

「違う病院同じ薬を貰いたい」という相談では、まず患者が希望する理由を確認します。引っ越しで通院先を変えたい、かかりつけ医が休診している、仕事の都合で受診できない、薬がなくなる前に治療を引き継ぎたいなど、背景によって必要な対応は異なります。別の医療機関でこれまでの薬の継続を相談することはできますが、過去に処方された事実だけで同じ処方が確約されるわけではありません。医師法第20条は、自ら診察しないで治療や処方箋の交付を行うことを禁止しており、新たな処方には診察に基づく判断が必要です。
参考)https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/06/dl/s0622-4b.pdf
医療従事者が説明する際は、「同じ薬の継続について相談できます。ただし、現在の状態とこれまでの治療内容を確認して、医師が処方を判断します」と伝えると、相談できることと処方が保証されないことを分けて示せます。お薬手帳は重要な確認資料ですが、それ自体が処方箋の代わりになるものではありません。薬の記録を見せれば診察なしで受け取れる、と誤解させない説明が必要です。
一方で、患者の希望を最初から「薬を余分に集めたいのだろう」と決めつけることも避けたい対応です。医療者側の確認では、治療を別の病院へ引き継ぐための相談と、同じ時期に複数の病院から薬を受け取る相談を区別します。厚生労働省は、複数の医療機関から同じ効能・効果の薬が処方され、必要以上の量を服用してしまう問題を重複投薬の例として説明しています。受診先の変更そのものではなく、処方内容と実際の服用が重なっていないかが安全上の重要な論点です。
参考)広報誌「厚生労働」2023年9月号 特集|厚生労働省
厚生労働省:処方せんに関する法令の規定について
患者がいう「同じ薬」には、同じ商品名、同じ有効成分、同じ目的で使う薬など、複数の意味があります。医療従事者は、商品名だけでなく、有効成分、規格、剤形、用法・用量まで確認する必要があります。例えば「以前と同じ血圧の薬」という説明だけでは、具体的な処方を特定できません。ジェネリック医薬品は先発医薬品と同じ有効成分を同量含み、効能・効果や用法・用量は基本的に同じですが、添加剤や外観などが異なる場合があります。
参考)https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryou/kouhatu-iyaku/dl/02_120713.pdf
そのため、商品名が変わったことだけで「別の治療になった」と判断することも、成分が同じという理由だけで患者の懸念を退けることも適切ではありません。患者が同じ製品を希望する理由を確認し、飲みやすさ、過去の使用経験、添加剤に関する心配などを整理します。また、後発医薬品と先発医薬品では対象となる病気の範囲が一部異なる場合があるため、製品の違いを評価するときは外観だけでなく適応も確認します。
参考)ジェネリック医薬品(後発医薬品)とは?先発品との違いや安全性…
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 薬の特定 | 商品名、有効成分、規格、剤形を確認する。 | 「白い錠剤」「以前の薬」だけでは十分に特定できない。 |
| 使用目的 | 何の病気や症状に対して処方されているか確認する。 | 同じ成分でも、患者の適応や治療目的を確認する。 |
| 用法・用量 | 処方上の指示と、患者が実際に使用している方法を照合する。 | 頓服、自己調整、飲み忘れの有無も聞き取る。 |
| 他院の処方 | 他の医療機関から受け取った薬との重複を確認する。 | 商品名が異なっていても、同じ成分や同じ効能の薬に注意する。 |
| 残薬 | 手元にある数量と、何日分に相当するかを確認する。 | 処方日数と残薬数が一致するとは限らない。 |
| 確認資料 | お薬手帳、薬剤情報、診療情報提供書などを活用する。 | 処方記録と現在の服用状況を区別して確認する。 |
この表は、継続処方の相談を整理するための確認枠組みです。とくに他院の処方を評価するときは、同一成分だけでなく、同じ効能・効果の薬を重ねて使っていないかも確認します。厚生労働省は、お薬手帳の提示が相互作用や重複投与の防止に役立つとしています。情報を集める目的は患者の希望を否定することではなく、これまでの治療を安全に引き継げるか判断することです。
別の病院で同じ薬を相談する患者には、薬の名前だけではなく、治療経過が分かる資料を持参するよう案内します。お薬手帳は、複数の医療機関や薬局の記録を一冊にまとめることで、重複投薬や相互作用を確認しやすくなります。病院ごとに別々の手帳を使っている場合は、今回受診する診療科に関係する手帳だけを持参すると、ほかの処方が見えなくなるおそれがあります。
参考)https://www.c-yaku.or.jp/public/techou.htm
こうした準備は、医療者が処方情報と実際の服用状況を照合するためのものです。紹介時の診療情報提供書には、紹介理由や現在の処方などを記載する項目があります。また、厚生労働省の「診療情報の提供等に関する指針」では、情報提供にあたって患者の同意を確認することが示されています。転院時には、薬の一覧だけでなく、必要な診療情報を患者の同意のもとで共有することが重要です。
参考)https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/06/s0623-15m.html
マイナ保険証を利用する場合は、患者の同意のもとで診療・薬剤情報を活用できる仕組みがあります。電子処方箋も、医師や薬剤師による薬の確認と重複投薬の回避を支援します。ただし、システム上の記録を確認することと、患者が現在どのように薬を飲んでいるかを聞き取ることは別の作業です。医療者は記録を活用しながら、「この薬は今も飲んでいますか」「手元にどれくらい残っていますか」と確認する流れを組み立てます。
患者が「同じ薬を貰いたい」と話したときは、薬が不足する事情と、すでに受け取っている薬の状況を分けて確認します。たとえば、以前の病院から受け取った薬がまだ残っているのに、新しい病院の処方をすぐに追加して服用すると、同じ効能の薬を必要以上に飲む状況につながる可能性があります。厚生労働省も、このような複数の医療機関にまたがる重複投薬を安全上の課題として挙げています。
医療者の聞き取りでは、「前の病院の薬は、あと何日分ありますか」「今回の受診は、前の病院から治療を引き継ぐためですか」「別の名前の薬も含めて、現在使っているものを教えてください」といった具体的な質問が役立ちます。患者が薬の商品名を正確に覚えていなくても、お薬手帳を一冊にまとめて提示すれば、処方の全体像を把握しやすくなります。手帳を病院ごとに使い分けるのではなく、受診先をまたいで記録を共有することが重要です。
説明では、「別の病院を受診してはいけない」と一律に伝えるのではなく、「前の病院の薬と今回の薬が重ならないよう確認します」と目的を示します。受付では受診理由や持参資料を確認し、診察では継続の必要性を判断し、薬局では処方内容や残薬を照合する、というように情報がつながる対応を考えます。お薬手帳や電子処方箋は、その連携を支える手段として位置付けられます。
処方を継続する場合も、患者が理解すべき内容は薬の名称だけではありません。以前の薬と新しく受け取る薬の関係について、医師・薬剤師の指示を確認できる説明が必要です。「同じ薬だから両方飲んでよい」という誤解を残さず、処方された用法・用量に沿って使用することを確認します。これは、重複投薬によって必要以上の量を服用する問題を防ぐための説明です。
「違う病院同じ薬を貰いたい」という相談の背景が通院負担にある場合は、単に別の病院で処方を増やすのではなく、治療を継続する方法を整理します。転院して診療を引き継ぐ方法と、現在の医療機関で処方・調剤の仕組みを見直す方法は、別の選択肢です。前者では診療情報の共有が重要になり、後者では、病状に応じてリフィル処方箋などを医師に相談することが考えられます。
すでに通常の処方箋を受け取っている患者には、使用期間にも注意を促します。保険医療機関で交付される処方箋は、原則として交付日を含めて4日以内に使用する必要があり、休日や祝日も日数に含まれます。長期の旅行など特殊な事情があり、医師や歯科医師が別途使用期間を記載した場合には、その日まで有効です。「平日だけで4日」「薬がなくなってから持参すればよい」といった誤解を防ぐ説明が必要です。
参考)処方箋の使用期間にご留意ください
この検索意図に対する医療従事者の基本姿勢は、「別の病院でも継続について相談できるが、同じ処方が無条件に保証されるわけではない」と明確にすることです。そのうえで、お薬手帳、他院の処方、残薬、実際の服用状況を確認し、転院なら必要な情報を共有します。患者の希望を否定せず、診察に基づく処方と重複投薬の防止につなげることが、安全な治療継続の中心となります。