

ビタミンBが多い食品として、鶏レバー、かつお、まぐろ類、あさり、しじみなどが挙げられます。ただし、鶏レバーはビタミンB2や葉酸、かつおはビタミンB6、あさりやしじみはビタミンB12というように、豊富に含む種類は食品ごとに異なります。「ビタミンBが最も多い食品」を一つに決めるのではなく、補いたい栄養素を明確にすることが出発点です。
参考)ビタミンB6/B12の働きと1日の摂取量
ビタミンB群は、B1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンの8種類を指します。いずれも水溶性ビタミンに分類されますが、生体内での役割は同一ではありません。B1、B2、ナイアシンはエネルギー代謝を助け、B6は主にたんぱく質の代謝に関与します。また、B12と葉酸は赤血球の生成などに関わります。
参考)ビタミン
医療従事者による栄養指導では、種類別に説明することが重要です。「ビタミンBは疲れによい」と一括りにするよりも、食事内容のどこに不足が生じている可能性があるか、どの食品をどの程度追加するかという形に置き換えると、患者が実行しやすい説明になります。食品選択の基本は、特定の栄養素だけを追うのではなく、多様な食品を組み合わせることです。
また、ビタミンB群はエネルギー代謝を支える栄養素であり、ビタミンそのものをエネルギー源として説明するのは適切ではありません。主食や主菜を十分に食べられていない患者では、ビタミンだけを追加する発想ではなく、食事全体の摂取状況と併せて評価する必要があります。
食品の比較には、栄養素名、単位、食品の状態をそろえた数値を使います。次の表は、ビタミンB群の供給源として検討できる食品の例です。すべて可食部100g当たりの値であり、食品全体の総合順位や、一食で食べることを推奨する量を示したものではありません。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| ビタミンB2:鶏レバー・生 | 1.80mg/可食部100g | 同じ食品にB12、葉酸なども含まれる。 |
| ビタミンB6:びんなが・生 | 0.94mg/可食部100g | まぐろ類でも魚種を区別して比較する。 |
| ビタミンB6:かつお・生 | 0.76mg/可食部100g | 春獲り・秋獲りともに掲載値は同じ。 |
| ビタミンB6:しろさけ・生 | 0.64mg/可食部100g | 加熱後の切り身100gと同じ条件ではない。 |
| ビタミンB6:玄米めし | 0.21mg/可食部100g | 炊飯済みの値。生の玄米の値ではない。 |
| ビタミンB12:しじみ・生 | 68.0μg/可食部100g | 殻の重量を除いた食べられる部分の値。 |
| ビタミンB12:あさり・生 | 52.0μg/可食部100g | 殻付きの購入重量と区別する。 |
| ビタミンB12:まいわし・生 | 16.0μg/可食部100g | 魚介類を取り入れる際の選択肢となる。 |
| 葉酸:鶏レバー・生 | 1,300μg/可食部100g | レチノールも多いため、葉酸だけで食品を評価しない。 |
| パントテン酸:鶏レバー・生 | 10.00mg/可食部100g | 単一の食品に複数のビタミンB群が含まれる例。 |
| ビオチン:鶏レバー・生 | 230.0μg/可食部100g | 含有量の高さと日常的な食べやすさは分けて考える。 |
数値を読む際は、mgとμgを混同しないことも重要です。1mgは1,000μgですが、異なるビタミン同士の数値を単位換算して並べても、栄養学的な優劣は判断できません。必要量や生理作用が異なるため、B6はB6の摂取基準、B12はB12の摂取基準と照らし合わせます。
レバーは複数のビタミンB群を含む一方、鶏レバーのレチノール活性当量は可食部100g当たり14,000μgです。したがって、「B群が多いから毎日大量に食べればよい」という指導にはつながりません。栄養素を一つだけ取り出した食品ランキングは、ほかの成分や摂取頻度を見落としやすい点に注意が必要です。
文部科学省:鶏レバーの食品成分データ
長寿科学振興財団:ビタミンB6・B12の食品別含有量
「多く含む食品」と「日常の摂取に貢献する食品」は、必ずしも一致しません。乾燥食品や種実類は100g当たりの値が高くても、一度に食べる量が少ない場合があります。例えば、いりごまのビタミンB6は100g当たり0.64mgですが、大さじ1の目安重量は9gです。100gの魚と大さじ1のごまを、そのまま同じ供給源として比較するのは適切ではありません。
一食分の含有量は、「100g当たりの成分量×実際に食べる可食部重量÷100」で概算できます。ただし、生の食品の値で計算した結果は、加熱済みの料理に含まれる量をそのまま示すわけではありません。成分表には調理済み食品も掲載されているため、栄養計算では料理の状態に近い項目を選びます。
日々の食事例としては、主菜にかつおやしろさけを選ぶ、魚介類を食べる機会を設ける、主食の一部を玄米めしに置き換えるなどが考えられます。ただし、これらは食品の組み合わせ例であり、その一品だけで必要なビタミンB群をすべて満たせるという意味ではありません。患者が普段食べている料理に、無理なく追加・変更できる食品を探すことが実践的です。
日本で栄養指導に用いる際は、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」を確認します。この版の使用期間は2025年度から2029年度です。過去の記事や海外の解説には異なる基準値が掲載されている場合があるため、数値を引用するときは、対象集団と基準の版を明示する必要があります。
参考)日本人の食事摂取基準 |厚生労働省
例えば、2025年版におけるビタミンB6の推奨量は、18~64歳の男性で1日1.5mg、65歳以上の男性で1.4mg、18歳以上の女性で1.2mgです。妊婦と授乳婦では付加量が示されています。「成人は一律に同じ量」と説明せず、対象者の年齢、性別、妊娠・授乳の状況を確認します。
一方、成人のビタミンB12は、2025年版では1日4.0μgの目安量が示されています。ここで重要なのは、B6の「推奨量」とB12の「目安量」を区別することです。推奨量はほとんどの人が必要量を満たす量として設定され、目安量は一定の栄養状態を維持するのに十分な量として示される指標です。
したがって、食事記録の数値が目安量を下回ったという理由だけで、直ちに欠乏症と診断することはできません。摂取基準は栄養状態を考えるための基準であり、欠乏症の診断そのものではありません。医療現場では、摂取内容に加えて症状、既往歴、服薬、必要な検査を関連づけて判断するという整理が必要です。
ビタミンB群の不足を疑う際は、食品の選び方だけでなく、吸収に関わる病態を確認します。特にビタミンB12では、内因子の欠乏、消化管の手術、特定の医薬品の長期使用、摂取不足などが欠乏の原因となります。胃切除後などの患者に対し、魚やレバーを増やす説明だけで対応を完結させないことが重要です。
参考)厚生労働省eJIM
服薬確認では、メトホルミンやプロトンポンプ阻害薬などに注意します。メトホルミンはB12の吸収を低下させ、血清B12濃度を低下させる可能性があります。ただし、こうした情報は患者自身による休薬を促すものではありません。症状や検査結果を処方医と共有し、治療の必要性と栄養状態を併せて検討するための確認事項です。
B12欠乏では、巨赤芽球性貧血や末梢神経障害などが生じることがあります。しびれや知覚異常がある患者では、食事内容の聞き取りに加え、欠乏の可能性も含めた医学的評価が必要です。食事性の摂取不足と吸収障害では対応が異なり、補充方法は病態に応じて選択されます。
一方、水溶性だから過剰摂取の心配がないという理解も正確ではありません。ビタミンB6では、サプリメントからの高用量・長期摂取による神経障害が報告されています。通常の食品からの摂取と、濃縮された製品による摂取は分けて考え、B群の複合製品とB6単独製品を重ねて使っていないか、1日量として何mgを摂取しているかを確認します。
参考)厚生労働省eJIM
なお、厚生労働省eJIMに掲載された海外情報の摂取基準を、そのまま日本の基準として扱ってはいけません。例えば日本の2025年版では、B6の耐容上限量は30~49歳の男性で1日60mg、同年齢の女性で45mgです。耐容上限量は積極的に目指す摂取量ではなく、過剰摂取による健康障害を避けるための指標です。
「ビタミンBが多い食品」を伝える栄養指導は、食品名を列挙するだけでなく、対象となるB群の種類、現実的な一食量、食事全体の構成、吸収障害や薬剤の影響までつなげて説明すると有用です。食品で補える問題か、欠乏症として評価・治療すべき問題かを分けることが、安全で具体的な支援につながります。
厚生労働省eJIM:ビタミンB12の医療関係者向け情報
厚生労働省eJIM:ビタミンB6の医療関係者向け情報