ビオヂアスターゼの作用と配合製剤の適正使用ガイド

ビオヂアスターゼの作用と配合製剤の適正使用ガイド

ビオヂアスターゼの基原、消化作用、配合製剤の特徴を医療従事者向けに解説します。用法・用量、副作用、相互作用、服薬指導で確認すべき事項を整理し、成分と製品の違いを踏まえた適正使用をどう実践すればよいでしょうか?

ビオヂアスターゼの基礎知識と核心ガイド

ビオヂアスターゼの作用と適正使用
微生物由来の複合消化酵素

でんぷん、蛋白質、繊維素の消化を助ける酵素剤で、配合薬全体の作用とは区別して理解します。

製品ごとの組成と用法を確認

同じ成分を含む製品でも配合量や剤形は異なり、用量や服用方法は個々の電子添文で確認します。

過敏症と併用薬を見落とさない

配合成分に由来する禁忌や過敏症に注意し、アカルボースとの併用は製品別の記載を確認します。


ビオヂアスターゼとは何か:基原と消化作用



ビオヂアスターゼは、微生物由来の複合消化酵素として消化酵素製剤に用いられる成分です。医療用配合製剤に含まれる「ビオヂアスターゼ2000」は、Aspergillus oryzaeが産生する、でんぷん消化力、蛋白消化力、繊維素消化力を持つ酵素剤と記載されています。単一の栄養素だけに作用する成分ではなく、複数の消化活性を備える点が基本的な特徴です。


参考)マックターゼ配合錠の添付文書 - 医薬情報QLifePro
医療従事者が最初に整理したいのは、ビオヂアスターゼという成分と、それを含む配合製剤の違いです。たとえばマックターゼ配合錠には、ビオヂアスターゼ2000に加えて、ニューラーゼ、セルラーゼAP3、膵臓性消化酵素8AP、プロザイム6が含まれています。同製剤の「脂肪、蛋白質、でんぷん、繊維素を分解する」という作用は、これら5種類の消化酵素を組み合わせた製剤全体の作用です。


したがって、配合薬の説明に脂肪消化作用があるからといって、その作用をすべてビオヂアスターゼ単独に帰属させるのは適切ではありません。ビオヂアスターゼ2000の基原については、でんぷん、蛋白質、繊維素に対する消化力が示され、ニューラーゼや膵臓性消化酵素8APには脂肪消化力も記載されています。薬効を説明するときは、「成分の作用」と「組み合わせによる作用」を分けて伝えることが重要です。


また、Aspergillus oryzae由来という説明は、酵素の産生に関わる基原を示しています。成分の説明は「微生物が産生した消化酵素」であり、生きた菌を投与するという意味ではありません。患者への説明でも、菌名だけを前面に出すより、「食物の消化を助ける酵素を含む薬」と表現したうえで、必要に応じて由来を補足すると、成分の役割を整理しやすくなります。


マックターゼ配合錠の添付文書情報


作用する基質と至適pH:配合設計を理解する

消化酵素を理解する際には、何を分解するかという作用基質に加え、どのpHで活性を示しやすいかという視点が欠かせません。ケイラーゼSA配合顆粒の添付文書情報では、ビオヂアスターゼ2000の至適pHは、でんぷんに対して5.0、蛋白質に対して6.0、繊維素に対して4.5と示されています。同じ酵素剤でも、評価する基質によって至適pHが異なる点に注意が必要です。


参考)医療用医薬品 : ケイラーゼ (ケイラーゼSA配合顆粒)







項目 基準・内容 備考
ビオヂアスターゼ2000の基原 Aspergillus oryzaeが産生する酵素剤 でんぷん、蛋白質、繊維素の消化力を持つ。
でんぷんを基質とした至適pH 5.0 ケイラーゼSA配合顆粒の添付文書情報による。
蛋白質を基質とした至適pH 6.0 基質ごとに至適条件が異なる。
繊維素を基質とした至適pH 4.5 すべての食物繊維に同じ作用を示すという意味ではない。
膵臓性消化酵素8APの至適pH でんぷん7.0、蛋白質8.0、脂肪8.0 ビオヂアスターゼ2000とは作用条件が異なる。
マックターゼ配合錠の配合部位 ビオヂアスターゼ2000は胃溶部に配合 膵臓性消化酵素8APとプロザイム6は腸溶部に配合。

胃溶部と腸溶部を分ける設計には、酵素ごとの作用条件を考慮する意味があります。マックターゼ配合錠では、胃溶部にビオヂアスターゼ2000、ニューラーゼ、セルラーゼAP3を、腸溶部に膵臓性消化酵素8AP、プロザイム6を配合しています。単に多くの酵素を混ぜるのではなく、消化管内で作用させる条件を踏まえた製剤設計として理解できます。


ケイラーゼSA配合顆粒の添付文書情報


効能・用量の確認:成分名だけで判断しない

ビオヂアスターゼを含む薬を評価するときは、成分名から用量を推測するのではなく、実際の販売名、剤形、配合量、承認された効能・効果を確認します。具体例として、マックターゼ配合錠の効能・効果は「消化異常症状の改善」です。通常の成人用量は「1回2錠を1日3回食後に経口投与」で、年齢、症状により適宜増減すると記載されています。これは同製品の用法・用量であり、ビオヂアスターゼを含むすべての製品に共通するものではありません。


マックターゼ配合錠1錠中には、ビオヂアスターゼ2000が10.0mg、ニューラーゼが9.0mg、セルラーゼAP3が5.0mg、膵臓性消化酵素8APが26.0mg、プロザイム6が5.5mg含まれます。処方監査では、ビオヂアスターゼの含有量だけでなく、他の消化酵素と配合部位まで確認することで、処方された製剤の特徴を把握できます。


  • 販売名を確認する:成分名が似ていても、同じ製剤設計であるとは限らないため、対象製品の組成欄を確認します。

  • 効能・効果を確認する:マックターゼ配合錠では「消化異常症状の改善」が承認された効能です。

  • 用法・用量を確認する:同製品の通常成人用量は1回2錠、1日3回、食後であり、他製品への一律適用は避けます。

  • 薬理試験と臨床効果を区別する:人工消化管モデルの消化力試験は、患者での症状改善率そのものを示す試験ではありません。

成分名に付く「2000」を、服用量の2000mgと読み替えてはいけません。マックターゼ配合錠では、「ビオヂアスターゼ2000」が成分の名称として示され、その配合量は別に10.0mgと記載されています。また、数字の違いだけから別規格との臨床効果の倍率を決めることも避け、原薬の規格や活性情報を必要に応じてインタビューフォームなどで確認する姿勢が求められます。



副作用・禁忌・相互作用のチェックポイント

安全性確認で重要なのは、ビオヂアスターゼの基原だけを見て、配合薬全体の禁忌を判断しないことです。マックターゼ配合錠では、本剤の成分に対する過敏症の既往歴がある患者に加え、ウシまたはブタ蛋白質に対する過敏症の既往歴がある患者も禁忌とされています。同製品には健康なブタの膵臓から製した膵臓性消化酵素8APが含まれるため、微生物由来成分を含む薬であっても、動物由来成分の確認を省略できません。


同製品の添付文書には、頻度不明の過敏症として、くしゃみ、流涙、皮膚発赤などが記載されています。投与中は異常の有無を観察し、異常が認められた場合には投与中止など適切な処置を行う必要があります。「消化を助ける酵素だから副作用はない」という説明は適切ではなく、患者には新たな症状が出た際の相談先も含めて案内します。


相互作用については、製品別に電子添文の記載を確認します。ケイラーゼSA配合顆粒では、α-グルコシダーゼ阻害剤のアカルボースとの併用について、両剤の薬効に影響を及ぼす可能性があると記載されています。その機序は、アカルボースがα-アミラーゼ活性を阻害するため、炭水化物消化酵素製剤と作用が拮抗すると考えられる、というものです。


この記載から、糖尿病患者の薬歴確認ではアカルボースの有無を確認対象にできます。一方で、アカルボースの記載を根拠に、糖尿病治療薬全体を同じ相互作用として扱ったり、すべてのα-グルコシダーゼ阻害薬で同じ記載があると断定したりしてはいけません。まず実際の併用薬名と対象製品を特定し、双方の最新の電子添文に基づいて判断することが必要です。


妊娠・授乳中の患者についても、酵素製剤という分類だけで安全性を断定することはできません。マックターゼ配合錠では、妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与するとされています。授乳婦については、治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮し、授乳継続または中止を検討するという記載です。



服薬指導と治療評価:適正使用につなげる

服薬指導では、処方された製品の用法と、剤形に関する注意を具体的に伝えます。マックターゼ配合錠の場合は食後投与が定められているため、まず処方どおりの服用時点を説明します。また、PTP包装のまま飲み込まないよう、必ずシートから錠剤を取り出して服用することを確認します。同製品の添付文書では、PTPシートの誤飲による食道粘膜への刺入、穿孔、縦隔洞炎などの重篤な合併症への注意が示されています。


嚥下困難や経管投与の相談がある場合は、胃溶部・腸溶部の設計を踏まえ、通常の服用と粉砕・懸濁後の投与を同じ条件と考えないことが重要です。沢井製薬のマックターゼ配合錠の製品情報には、懸濁後のチューブ通過性や粉砕後の安定性に関する資料が案内されています。ただし、同ページは承認された用法・用量と異なる情報が含まれることを明示し、承認外の用法・用量を推奨していないとしています。資料の存在だけで実施可能と判断せず、具体的な投与条件と施設の手順を確認します。


参考)https://med.sawai.co.jp/preview.php?prodid=1318&prodname=%E3%83%9E%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%BC%E9%85%8D%E5%90%88%E9%8C%A0prodname=%E3%83%9E%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%BC%E9%85%8D%E5%90%88%E9%8C%A0" target="_blank" rel="noopener">マックターゼ配合錠|沢井製薬
沢井製薬のマックターゼ配合錠製品情報
保管については、マックターゼ配合錠は室温保存で、開封後は湿気を避けて保存すると記載されています。患者への説明でも、「胃腸薬なので保管に注意しなくてよい」とせず、製品ごとの条件を案内します。包装変更や一包化に関する判断が必要な場合は、通常包装での貯法と変更後の安定性を混同せず、対象製品の資料を確認する必要があります。


治療評価では、配合製剤の薬理試験と臨床上の有効性を区別します。マックターゼ配合錠では、人工消化管モデルを用いた試験で脂肪、蛋白質、でんぷん、繊維素に対する消化力が示されていますが、これはin vitroの結果です。この情報だけで「すべての胃もたれに有効」「他製剤より症状改善率が高い」といった結論を導くことはできません。薬理学的な裏付けを押さえつつ、処方目的に対応する症状の変化を確認するという読み方が適切です。


ビオヂアスターゼを適正使用につなげるには、成分の基原と作用基質を理解したうえで、配合されている他の酵素、胃溶部・腸溶部、承認された用法・用量、安全性情報を製品単位で確認することが基本です。医療従事者向けの解説でも、成分単独の情報と製剤全体の情報を明確に分けることで、作用の過大評価や用量の誤認を避け、処方監査と服薬指導に活用しやすい情報になります。

【第2類医薬品】アレジオン20 48錠