めています。フォローアップミルクの利用を決める前に、授乳量、食事量、子どもの状態を含めた評価につなげる必要があります。
例えば、生後10か月で食事の種類が広がり、成長曲線に沿って発育している子どもに対して、月齢だけを理由に変更を勧める必要はありません。一方、離乳食が進まず、鉄を含む食品をほとんど摂れない場合には、医師や管理栄養士と連携し、食事の工夫と栄養補助を組み合わせることを検討します。これは、ガイドの考え方を個別相談に当てはめた判断例です。
フォローアップミルクを使用する場合、東京都こども医療ガイドでは、離乳食が順調に進まず鉄不足のリスクが高い場合などに、生後9か月以降に取り入れると説明しています。ただし、「9か月以降に使用を検討できる」ことと、「9か月になったら全員が切り替える」ことは異なります。母乳や育児用ミルクをやめてフォローアップミルクに変更する必要はありません。
実際、国の支援ガイドでは、離乳後期にあたる生後9~11か月頃も、離乳食の後に母乳または育児用ミルクを与え、食事以外の授乳も続ける進め方が示されています。食事量がまだ十分ではなく乳汁への依存が大きい子どもに、母乳代替食品ではないフォローアップミルクを同じ役割で扱わないことが大切です。
開始時期は、一般的な目安だけでなく、使用する製品に表示された対象月齢・年齢や使用方法も確認します。育児用ミルクの缶に書かれた対象月齢と、フォローアップミルクの対象月齢が重なっていても、それは一律の変更時期を意味しません。医療従事者は、月齢表示と臨床的な必要性を分けて説明するとよいでしょう。
終了時期も、対象年齢の上限まで飲み続けることが必須という意味ではありません。食事から必要な栄養を摂れるようになっているか、成長が順調かを確認し、補助する必要性を見直します。フォローアップミルクは離乳が順調なら必須ではないため、継続の判断でも「何歳まで飲むか」より「何を補うために使っているか」を明確にすることが重要です。
離乳の完了と授乳の終了も同じではありません。支援ガイドでは、離乳の完了を、形のある食物をかみつぶせるようになり、エネルギーや栄養素の大部分を乳汁以外の食品から摂れるようになった状態とし、その時期を生後12~18か月頃としています。母乳や育児用ミルクを飲んでいない状態を意味しないと明記されているため、「離乳が完了したら直ちにミルクをやめる」という説明は避けます。
保護者には、製品名だけでなく、使用する目的と確認する項目をセットで説明します。例えば、「月齢による変更が目的ではなく、食事で不足している鉄などを補えるかを検討します。食べる量や種類、体重の増え方を見ながら必要性を確認しましょう」と伝えれば、フォローアップミルクの役割を共有しやすくなります。これは、個別の状況に合わせた支援を重視するガイドの方針に沿う説明例です。
フォローアップミルクを取り入れても、離乳食の種類や食形態を広げる支援は継続します。離乳には栄養補給だけでなく、食物をかみつぶして飲み込む機能を獲得し、食べる楽しさを経験する役割があるためです。食べにくさがある場合は、単にミルクを追加するだけでなく、固さ、大きさ、とろみなどが発達に合っているかを見直します。
衛生面では、乳児用調製粉乳は無菌ではないことを共有する必要があります。厚生労働省が示す安全な調乳の基本は、70℃以上の湯を使い、授乳に適した温度まで冷まして与えることです。この70℃以上という温度は調乳時の条件であり、そのまま飲ませる温度ではありません。1回分ずつ調乳し、作り置きや飲み残しは与えないよう説明します。
また、育児用ミルクとフォローアップミルクで、付属スプーンの大きさや標準濃度が同じとは限りません。使用する製品の表示に従い、指定された粉量と出来上がり量を守ることが基本です。「栄養を多く与えたいから濃くする」「節約のために薄める」といった調整は行わず、製品ごとの調製方法を確認します。乳児用調製粉乳の安全な調乳に関する資料でも、指定量より粉を多くしても少なくしてもいけないとされています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/qa/dl/070604-1a.pdf
食物アレルギーが疑われる場合は、通常のミルク同士の比較や変更だけで対応しないことも重要です。支援ガイドは、食物アレルギーが疑われる症状がある場合、自己判断で対応せず、医師の診断に基づいて進めるよう求めています。既に食物アレルギーの診断を受けている子どもでは、原因食品への対応と必要な栄養の確保を両立する個別の支援が必要です。
医療従事者が担うのは、特定の製品への変更を一律に勧めることではなく、その子どもに必要な栄養補給の方法を保護者と整理することです。母乳・育児用ミルク・離乳食の摂取状況を把握し、鉄不足のリスクや発育上の懸念があれば医師や管理栄養士につなぎます。その際、保護者の負担や希望も確認し、実行可能な方法を一緒に選ぶ姿勢が求められます。
厚生労働省「乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドラインについて」

ULTECHNOVO 搾乳器交換用シリコンホース 80cm 長さ 搾乳機部品 ミルク逆流防止 高温耐性 母乳育児用アクセサリー