

抗がん剤UFTは、一般名をテガフール・ウラシルとする経口フッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤である。国内ではユーエフティ配合カプセルT100、ユーエフティE配合顆粒T100・T150・T200などが流通しており、添付文書上の一般名は「テガフール・ウラシル」とされている。剤形や規格を取り違えないことは、外来化学療法における処方監査の基本となる。PMDA:ユーエフティ配合カプセル・配合顆粒の医療用医薬品情報
テガフールは、体内でフルオロウラシル(5-FU)へ変換されるプロドラッグである。5-FUは核酸代謝を阻害し、主にチミジル酸合成酵素阻害を通じてDNA合成を妨げるほか、RNA機能にも影響して抗腫瘍作用を示す。一方、ウラシルは5-FUの異化代謝に関与するジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)を競合的に阻害することで、5-FUの分解を抑制する役割を担う。両成分の組み合わせにより、テガフール単独と比べて5-FU濃度を維持しやすくし、抗腫瘍効果の増強を狙う設計である。
ただし、UFTは「内服薬だから軽い治療」とは位置付けられない。5-FU曝露を背景とした消化器毒性、骨髄抑制、肝障害、皮膚・粘膜障害などが起こり得る抗悪性腫瘍剤である。服薬支援では、患者の自己管理能力だけでなく、臨床検査値、併用薬、食事との関係、受診連絡の判断基準を一体として評価する必要がある。
UFTの効能・効果および用法・用量は、治療対象、単独投与か併用療法か、製剤、患者背景によって異なる。医療従事者は、必ず最新の添付文書、施設採用規格、レジメン登録内容を照合し、がん種ごとのガイドラインと治療目的を踏まえて運用する。術後補助化学療法では再発リスク低減を目的とする一方、進行・再発例では腫瘍制御や症状緩和を含めた治療目標が設定されるため、同じUFTでも評価の視点は一律ではない。
大腸癌におけるUFT/LV療法では、UFTにホリナートカルシウム(LV)を併用する。ホリナートは5-FUのチミジル酸合成酵素阻害を増強する目的で用いられ、UFTを単独で使用する場合とは治療設計、毒性評価、患者説明が異なる。臨床研究登録情報では、テガフールとして300mg/m2/日を目安に1日3回、約8時間ごとに投与し、食事の前後1時間を避ける方法、28日間投与後7日間休薬する35日サイクルが示されている。個々の処方については、必ず当該レジメンと処方内容を優先する。臨床研究等提出・公開システム:UFT/LV療法の投与方法
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 薬剤構成 | テガフールとウラシルの配合剤 | テガフールは5-FUのプロドラッグである |
| UFT/LV療法 | UFTとホリナートを同時に経口投与 | ホリナートは5-FUの作用増強を目的とする |
| 投与間隔 | 1日3回、約8時間ごととする設計がある | 実施時は処方箋・施設レジメンを優先する |
| 食事との関係 | 食事の前後1時間を避ける投与設計がある | 飲み忘れ時の対応も事前に説明する |
| サイクル例 | 28日間投与後、7日間休薬 | 適応・治療目的・レジメンにより異なる |
処方監査では、テガフール量と製剤規格の整合性、体表面積を用いるレジメンであれば体表面積・減量基準・休薬基準、ホリナートの併用有無、投与日数、休薬期間を確認する。電子カルテのオーダーセットが用いられていても、前治療からの切替時や退院時処方、他院処方との重複では、機械的な確認だけで十分とはいえない。
UFTの有害事象として重要なのは、下痢、悪心・嘔吐、食欲不振、口内炎などの消化器症状、白血球減少・好中球減少・血小板減少などの骨髄抑制、肝機能障害、腎機能変動、皮膚症状、倦怠感である。特に下痢は経口抗がん薬の継続性を左右し、脱水、腎機能悪化、電解質異常、感染症リスクへ連鎖し得る。単に「軟便があるか」を聞くだけでなく、普段の排便回数からの変化、夜間排便、腹痛、発熱、摂水量、尿量、めまい、止瀉薬の使用状況まで確認する。
患者指導では、服用時刻を生活リズムに組み込む支援が実践的である。1日3回投与の場合は、食事の前後1時間を避けるという条件と約8時間間隔を、患者が実行可能な具体的時刻に落とし込む。例えば起床時・午後・就寝前といった抽象的な説明ではなく、食事時刻や就寝時刻を聴取して服薬予定表を作成する。ただし、時刻の設定は処方医の意図、レジメン、施設の服薬指導書と矛盾しないよう確認する。
飲み忘れへの対応については、一般論としての「気付いたらすぐ服用」を安易に伝えるべきではない。次回服用時刻との間隔、患者ごとの処方指示、併用療法の有無により判断が変わり得るため、事前に施設の説明文書または主治医・薬剤師への連絡基準を提示する。二回分をまとめて服用しないこと、迷った場合は自己判断せずに連絡することを明確に伝える。
UFTで最重要の安全確認の一つは、フッ化ピリミジン系薬剤の重複回避である。とりわけテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤であるTS-1は、ギメラシルによって5-FUの異化代謝を強く阻害する。そのため、TS-1投与中または中止後間もない時期にUFTを投与すると、5-FU濃度が著しく上昇し、重篤な血液障害や消化管障害を生じるおそれがある。TS-1の医療用医薬品情報では、UFTを含むフッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤との併用を避け、TS-1中止後も少なくとも7日間はこれらの薬剤を投与しないことが示されている。KEGG MEDICUS:TS-1の併用禁忌・併用注意情報
監査時は、現在の抗がん薬だけでなく、直近に終了した治療、他院での治療歴、入院前の持参薬、自宅に残っている薬剤まで確認対象に含める。患者が「前の飲み薬が残っているので、もったいないから飲んだ」と認識しているケースは重大事故につながり得る。薬剤名を口頭で確認するだけではなく、お薬手帳、薬袋、現物写真、薬局の薬歴、紹介状、治療計画書を組み合わせて照合する姿勢が重要である。
また、フルシトシンを含む抗真菌薬や、他のフッ化ピリミジン系薬剤との関係についても添付文書確認が必要となる。カペシタビン、5-FU製剤、テガフール単剤、ドキシフルリジンなどは、治療切替時に見落としやすい。医療機関・保険薬局間の情報連携では、「経口抗がん薬内服中」だけでなく、製品名、最終投与日、休薬理由、有害事象の程度、次回受診日を共有することが安全性を高める。
UFT治療の安全性と継続性は、処方時の説明だけでは担保できない。医師、薬剤師、看護師、管理栄養士、地域薬局が、治療目的と患者の生活上の制約を共有し、毒性の早期検知と服薬継続支援を行うことが必要である。外来治療では診察間隔が空くため、患者が「どの症状なら連絡すべきか」を具体的に理解しているかが、重症化回避の分岐点になる。
薬剤師は、処方開始時に服薬スケジュール、食事との関係、保管方法、飲み忘れ時の連絡方法、併用禁忌薬、支持療法薬の使い方を確認する。継続時には、残薬数からアドヒアランスを推定するだけでなく、「予定通り飲めなかった日はいつか」「その理由は悪心、下痢、外出、食事不規則、飲み込みにくさのどれか」と障壁を特定する。残薬がない場合も、過量服用や自己調整が隠れていないかを確認する。
看護師は、電話相談や外来問診で得られる生活情報を治療チームにつなぐ役割を担う。便回数の増加、腹痛、発熱、体重減少、口腔内の痛み、経口摂取低下、皮膚症状、転倒リスクなどは、患者が抗がん薬の副作用として認識していない場合がある。患者本人だけでなく家族・介護者にも、緊急連絡が必要な症状と内服の自己中断・自己再開を避ける意義を共有することが望ましい。
UFTは、5-FUを利用する治療戦略を経口で実施できる選択肢である一方、投与量、投与間隔、休薬、併用薬、毒性評価のいずれも慎重な管理を要する。最新添付文書はPMDAの医療用医薬品情報で確認でき、添付文書、患者向医薬品ガイド、インタビューフォームなどを参照できる。個別症例では、本稿の一般的整理よりも、最新の添付文書、院内レジメン、がん種別ガイドライン、主治医の治療方針を優先して判断する。PMDA:医療用医薬品 添付文書等情報検索