

| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| C5 | 上腕外側から肘外側付近 | 代表的な感覚検査点は肘窩の橈側 |
| C6 | 前腕橈側から母指付近 | 母指背側の近位指節部が検査点の目安 |
| C7 | 中指を中心とする領域 | 中指背側の近位指節部で確認する |
| C8 | 小指および手の尺側付近 | 小指背側の近位指節部が目安 |
| T1 | 前腕内側から肘内側付近 | 代表的な感覚検査点は肘窩の尺側 |
| T4・T6・T10 | それぞれ乳頭高・剣状突起高・臍高 | 体幹の分節を把握する目安として使う |
| L2・L3 | それぞれ大腿前内側・膝内側付近 | 大腿部から膝周囲の感覚を比較する |
| L4 | 下腿内側から内果付近 | 内果が代表的な感覚検査点 |
| L5 | 下腿前外側から足背付近 | 代表的な感覚検査点は第3中足趾節関節の背側 |
| S1 | 下腿後外側から足外側・足底の一部 | 代表的な感覚検査点は踵骨外側 |
| S2 | 大腿後面から下腿後面付近 | 膝窩中央が検査点の目安 |
| S4–5 | 肛門周囲の感覚領域 | 適応、説明、同意、プライバシーに配慮して評価する |
体幹では帯状の感覚異常が神経根障害を示唆する一方、ある高さを境に両側の感覚が変わる「感覚レベル」は脊髄病変を考える手掛かりになります。表の目印は暗記だけに使うのではなく、左右差、上下方向の広がり、感覚変化の境界を記録するために活用することが大切です。
参考)Numbness - Neurology - MSD Man…
感覚評価では、最初に患者が「しびれ」という言葉で何を表現しているかを確認します。ピリピリする異常感覚、触れた感覚の低下、痛み、脱力感は、患者の説明では同じ言葉にまとめられることがあります。発症時期、持続時間、左右差、姿勢や動作との関係、頸部痛・腰痛、筋力低下、排尿・排便の変化を確認したうえで、症状の範囲を身体図に記録します。
神経分布図から得られるのは、障害部位についての仮説です。その仮説を確かめるには、感覚所見と運動所見、腱反射が同じ解剖学的局在で説明できるかを検討します。神経根障害では、対応する皮膚領域の感覚異常に加え、その神経根に関係する筋群の筋力低下や、対応する深部腱反射の低下がみられることがあります。ただし、これらがすべてそろうとは限りません。
参考)Nerve Root Disorders - Neurolo…
例えば、母指側の感覚異常に上腕二頭筋の筋力低下、上腕二頭筋反射や腕橈骨筋反射の低下が伴う場合は、C6神経根障害との整合性を検討します。中指に向かう痛みや感覚異常に、上腕三頭筋の筋力低下と上腕三頭筋反射の低下が加われば、C7神経根障害を考える材料になります。いずれも、指のしびれだけで神経根レベルを断定するのではなく、所見の組み合わせで判断します。
下肢では、L4神経根障害で下腿内側の感覚異常、膝伸展や足関節背屈の筋力低下、膝蓋腱反射の低下がみられることがあります。S1神経根障害では、下腿・足の外側の感覚異常に、足関節底屈の筋力低下やアキレス腱反射の低下が伴うことがあります。一つの筋や反射には複数の神経根が関与するため、特定の動作を一つの神経根だけに対応させないことが重要です。
下垂足も、分布図のみでは判断しにくい所見です。L5神経根障害と腓骨神経の単ニューロパチーは、いずれも鑑別に入ります。L5神経根障害では前脛骨筋だけでなく後脛骨筋などにも筋力低下が生じ得るため、足関節背屈だけで評価を終えず、複数の筋の障害分布を調べます。症候から局在が明確にならない場合には、神経伝導検査や針筋電図を用いて、神経根、神経叢、末梢神経のどこに障害があるかを検討します。
人体の神経分布図を安全に使ううえで重要なのは、分布の一致より先に緊急性を判断することです。突然発症した片側の顔面・上肢・下肢の感覚障害や、急速に進行する筋力低下では、末梢神経の圧迫だけを想定して評価を進めるべきではありません。発症速度と障害範囲は、脳血管障害などの中枢病変を疑う重要な情報であり、状況に応じて速やかな救急評価につなげます。
腰痛や下肢症状に、会陰部・肛門周囲の感覚低下、尿閉、新たな尿失禁・便失禁、進行性の下肢筋力低下が伴う場合は、馬尾症候群や脊髄円錐部の病変を疑います。排尿障害を単に痛みのためと判断したり、典型的なデルマトームに一致しないことを理由に経過観察としたりせず、緊急の診察と画像評価の必要性を判断します。すべての症状がそろうまで対応を待つべきではありません。
一定の感覚レベル以下の両側症状、歩行障害、反射異常、膀胱直腸障害の組み合わせは、脊髄圧迫を疑う手掛かりです。また、広がるしびれに急速な筋力低下や呼吸困難が伴う場合も、通常の外来経過観察に適するとは限りません。神経分布図は局在を整理する資料であり、全身状態や時間経過に基づく重症度評価を置き換えるものではありません。