成人の血圧の正常値とは?診断基準と測定・管理の実践

成人の血圧の正常値とは?診断基準と測定・管理の実践

成人の血圧の正常値を、診察室血圧と家庭血圧に分けて解説。2025年版ガイドラインの降圧目標、正しい測定法、白衣高血圧・仮面高血圧、個別管理の注意点まで、医療従事者は患者にどう説明すればよいのでしょうか?

成人の血圧の正常値を理解するための基礎知識と実践ガイド

成人の血圧を正しく判断する基本指標
正常値と診断基準を区別する

診察室の正常血圧は収縮期120未満かつ拡張期80未満。高血圧の診断基準や治療目標とは区別します。

家庭血圧は測定条件をそろえる

朝と晩に原則2回ずつ測り、各機会の平均を記録。少なくとも5日間の値から普段の血圧を評価します。

降圧目標は患者背景も踏まえる

基本の降圧目標は診察室130/80未満。高齢者の生活機能や低血圧症状に配慮して個別に調整します。


成人の血圧の正常値とは?「正常」と「高血圧ではない」の違い


成人の血圧の正常値を説明するときは、最初に測定場所を確認する必要があります。日本高血圧学会の成人血圧分類では、診察室血圧の「正常血圧」は収縮期血圧120mmHg未満、かつ拡張期血圧80mmHg未満です。家庭血圧の正常血圧は、収縮期血圧115mmHg未満、かつ拡張期血圧75mmHg未満とされます。どちらも上と下の両方が条件を満たす必要があり、「120/80mmHg以下」ではなく「それぞれ未満」である点が重要です。
jpnsh(https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019_gen.pdf)
血圧とは、血液が血管壁を押す圧力です。収縮期血圧は心臓が収縮して血液を送り出すときの圧力、拡張期血圧は心臓が拡張しているときの圧力を示します。血圧は心拍出量や血管抵抗などに左右され、高齢になると動脈の硬化に伴い、上の血圧が高く、下の血圧が低くなることがあります。このため、収縮期と拡張期を別々に確認することが欠かせません。
jpnsh(https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019_gen.pdf)
医療従事者が患者に説明する際の要点は、正常血圧という分類、高血圧の診断基準、治療中の降圧目標を混同しないことです。例えば診察室血圧が128/76mmHgなら正常高値血圧、136/84mmHgなら高値血圧に分類されます。いずれも診察室血圧の高血圧基準には達していませんが、「正常血圧」と同じ区分ではありません。
jpnsh(https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019_gen.pdf)
また、「高血圧と診断される数値に達していないから問題はない」と説明するのも適切ではありません。高値血圧では正常血圧に比べて脳心血管病のリスクが高く、糖尿病、慢性腎臓病、喫煙などが重なるとリスク評価の重要性が増します。数値を伝えるだけでなく、その患者にとって生活習慣の見直しや継続観察がなぜ必要なのかまで説明すると、測定や受診の目的を共有しやすくなります。
jpnsh(https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019_gen.pdf)
日本高血圧学会ほか:一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子・成人血圧分類


診察室血圧と家庭血圧の分類・高血圧の診断基準

成人の血圧分類は、診察室血圧と家庭血圧で基準が異なります。以下は日本高血圧学会の一般向け解説冊子に示された分類です。2025年版ガイドラインでも、高血圧の診断基準は診察室血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上に据え置かれています。表中の単位はすべてmmHgです。
jpnsh(https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019_gen.pdf)

項目 基準・内容 備考
正常血圧

診察室:収縮期120未満かつ拡張期80未満

家庭:収縮期115未満かつ拡張期75未満

収縮期・拡張期の両方を満たす
正常高値血圧

診察室:収縮期120~129かつ拡張期80未満

家庭:収縮期115~124かつ拡張期75未満

高血圧の診断基準未満でも正常血圧とは区別する
高値血圧

診察室:収縮期130~139または拡張期80~89

家庭:収縮期125~134または拡張期75~84

両方が該当する場合も含む
Ⅰ度高血圧

診察室:収縮期140~159または拡張期90~99

家庭:収縮期135~144または拡張期85~89

上または下の一方だけでも該当する
Ⅱ度高血圧

診察室:収縮期160~179または拡張期100~109

家庭:収縮期145~159または拡張期90~99

収縮期と拡張期の区分が異なる場合は高い区分で判定する
Ⅲ度高血圧

診察室:収縮期180以上または拡張期110以上

家庭:収縮期160以上または拡張期100以上

血圧値に加え、症状と臓器障害の有無を評価する
孤立性収縮期高血圧

診察室:収縮期140以上かつ拡張期90未満

家庭:収縮期135以上かつ拡張期85未満

下の血圧が高くなくても高血圧に該当する

上と下の条件は「両方が高ければ高血圧」ではありません。例えば診察室血圧146/78mmHgは収縮期の基準によって高血圧に該当し、126/94mmHgは拡張期の基準によって高血圧に該当します。また、168/94mmHgのように収縮期と拡張期の重症度が異なる場合は、より高い区分であるⅡ度高血圧として扱います。患者向けの説明では「上だけ、下だけが高い場合も評価が必要」と伝えることが重要です。
jpnsh(https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019_gen.pdf)
ただし、通常の診断は単回の測定値だけで確定するものではありません。診察室血圧は別の日にも測定し、家庭血圧は5~7日間、あるいはそれ以上の測定結果の平均を用いて評価します。一時的な緊張や測定条件の影響を減らし、普段の血圧を把握するためです。もっとも、著しい高値や急性症状がある場合は、日数をそろえることよりも安全性の評価が優先されます。
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正常値を正しく判断するための家庭血圧測定法

基準値が正確でも、測定条件が不適切なら判断を誤る可能性があります。家庭血圧は、上腕にカフを巻くタイプの血圧計を用い、朝と晩に測定することが基本です。医療従事者は「毎日測ってください」と伝えるだけでなく、患者が実際にどの姿勢で、いつ、何回測っているのかを確認する必要があります。
jpnsh(https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019_gen.pdf)

  • 朝は起床後1時間以内に、排尿を済ませ、朝食前・降圧薬の服用前に測定します。
  • 晩は就寝前に測定し、飲酒や入浴の直後など、条件が大きく変わるタイミングは避けます。
  • 測定前に椅子に座って1~2分間安静にし、脚を組まず、カフの高さを心臓の高さに合わせます。
  • 測定中は会話をせず、体や腕を動かしたり、力を入れたりしないようにします。
  • 1機会につき原則2回測定し、その平均値を求めます。測定値は選別せず、すべて記録します。
  • 少なくとも5日間、できれば7日間測定し、朝と晩それぞれの平均値を評価に用います。

これらの測定条件と測定期間は、日本高血圧学会の家庭血圧測定資料や、日本のガイドラインを解説した論文で示されています。単に最も低かった値だけを記録すると、血圧管理が良好であるかのように見えてしまいます。朝晩の値と測定条件を継続して残すことが、診断と治療評価の両方に役立ちます。
jpnsh(https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019_gen.pdf)
日本高血圧学会:家庭で血圧を測定しましょう
家庭血圧を確認する意義の一つが、白衣高血圧と仮面高血圧の把握です。白衣高血圧は診察室では高血圧の基準に達する一方、家庭では基準未満となる状態を指します。反対に、仮面高血圧は診察室では高血圧の基準未満でも、家庭など診察室外で高血圧の基準に達する状態です。診察室での1回の測定だけでは、この違いを見分けられません。
jpnsh(https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019_gen.pdf)
例えば診察室血圧128/76mmHgでも、朝の家庭血圧の平均が142/88mmHgなら、診察室の数値だけを根拠に良好と判断することはできません。測定手順や血圧計の使い方を確認したうえで、仮面高血圧の可能性を評価します。必要に応じて24時間自由行動下血圧測定などを組み合わせることで、診察室外を含めた血圧の状態を把握できます。
jpnsh(https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019_gen.pdf)


2025年版ガイドラインの降圧目標と高齢者への配慮

日本高血圧学会:「高血圧管理・治療ガイドライン2025」発刊について


患者指導に生かす生活習慣の見直しと緊急対応の判断

正常値の説明は、患者が日々の行動につなげられる内容にすることが大切です。高血圧の予防・管理では、減塩、肥満の改善、適切な運動、過量飲酒の是正、禁煙などを組み合わせます。日本高血圧学会の一般向け解説では、高血圧患者の食塩摂取量は1日6g未満が目標とされています。指導では、麺類の汁を残す、加工食品や調味料の量を確認するなど、食習慣に即した具体策を検討します。
jpnsh(https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019_gen.pdf)
運動は患者の病状や体力に応じて取り入れ、無理な強度から始めないことが重要です。腎機能が低下している患者では、野菜や果物の摂取についても個別の確認が必要です。「血圧によい食品を増やす」という一般的な助言を一律に当てはめるのではなく、合併症や現在の治療内容と矛盾しない指導にします。
jpnsh(https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019_gen.pdf)
服薬中の患者には、血圧が下がったからといって自己判断で薬を減量・中止しないよう説明します。治療によって血圧が管理されている可能性があり、中止すれば再び上昇することがあります。逆に、目標値に届かない場合も自己判断で追加服用せず、家庭血圧の記録をもとに処方医と相談する方針を共有します。低血圧症状があるときには、数値だけでなく症状が出た時刻や服薬との関係も伝えられるよう支援します。
jpnsh(https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019_gen.pdf)
一方、著しい血圧上昇では、通常の生活指導より急性臓器障害の評価が優先されます。厚生労働省の重篤副作用疾患別対応マニュアルでは、高血圧緊急症は多くの場合180/120mmHg以上の高度な血圧上昇に、脳、心臓、腎臓、大血管などの急性障害を伴う病態とされています。重要なのは数値だけではなく、急性臓器障害を示唆する症状や所見の有無です。
mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001147588.pdf)
突然の胸痛、呼吸困難、片側の手足の動かしにくさなどがある場合は、家庭で測定を繰り返して経過を見るのではなく、救急対応を優先します。180/120mmHgに達していないことだけを理由に、こうした症状を安全と判断してはいけません。また、Ⅲ度高血圧という血圧分類と高血圧緊急症は同義ではなく、両者を区別して伝える必要があります。
jpnsh(https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019_gen.pdf)
厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル「高血圧」
医療従事者が「成人の血圧の正常値」を伝える際は、測定場所、収縮期・拡張期の両方、複数日の平均、治療の有無、生活機能、症状を一緒に確認することが実践的です。「今回の値がどの分類に入るか」と「あなたの治療目標はいくつか」を分けて説明し、家庭血圧の記録と個別の評価を診療につなげることで、単なる数値の暗記にとどまらない患者支援になります。
jpnsh(https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019_gen.pdf)




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