瞳孔距離の測り方と眼鏡処方で押さえる臨床の要点

瞳孔距離の測り方と眼鏡処方で押さえる臨床の要点

瞳孔距離は眼鏡レンズの配置を左右する重要な測定値です。医療従事者向けに、両眼・単眼PD、遠用・近用の違い、測定手順、誤差によるプリズム作用を解説します。快適な眼鏡処方につなげるには何を確認すべきでしょうか?

瞳孔距離の基礎知識と眼鏡処方の核心ガイド

瞳孔距離の測定と眼鏡処方の重要点
両眼と単眼の測定値を区別する

両眼の合計値だけでは左右差を把握できません。顔の非対称性を考慮し、必要に応じて単眼値も記録します。

用途に応じて測定条件を整える

遠方と近方では視線の向きが変化します。固視距離や頭位、測定機器の設定をそろえて評価することが大切です。

度数と装用位置を合わせて確認

測定値が正しくても眼鏡のずれで見え方は変わります。度数だけでなく、レンズ配置と装用状態も確認します。


瞳孔距離とは何か:眼鏡の見え方を支える位置情報


両眼・単眼PDと遠用・近用PDの違いを整理する

項目 基準・内容 備考
両眼PD 左右の瞳孔中心間の距離 一つの数値で表す。左右それぞれの位置までは分からない
単眼PD 鼻根部中央などの基準から各眼の瞳孔中心までの距離 右眼・左眼を分けて記録し、顔の非対称性を反映する
遠用PD 遠方を見る条件で評価するPD 眼鏡処方箋では通常、遠用PDを基本情報として記載する
近用PD 近方を固視したときのPD 輻湊や作業距離の影響を受けるため、測定距離も重要になる
累進レンズの装用位置 PDに加え、選択したフレームでの瞳孔の高さなどを評価 水平方向の数値だけでは適切なフィッティングを完結できない

近方を見るときには両眼が内側に向く輻湊が生じ、近用PDは通常、遠用PDより小さくなります。ただし、その差を全患者で一律に扱うのは適切ではありません。日本眼科学会の2025年の手引きでは、通常は遠用PDを基に近用や遠近累進屈折力レンズの光学中心も設定される一方、近見時の斜視や眼軸長が標準的でない場合には、実測値を記載するとしています。「近用値は毎回必須」とするのでも、「遠用値から常に同じ量を引けばよい」とするのでもなく、症例に応じて判断します。


参考)https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/PrescribingGlassesAdultsClinical.pdf


瞳孔距離の測り方:定規とPDメーターの実務

  • 用途を確認する:運転、読書、パソコン作業など、見たい対象と距離を聞き取ります。近用の評価では「手元」という表現だけで終わらせず、実際の作業距離を確認します。

  • 遠用PDを測る:日本眼科学会の方法では遠方視標を固視させ、角膜頂点から12mmの位置にメジャーを置きます。検者の左眼で患者の右眼側、右眼で左眼側を読み、鼻根部中央から瞳孔中心までの距離を測定します。

  • 瞳孔中心が見えにくい場合に対応する:手引きでは、右眼の角膜輪部外縁から左眼の角膜輪部内縁までを測る代替法も示されています。判別しにくい中心を推測して読み取るのではなく、施設で手順を統一します。

  • 機器の条件を確認する:PDメーターでは装置内の固視標を注視してもらい、角膜反射を観察します。両眼開放・片眼遮閉などの条件や操作法は機種によって異なるため、取扱説明書に従います。

定規で瞳孔中心を基準に読む方法と、角膜反射を利用する機器による方法は、観察している指標が同一とは限りません。異なる方法の測定値に差が出たときは、単に平均を取るのではなく、固視、基準点、姿勢、機器設定を確認します。臨床記録では測定法を残しておくと、再測定や他職種との照合に役立ちます。


斜視がある症例では、通常の両眼開放測定の値をそのまま採用する前に、固視眼と眼位を確認する必要があります。日本眼科学会の手引きでは、遠見で斜視がある場合に片眼ずつ遮閉して固視させる測定法が示されています。両眼の見かけ上の位置だけを追うのではなく、症例に適した測定条件を選ぶことが重要です。


日本眼科学会:成人の視力検査および眼鏡処方に関する手引き


測定誤差が問題になる理由:偏心によるプリズム作用

処方箋の記載と患者対応:完成した眼鏡まで評価する

日本眼科学会の手引きでは、眼鏡処方箋にレンズ度数、PD、レンズの種類などを記載することが示されています。特に累進屈折力レンズでは、レンズ面の位置によって度数が異なるため、水平方向のPDだけでは評価が不十分です。フィッティングポイントに視線が通るか、高さが適切か、眼鏡に傾きがないかも確認します。


患者が「新しい眼鏡では疲れる」と訴えたときは、
瞳孔距離
だけに原因を限定しないことが重要です。まず、症状が遠見と近見のどちらで起きるか、装用直後か長時間使用後か、以前の眼鏡ではどうかを確認します。そのうえで、度数や乱視軸、加入屈折力、レンズの種類、装用位置、レンズの汚れや傷、眼疾患の有無などを整理します。





万能瞳孔計 SM-122(170MM)