

1歳2ヶ月は生後14か月に当たり、言葉の発達を考えるときは、発語だけでなく、理解や身ぶりを含むコミュニケーション全体を捉える必要があります。言葉の発達には個人差があり、「この月齢なら必ず何語」と一律に判断することは適切ではありません。保護者から「まだママと言わない」「同じ月齢の子より言葉が少ない」と相談された場合も、語数の比較だけで結論を出さず、聞こえや理解、やり取りの様子を確認します。
参考)Speech and Language Developmen…
参考となる近接月齢の指標として、米国疾病予防管理センター(CDC)は15か月の言語・コミュニケーションの項目に、「ママ・パパ以外に1~2語を言おうとする」「身近な物の名前を聞くと、その物を見る」「身ぶりと言葉を組み合わせた指示に従う」「何かを求めたり助けを得たりするために指さす」を挙げています。ここで重要なのは、明瞭な単語を完成形で発音することだけを求めているわけではない点です。
参考)Milestones by 15 Months
CDCの発達指標は、その年齢までに75%以上の子どもができることを示したもので、平均語数や診断の境界値ではありません。また、15か月の指標を、そのまま14か月児の合否判定に使うこともできません。チェックリスト自体も、標準化され妥当性が検証された発達スクリーニング検査の代わりではないと明記されています。医療者は、指標の数字と、それを使う目的を分けて説明する必要があります。
米国国立聴覚・伝達障害研究所(NIDCD)は、1~2歳の時期にみられる変化として、簡単な指示や質問の理解、絵本の中の物を指し示すこと、新しい単語の獲得などを示しています。ただし、これは1年間の幅を持つ記述です。掲載されている行動をすべて1歳2ヶ月で満たす必要がある、と読むことは避けましょう。
「言葉が出ているか」を確認する際は、保護者が何を言葉として数えているかを共有します。たとえば、犬を見て繰り返し「ワンワン」と言う場面と、遊びながら「ワワワ」と声を出す場面では、音が似ていても意味との結び付きが異なります。問診では、発音を書き留めるだけでなく、「何を見たときに」「誰に向けて」「どのような目的で」使ったかを具体化すると、表出の様子を把握しやすくなります。初期の言葉は不完全な発音でもよく、CDCも語の一部分だけを発する例を示しています。
また、話して伝える力である表出言語と、相手の言葉を理解する受容言語は分けて確認します。発語の少なさが相談の入口であっても、言葉の理解にも心配があるのか、身ぶりを加えると応じられるのかによって、把握すべき状況は変わります。NIDCDも、言語の問題を説明する際に、理解の難しさと表現の難しさを区別しています。
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 有意味語に相当する表出 | 特定の物や人、要求などに結び付けて、同じ音を使おうとする様子を確認する | 大人と同じ明瞭な発音だけを対象にせず、使用場面も記録する |
| 喃語・発声 | 「バババ」などの音の連なり、声で注意を引く様子、音声の模倣を確認する | 単語数にまとめず、発声ややり取りの情報として捉える |
| 受容言語 | 身近な物の名前を聞いたときの反応や、簡単な働きかけへの応答をみる | 言葉だけか、身ぶりを伴っているかを区別する |
| 非言語的な伝達 | 指さし、手を伸ばす、物を見せるなど、伝えようとする行動を確認する | 要求の伝達と、興味を共有する行動の両方に注目する |
| 発達の経過 | 新しい行動が増えているか、以前みられた言葉や身ぶりが失われていないかを確認する | 獲得した力の消失は、早めに医師へ共有する情報となる |
上表は、CDCとNIDCDの発達・コミュニケーションに関する項目をもとに整理した観察の視点であり、1歳2ヶ月児を診断するための採点表ではありません。「言える・言えない」の二択だけでなく、どのような助けがあれば応じられるか、家庭ではどのように伝えているかを併せて記録します。
1歳2ヶ月で言葉が少ないという相談では、共同注意が重要な観察の視点になります。これは、子どもと大人が同じ物や出来事に注意を向け、興味を共有することです。国立障害者リハビリテーションセンターは、乳幼児健診で確認する社会性の項目として、大人の指さしを目で追う、興味のある物を指さしで伝える、物を持ってきて見せるなどを挙げています。
参考)301 Moved Permanently
ただし、同センターの説明は主に1歳6か月頃の確認を扱っています。そこで示される行動を、1歳2ヶ月の時点ですべて完成しているべき項目として扱わないことが大切です。指さしの有無だけに注目するのではなく、手を伸ばして大人を見る、物を渡す、声を出して注意を引くなど、現在使っている伝達手段を具体的に尋ねます。月齢と個人差を踏まえ、社会的な行動を複数の角度から捉える姿勢が必要です。
これらは、呼名反応、模倣、共同注意などの社会性の観察項目と、言語理解・聴覚評価の視点を整理したものです。いずれか一つの行動だけで、発達障害や難聴を診断するものではありません。言語発達の遅れが疑われるときには、聞こえの問題が関与する可能性も考え、必要な評価を検討します。NIDCDは、言語の評価に聴力検査が含まれることが多いと説明しています。
家庭での関わり方は、単語を何回言わせるかではなく、子どもの関心に大人が応じることを中心に説明します。子どもがボールを見たり指したりしたら「ボールだね」、不完全な音で伝えたら、その意図を受け止めて自然な言葉を返します。CDCは、初期の言葉を繰り返して補うことや、子どもが指した物の名前を伝えることを勧めています。
物を求めている場面では、名前を短く伝え、少し待って反応する余地を作ります。声が出た場合には応じ、発声がない場合でも、その子の身ぶりや視線をやり取りの一部として受け止めます。これは「言うまで渡さない」という訓練ではなく、伝えることと相手の応答が結び付く経験を作る関わりです。CDCの助言でも、物の名前を伝えたあと、数秒待って発声の機会を作る方法が紹介されています。
絵本は、すべての文章を読み切ることにこだわらず、子どもが見ている絵を一緒に楽しむ機会にできます。身ぶりのある歌や、大人の動作をまねる遊び、身近な人やペットの写真を見ながら名前を伝えることも、CDCが示す活動です。生活の中で繰り返せる遊びを選び、保護者が無理なく続けられる形に落とし込むと、助言が具体的になります。
動画や音声教材について相談された場合は、対面で話す、遊ぶ、反応し合う時間を中心に説明します。CDCは2歳未満の画面利用について、親しい人とのビデオ通話を除き推奨しておらず、人とのやり取りを通して学ぶことを重視しています。ただし、この一般的な推奨を根拠に、個々の子どもの言葉の少なさを動画視聴だけで説明することはできません。聞こえや発達全体の確認を省略せず、家庭への助言と評価を並行して考えます。
1歳2ヶ月で言葉が少ない場合、語数だけで病的な遅れと判断することはできません。一方で、「個人差があるから必ず大丈夫」と断定することも避けます。CDCは、発達に心配があるとき、発達指標に達していないとき、以前できていたことが失われたときには、早めに医師へ相談するよう勧めています。保護者に心配があるなら、1歳6か月児健診まで相談を控える必要はありません。
特に、以前使っていた言葉や身ぶりがみられなくなった場合は、その変化を早めに小児科へ伝えます。また、音や声への反応が気になる、言葉の理解にも心配がある、周囲とのやり取りが乏しいと感じる場合も、発語の数だけを追わず相談につなげます。これらは特定の疾患を意味する症状一覧ではなく、聴覚と言語、社会性を含めた評価の必要性を考えるための情報です。
相談先は、かかりつけ小児科や自治体の乳幼児健診・発達相談などです。地域の体制や確認された課題に応じて、聴覚を評価する専門職、言語聴覚士、発達を診る専門医などへつなぎます。国立障害者リハビリテーションセンターは、乳幼児健診を、保健師、小児科医、言語聴覚士、心理職などが関わり、早期支援と地域のネットワークにつながる機会として位置付けています。
経過をみる場合も、「様子を見ましょう」だけで説明を終えないことが重要です。現在の発語、言葉の理解、指さしなどの身ぶり、聞こえへの反応を整理し、次回は何を確認するのかを共有します。保護者には、気になった場面や新しくできたこと、できなくなったことを記録してもらうと、次の相談で具体的に経過を話せます。CDCも、子どもができること・できないことへの心配や、失われた技能を医師に共有するよう案内しています。
保護者への説明では、「今、使っている言葉や伝え方を確認し、聞こえや理解も合わせて見ていきます」と、評価の道筋を示します。1歳2ヶ月の言葉を診る目的は、語数に合格点を付けることではありません。その子のコミュニケーションの現状を捉え、必要な評価や支援につなげることです。発達指標はそのための手がかりとして使い、単独で診断や将来の予測を行わない姿勢が求められます。