

| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| ビスホスホネート製剤 | アレンドロネート、リセドロネート、ミノドロン酸、イバンドロネート、ゾレドロン酸など。骨に沈着して破骨細胞の機能を抑制する。 | |
| デノスマブ | RANKLを標的とする抗体薬。骨粗鬆症では通常60mgを6か月に1回皮下投与する。 | 低カルシウム血症と、中止後の骨吸収亢進・多発性椎体骨折に注意する。 |
| SERM | ラロキシフェン、バゼドキシフェン。閉経後女性の骨粗鬆症に用いられ、主に椎体骨折予防を期待する。 | |
| ロモソズマブとの区別 | 骨形成促進と骨吸収抑制の両作用を持つが、治療戦略上は骨形成促進薬として扱われる。 |
経口薬を選ぶ際には、患者が服用方法を実行できるかを確認します。例えばアレンドロネートの経口製剤では、服用後少なくとも30分は横にならず、水以外の飲食や他の薬剤の経口摂取を避ける必要があります。嚥下や消化管の問題、認知機能、起床後の生活動作などにより適正使用が難しい場合は、投与経路も含めた再検討が必要です。ただし、服用時の制限時間をすべての経口ビスホスホネート製剤で同じと考えず、個々の電子添文に従います。
medical.nikkeibp.co(https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/prd/39/3999018F2036.html)
jsoms.or(https://www.jsoms.or.jp/medical/pdf/work/guideline_202307.pdf)
デノスマブでは、投与開始前に血清補正カルシウム値を確認し、低カルシウム血症がある場合は投与前に治療します。電子添文では、血清補正カルシウム値が高値でない限り、毎日のカルシウムとビタミンDの経口補充のもとで投与することとされています。ただし、腎機能障害患者や既に活性型ビタミンDを使用している患者では、活性型ビタミンDの使用やカルシウム投与量を個別に調整する必要があり、一律の補充量を適用するものではありません。
pmda.go(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/430574_3999435G1023_1_15)
投与後は早期から血清カルシウム値を確認し、その後も定期的に測定します。デノスマブの電子添文では、市販後に報告された低カルシウム血症のうち発現日が確認できた症例の約半数が、初回投与から7日以内に発現していたとされています。この数字は全投与患者の発症率ではありませんが、初回投与直後の観察が重要であることを示します。しびれ、筋痙攣、テタニーなどの症状があれば、低カルシウム血症を念頭に速やかな評価が必要です。
pmda.go(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/430574_3999435G1023_1_15)
PMDA:プラリア皮下注60mgシリンジの電子添文
ビスホスホネート製剤とデノスマブでは、薬剤関連顎骨壊死であるMRONJに注意します。リスクの評価では、骨粗鬆症に対する低用量投与と、悪性腫瘍の骨病変に対する高用量投与を区別する必要があります。発症頻度は投与目的、投与量、治療期間、口腔状態、研究の診断基準などによって異なるため、ひとつの発症率をすべての患者に当てはめることは適切ではありません。
jsoms.or(https://www.jsoms.or.jp/medical/pdf/work/guideline_202307.pdf)
予防では口腔内の感染源の評価と管理が重要です。重度歯周病や根尖病変はMRONJのリスク因子であり、抜歯という処置だけを原因として捉えるのは不十分です。投与開始前には歯科へ紹介し、必要な侵襲的歯科治療を可能な範囲で済ませます。一方、歯科治療の完了を待つことで骨粗鬆症治療が不必要に長期間延期されないよう、骨折リスクと歯科治療の緊急性を共有して開始時期を調整します。
jsoms.or(https://www.jsoms.or.jp/medical/pdf/work/guideline_202307.pdf)
抜歯時の予防的休薬について、国内の「顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023」は、原則として骨吸収抑制薬を休薬しないことを提案しています。これは、抜歯前の休薬によってMRONJが減少するという十分な根拠が得られていないためです。ただし、すべての症例で休薬を否定する意味ではなく、極めてリスクが高い症例や抜歯以外の手術では不明な点が残ります。
jsoms.or(https://www.jsoms.or.jp/medical/pdf/work/guideline_202307.pdf)
また、デノスマブの電子添文には、投与中に侵襲的歯科処置が必要となった場合は休薬等を考慮する旨の記載があります。この注意事項とポジションペーパーの提案を踏まえ、処方医と歯科医師が、感染の程度、処置内容、骨折リスク、中止後の影響を総合的に検討します。患者に一律の休薬指示を出したり、休薬のためだけに必要な感染治療を先送りしたりせず、判断内容と再投与計画を明確に共有することが大切です。
pmda.go(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/430574_3999435G1023_1_15)
長期使用中には非定型大腿骨骨折にも注意が必要です。デノスマブやビスホスホネート製剤の使用患者では、軽微な外力による骨折に先行して、大腿部や鼠径部などの痛みが認められる場合があります。新たな持続痛を単なる筋肉痛や加齢のためと判断せず、画像検査などで評価します。片側の非定型骨折が確認された場合は、反対側についても確認する必要があります。
pmda.go(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/430574_3999435G1023_1_15)
SERMでは安全管理の焦点が異なり、静脈血栓塞栓症に注意します。ラロキシフェンを使用する際は、血栓塞栓症の既往や手術後の回復期などの長期不動状態を確認します。副作用を説明するときは、骨吸収抑制薬すべてに同じリスクが同程度にあると伝えず、薬剤ごとの重要な症状と受診行動を具体的に示します。
pmda.go(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/530169_3999021F1104_1_03)
顎骨壊死検討委員会:薬剤関連顎骨壊死の病態と管理・ポジションペーパー2023
骨吸収抑制薬の長期管理では、薬剤ごとの中止後の挙動を理解することが欠かせません。ビスホスホネート製剤は骨に残存するため、一定期間の治療後に骨折リスクを再評価し、選択された患者で計画的な休薬を検討できる場合があります。ポジションペーパー2023では、投与が3~5年に至った時点で脆弱性骨折リスクを評価する考え方が示されています。ただし、年数に到達したら自動的に中止するのではなく、骨折既往や現在の骨密度、治療反応などを踏まえて判断します。
jsoms.or(https://www.jsoms.or.jp/medical/pdf/work/guideline_202307.pdf)
これに対し、デノスマブでは反跳現象が重要です。投与を中止すると骨吸収が一過性に亢進し、骨密度が急速に低下して、多発性椎体骨折が生じることがあります。そのため、ビスホスホネート製剤の計画的休薬という考え方を、そのままデノスマブに適用することはできません。電子添文でも、中止する場合には治療中止後の骨吸収抑制薬の使用を考慮するよう注意喚起されています。
pmda.go(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/430574_3999435G1023_1_15)