

| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 後陣痛の持続期間 | 一般に産後二〜三日程度、産後早期の数日間にみられる | 日数だけで正常・異常を判断しない |
| 授乳との関係 | 授乳によるオキシトシン分泌に伴い、一時的に増強することがある | 痛みが授乳以外でも持続・増悪する場合は再評価する |
| 子宮復古 | 通常、四〜六週間程度で妊娠前の大きさに戻る | 後陣痛の持続期間とは区別する |
| 悪露 | 産後三〜四日は血性、その後は淡褐色、さらに黄白色へ変化する | 量の増加や悪臭、全身症状の有無も確認する |
| 子宮の圧痛 | 通常は産後五〜七日頃に圧痛がなくなる方向へ変化する | 強い圧痛や増悪があれば感染などを検討する |
| 排尿状態 | 尿閉や膀胱の過伸展を避けるため、排尿を促し状態を確認する | 尿意が乏しくても膀胱が充満していることがある |
経産婦の産後腹痛では、鑑別を先に意識することが安全管理の基本です。後陣痛が起こりやすい背景があっても、産後出血、胎盤組織の遺残、子宮内膜炎、尿路感染症、尿閉、会陰・外陰部血腫、帝王切開後の合併症などを除外する必要があります。痛みの強さだけではなく、出血量、バイタルサイン、圧痛、悪露、排尿、創部所見を組み合わせて判断します。
参考)Postpartum Care - Gynecology a…
退院指導では、出血の目安を具体的に伝えます。MSDマニュアルでは、ナプキンが一〜二時間ごとにいっぱいになる出血、大きな血塊、失神感などを受診につながる徴候として示しています。ただし、この目安に達するまで待つという意味ではありません。急速な出血や全身状態の悪化があれば、量を正確に測れなくても緊急対応が必要です。
また、鎮痛薬の投与で痛みが軽減したことだけを根拠に、合併症を否定しないようにします。産後の強い痛みや増悪する痛みは、原因の評価と疼痛緩和を並行して進める対象です。「経産婦だから」「授乳中だから」という説明で観察を終えず、新たな所見がないかを継続して確認します。
後陣痛の薬物療法では、非ステロイド性抗炎症薬であるNSAIDsや、アセトアミノフェンが選択肢となります。MSDマニュアルは、NSAIDsが子宮収縮に伴う痛みや会陰部の不快感に有効であり、アセトアミノフェンも使用できるとしています。また、アセトアミノフェンとイブプロフェンは、通常推奨用量での使用において授乳中にも使用可能な薬剤として扱われています。
実際の処方や投薬支援では、「授乳中に使える薬がある」という情報と、「すべての人に同じ薬が適する」という判断を区別します。母体の病歴、併用薬、児の状態、国内の添付文書や施設方針を確認したうえで、薬剤と投与方法を個別に決定します。授乳しているという理由だけで鎮痛を控えるのではなく、安全性情報に基づいて必要な疼痛緩和を行うことが重要です。
参考)https://www.mayoclinic.org/healthy-lifestyle/infant-and-toddler-health/in-depth/breastfeeding-and-medications/art-20043975
LactMed:アセトアミノフェンと授乳
LactMed:イブプロフェンと授乳
排尿支援も産後ケアの一部です。産後は尿意を感じにくい場合があり、膀胱の過伸展が不快感や排尿機能の問題につながります。自排尿の有無だけで安心せず、排尿後の感覚や膀胱充満の所見を確認し、必要に応じて施設の手順に沿った評価につなげます。ただし、排尿を促すことを後陣痛そのものへの確立した鎮痛法として説明するのではなく、併存する不快感や尿閉を防ぐ支援として位置づけます。