

胸痛とは、胸部に生じる痛みや不快感を表す症状であり、それ自体が特定の病名を意味するわけではありません。医療現場では、患者が「痛い」と表現する訴えだけでなく、「胸が締め付けられる」「重いものが乗っている」「圧迫される」「焼ける感じがする」といった表現にも注意します。心筋虚血を疑う症状は胸部に限定されず、肩、腕、頸部、背部、顎、上腹部に現れる場合もあります。
ahajournals(https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIR.0000000000001029)
臨床上は、新たに発症した症状や、これまでと頻度・強さ・持続時間が変化した症状を急性胸痛として捉えます。一方、長期間にわたり、運動や精神的ストレスなど一定の誘因で同様の症状が起こる場合は、安定した胸部症状として評価します。ただし、以前からある症状でも、安静時に出現するようになった、軽い動作で起こるようになったなどの変化があれば、従来の診断にとらわれず再評価することが重要です。
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AHA/ACCほか:2021年胸痛評価・診断ガイドライン
| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 急性冠症候群 | 胸部圧迫感、絞扼感、重苦しさ、肩・腕・顎などへの放散、冷汗や悪心を評価する。 | |
| 急性大動脈解離 | 急性の胸背部痛に加え、脈拍の左右差や循環不全を示す所見などに注意する。 | |
| 肺血栓塞栓症 | 胸痛と呼吸困難などの症状を、病歴や循環・呼吸状態と併せて評価する。 | |
| 気胸・肺炎など | 呼吸に伴う痛み、発熱、異常呼吸音などを手掛かりに呼吸器疾患を検討する。 | |
| 心膜炎など | 体位や呼吸で変化する痛み、心膜摩擦音、心電図所見などを確認する。 | |
| 非心臓性の胸痛 | 胸壁・筋骨格系、食道などに由来する痛みも鑑別に含める。 | 重篤な原因の評価が不十分な段階で、良性疾患と決め付けない。 |
急性胸痛で急性冠症候群が疑われる場合、12誘導心電図は初期評価の中心となります。日本循環器学会の急性冠症候群ガイドラインでは、疑わしい症状のある患者に対して10分以内に心電図を記録することを示しています。AHA/ACCの胸痛ガイドラインでも、医療機関到着後10分以内の取得・判読を重視しています。明らかなST上昇型心筋梗塞などが疑われる場合は、採血結果がそろうまで専門診療への移行を遅らせないことが重要です。
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診療体制が限られる場所では、疑う疾患に必要な検査や治療を自施設で提供できるかを早い段階で判断します。日本循環器学会は、急性冠症候群を疑う症状が出現した患者に対し、自ら医療機関へ向かうのではなく、直ちに119番通報して救急車を要請する必要性を示しています。電話相談や患者教育でも、疑わしい症状が持続する場合に、自家用車での移動や様子見を安易に勧めないことが重要です。
j-circ.or(https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2018/11/JCS2018_kimura.pdf)
日本循環器学会ほか:急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)