

結膜充血は、結膜の血管が拡張して白目やまぶたの裏側が赤く見える所見です。独立した病名ではなく、感染、アレルギー、外的刺激などによって生じます。一方、診療で遭遇する「赤い目」全体には、角膜炎、ぶどう膜炎、強膜炎、急性閉塞隅角緑内障なども含まれます。結膜充血の原因を検討するときは、最初に赤く見える部位と随伴症状を確認し、結膜だけの問題なのか、角膜や眼内の病変があるのかを分けて考える必要があります。
msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/17-%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6/%E5%85%85%E8%A1%80)
結膜炎では、一般にびまん性の結膜血管拡張に眼脂、流涙、異物感、かゆみなどが伴います。合併症のない結膜炎では、著明な眼痛や持続する視力低下は通常みられません。眼脂で一時的に見えにくくなることはありますが、眼脂を除去しても見え方が戻らない場合には、角膜障害など別の病変を評価します。「充血しているから結膜炎」という判断ではなく、視機能への影響まで確かめることが基本です。
msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/17-%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%B5%90%E8%86%9C%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E5%BC%B7%E8%86%9C%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%B5%90%E8%86%9C%E7%82%8E%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81)
毛様充血は、角膜輪部の周囲に深部血管の拡張が目立つ所見です。前部ぶどう膜炎、急性緑内障、一部の角膜炎で認められ、合併症のない結膜炎とは異なる診断を示唆します。ただし、充血の分布だけで疾患を確定することはできません。眼痛、羞明、視力、角膜所見、瞳孔所見などを合わせて判断します。
msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/17-%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%B5%90%E8%86%9C%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E5%BC%B7%E8%86%9C%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%B5%90%E8%86%9C%E7%82%8E%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81)
結膜下出血は、血管拡張ではなく、結膜の下に血液が漏れた状態です。限局した境界明瞭な赤色斑として見え、通常は痛みや視力変化を伴いません。外傷、いきみなどの後に生じる場合や、抗凝固薬・抗血小板薬の使用歴がある場合もあります。外傷後の発症や痛み、見え方の変化を伴う症例では、見た目だけで良性の出血と判断しないことが重要です。
msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/17-%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6/%E5%85%85%E8%A1%80)
MSDマニュアル プロフェッショナル版「充血」
結膜そのものの炎症を考える場合、主要な原因は感染、アレルギー、刺激です。感染性結膜炎ではウイルス性と細菌性が多く、非感染性では花粉やハウスダストによるアレルギーのほか、煙、粉塵、化学物質、異物などの曝露が手がかりになります。慢性または反復性の症例では、眼瞼炎、眼瞼内反・外反、慢性涙嚢炎なども原因候補に含めます。
msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/17-%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%B5%90%E8%86%9C%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E5%BC%B7%E8%86%9C%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%B5%90%E8%86%9C%E7%82%8E%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81)
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| ウイルス性結膜炎 | 水様性眼脂、流涙、異物感、耳前リンパ節腫脹などが手がかり | 角膜病変を合併すると羞明や視力障害が生じることがある。 |
| 細菌性結膜炎 | 膿性・粘液膿性眼脂や眼瞼の固着が細菌性を示唆 | 眼脂の性状だけではウイルス性と正確に区別できない。 |
| アレルギー性結膜炎 | かゆみが重要で、流涙、結膜浮腫、粘液性眼脂などを伴う | 季節性、鼻炎症状、花粉やハウスダストへの曝露を確認する。 |
| 刺激性・薬剤関連の結膜炎 | 粉塵、煙、化学物質への曝露や、点眼薬使用との時間的関係が手がかり | 点眼薬の有効成分や保存剤が関与する場合もある。 |
| 眼瞼・涙道疾患に伴う慢性結膜炎 | 眼瞼炎、眼瞼内反・外反、慢性涙嚢炎などを背景に症状が続く | 充血だけでなく、眼瞼縁や涙道の問題まで評価する。 |
| コンタクトレンズ関連の角膜障害 | 装用歴があり、充血に眼痛、流涙、見えにくさなどを伴う | 単純な結膜炎と決めつけず、角膜炎・角膜潰瘍を除外する。 |
ウイルス性結膜炎のうち、流行性角結膜炎、咽頭結膜熱、急性出血性結膜炎は、人にうつりやすい「はやり目」として扱われます。一方、ウイルス性結膜炎には単純ヘルペスウイルスや帯状疱疹ウイルスによるものもあり、すべてを同じ臨床像・感染性として扱うことは適切ではありません。周囲の流行状況に加え、発熱、咽頭痛、眼瞼の水疱、片側性の皮疹などを確認します。
nichigan.or(https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=14)
アレルギー性結膜炎では、かゆみが鑑別に有用です。ただし、かゆみがあれば必ずアレルギー、膿性眼脂なら必ず細菌性という一対一の関係ではありません。結膜炎の臨床所見には重なりがあり、特にウイルス性と細菌性の区別には限界があります。診断の確実性と重症度を分けて考え、経過や必要な検査によって判断を更新する姿勢が求められます。
msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/17-%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%B5%90%E8%86%9C%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E5%BC%B7%E8%86%9C%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%B5%90%E8%86%9C%E7%82%8E%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81)
日本眼科学会「アレルギー性結膜炎」
日本眼科学会「ウイルス性結膜炎」
問診では、発症時期、持続期間、片眼か両眼か、症状が反対側へ広がったかを整理します。そのうえで、かゆみ、眼脂、眼痛、羞明、見え方の変化を確認します。鼻汁・くしゃみはアレルギーや上気道感染症、咽頭痛・倦怠感は感染症、頭痛・悪心・嘔吐・光の周囲に虹が見える症状は急性閉塞隅角緑内障を考える手がかりになります。
msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/17-%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6/%E5%85%85%E8%A1%80)
msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/17-%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6/%E5%85%85%E8%A1%80)
msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/17-%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6/%E5%85%85%E8%A1%80)
msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/17-%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6/%E5%85%85%E8%A1%80)
msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/17-%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6/%E5%85%85%E8%A1%80)
診察では左右それぞれの視力を測定し、瞳孔径と対光反応、充血の分布、角膜の透明性、眼脂、眼瞼・眼窩周囲の腫脹を確認します。角膜上皮障害が疑われる場合にはフルオレセイン染色が有用であり、細隙灯顕微鏡では角膜病変に加えて前房内の細胞やフレアなどを評価します。疼痛のある赤い目では、これらの観察と必要に応じた眼圧測定が鑑別の鍵になります。
msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/17-%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6/%E5%85%85%E8%A1%80)
充血の原因を調べるために、全例で培養検査が必要なわけではありません。ただし、重症例、易感染状態、眼の脆弱性がある症例、初期治療への反応不良例では培養を検討します。非眼科の診療現場で視力・角膜・前房の十分な評価ができない場合は、その評価上の限界を踏まえて眼科に紹介することが重要です。
msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/17-%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6/%E5%85%85%E8%A1%80)
結膜充血の原因検索で優先すべきなのは、頻度の高い結膜炎を細かく分類する前に、視機能を脅かす疾患を拾い上げることです。特に危険徴候となるのは、持続する視力低下、強い眼痛、明らかな羞明、角膜混濁や角膜上皮欠損、眼圧上昇を示唆する症状です。こうした所見がある場合は、単純な結膜炎として経過観察せず、緊急または迅速な眼科評価につなげます。
msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/17-%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6/%E5%85%85%E8%A1%80)
急性閉塞隅角緑内障では、急激な強い眼痛に、頭痛、悪心、嘔吐、視力低下、光輪などが伴うことがあります。角膜浮腫による混濁や著明な発赤も手がかりですが、確定には眼圧などの眼科的評価が必要です。消化器症状や頭痛が前景に出ていても、眼痛や片眼の見えにくさがあれば眼疾患の可能性を確認します。
msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/17-%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6/%E5%85%85%E8%A1%80)
角膜感染症や角膜潰瘍では、眼痛、羞明、流涙、視力低下、角膜の白色ないし灰白色の混濁などに注意します。コンタクトレンズ使用者の充血にこれらの症状がある場合は、装用を続けながら市販点眼で様子を見る対応を避け、速やかに眼科評価へつなげます。角膜潰瘍が疑われる症例は緊急性が高く、通常の結膜炎と同じ扱いにはできません。
msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/17-%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6/%E5%85%85%E8%A1%80)
前部ぶどう膜炎では毛様充血、眼痛、羞明が、強膜炎では深い強い痛みや紫がかった発赤などが手がかりになります。外見上の赤さが軽くても、痛みや見え方の異常が強ければ軽症とは判断できません。また、額や上眼瞼、鼻先に片側性の水疱性皮疹がある場合は眼部帯状疱疹を考え、角膜炎やぶどう膜炎の合併を評価します。
msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/17-%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6/%E5%85%85%E8%A1%80)
治療は赤さそのものではなく、原因疾患を対象にします。細菌性結膜炎では抗菌薬が治療選択肢になりますが、ウイルス性を強く示唆する病歴・所見があれば、初期から抗菌薬を処方しない判断も可能です。また、淋菌性結膜炎や成人封入体結膜炎では全身投与による治療が必要であり、すべての感染性結膜炎を抗菌点眼だけで扱えるわけではありません。
msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/17-%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%B5%90%E8%86%9C%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E5%BC%B7%E8%86%9C%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%B5%90%E8%86%9C%E7%82%8E%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81)
アレルギー性結膜炎では、抗ヒスタミン薬や肥満細胞安定化薬などの点眼が用いられます。点眼薬の成分や保存剤が症状に関与している可能性があれば、薬剤歴と眼表面所見を踏まえて処方を見直します。一方、充血を一時的に目立たなくする局所血管収縮薬は、原因疾患の治療にはならず、MSDマニュアルでは充血への使用は推奨されていません。
msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/17-%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6/%E5%85%85%E8%A1%80)
ステロイド点眼は、重症の炎症などで使用される場合がありますが、原因が未確定の赤い目に一律に用いる治療ではありません。充血には角膜感染症やヘルペス関連病変なども含まれるため、角膜所見や病因を評価したうえで適応を判断します。非眼科の初期対応では、炎症の見た目を抑えることよりも、診断の確実性と眼科評価の必要性を優先します。
msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/17-%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6/%E5%85%85%E8%A1%80)
感染性結膜炎が疑われる場合は、治療と同時に感染拡大防止を始めます。診察前後の手指衛生、眼に触れた診療器具の適切な消毒を徹底し、患者には眼脂や涙に触れた後の手洗い、患眼を触った手で反対側の眼を触らないこと、タオルや枕を共有しないことを説明します。感染性と非感染性の結膜炎を区別しつつ、診断が確定していない段階でも伝播を防ぐ配慮が必要です。
msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/17-%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%B5%90%E8%86%9C%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E5%BC%B7%E8%86%9C%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%B5%90%E8%86%9C%E7%82%8E%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81)
初診時に結膜炎が疑われても、その後に視力低下、痛みの増強、羞明、角膜の濁りなどが出現した場合には診断を再評価します。症状が持続する場合や治療反応が乏しい場合も、病原体の違いだけでなく、角膜疾患、薬剤関連の障害、眼瞼・涙道疾患などを見直します。患者説明では点眼方法だけでなく、どの変化が起きたら再受診すべきかを具体的に共有することが重要です。
msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/17-%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%9C%BC%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6/%E5%85%85%E8%A1%80)