

副腎不全を疑う場面には、原因不明の低血圧、脱水、低ナトリウム血症、腹痛、色素沈着などがあります。原発性副腎不全ではアルドステロン不足を伴う場合があり、高カリウム血症も診断の手掛かりになります。これらの所見を認める患者では、コルチゾールだけでなくACTHを併せて測定し、必要に応じてレニン、アルドステロンも評価します。
参考)Primary Adrenal Insufficiency …
Endocrine Society:原発性副腎不全の診療ガイドライン
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 朝の血清コルチゾール | 副腎不全の初期評価に使用。朝の値が5 μg/dL未満なら副腎不全を示唆する目安となる。 | ACTHと併せて評価する。単独での確定診断や一般的な「正常下限」を意味しない。 |
| 迅速ACTH負荷試験 | 成人では通常250 μgを投与し、30分または60分後の反応を評価する。 | 従来のピーク値18 μg/dL未満という目安は測定法依存。施設の判定基準を確認する。 |
| 24時間尿中遊離コルチゾール | クッシング症候群の初期評価では少なくとも2回測定する。蓄尿の完全性と腎機能を確認する。 | |
| 深夜唾液中コルチゾール | 通常2回以上測定する。測定法に対応した判定値と睡眠リズムの確認が必要。 | |
| 1 mgデキサメタゾン抑制試験 | 陽性だけでクッシング症候群は確定しない。服薬状況、併用薬、追加検査を確認する。 |
副腎不全が疑われる安定した患者では、朝の血清コルチゾールと血漿ACTHを組み合わせて初期評価を行います。2016年のEndocrine Societyガイドラインでは、ACTH負荷試験を直ちに実施できない場合、朝のコルチゾール5 μg/dL未満をACTHと併せて用いる暫定的な判断が示されています。ただし、この値を超えたことだけで副腎不全を否定できるわけではありません。
コルチゾール不足が確認された患者でACTHが施設基準上限の2倍を超えていれば、原発性副腎不全に合致する所見です。ACTHは単独の異常値として扱わず、同時に測定したコルチゾールとの関係で解釈します。原発性が疑われる場合には、電解質とともにレニン・アルドステロンを評価し、糖質コルチコイド不足と鉱質コルチコイド不足を分けて確認します。
基礎値だけで判断が難しい場合は、患者の状態に応じて迅速ACTH負荷試験を実施します。成人の標準用量は250 μgで、投与後30分または60分のコルチゾール反応を評価します。従来のピーク値18 μg/dLという判断目安には測定法依存性が明記されているため、異なる測定系でも同じ閾値を機械的に適用することは避けます。
ショック、著しい低血圧、嘔吐、意識障害などから副腎クリーゼが疑われる場合は、結果待ちを優先しません。治療を遅らせない範囲で投与前の検体を確保できれば診断に役立ちますが、検査のためにヒドロコルチゾン投与や輸液を遅延させないことが原則です。
Endocrine Society:クッシング症候群の診断ガイドライン